第8話 俺だけ魔法を完封

戻るとノエルさんは倒されたところだった。


ドサッ。

その場に倒れるノエルさんを抱き起こした。


「よ、ヨルさん……?」


俺はロックを睨んだ。


「帰ってきたのかお前。バカじゃねぇの?」

「バカなんだろうな」


どうしようもないくらいバカだと思う。


でも


「見捨ててあとから後悔するのはもっとバカだと思う」


ゲームでもよくあるシーンだよな。こういうのって。


『先にいけ!私が、俺が食い止める!』


そうして主人公に先に行かせてそのあと後味が悪くなるパターン。


俺もそのパターンをなぞりそうになったけど早い段階で切り返したおかげでまだ間に合う。


(ゲームやマンガを見て思ってた。助けに行けよって)


だから僕は今ここに来た。

理想のヒーローになりにきた。


「ロック。その人から離れろ。欲しいんだろ?俺の体」


「あぁ。欲しいぜ」

「参考がてらに聞きたいんだけどさ。体ってのはどうやって奪うんだ?」


会話を続けてみる。

こいつはいい意味でも悪い意味でも自我が強い。


もしかしたら答えてくれて、そこからヒントが出るかもしれない。


「うぎゃはは。いいぜ、教えてやるよ。もともと体に入ってる魂を体からぶち抜くのさ」

「どうやって?」

「俺がさっき使ったソウルイーターっていう魔法だ。これは体を無視して直接魂に攻撃する、俺だけが使える魔法なのさ!ユニークマジック!分かる?!」


(かなりおしゃべりだな。なるほど)


「ユニークマジックだからこそ対策方法は広まっていない!そもそも対策もできん!故にお前は俺のソウルイーターを食らうしかないのさ!」


そう叫んで


【ソウルイーター】


魔法を発動させてきた。


迫り来る光弾。


死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死


そんな文字だけが頭の中を埋め尽くす。


でも


(ビビるな。これが魔法というのなら……ユニークマジックだとしても関係ないはず!)


自分の仮定を信じるだけだ!


目の前まで迫ってきた光弾に手を伸ばす。


そして


【呪詛返し】


【呪詛返しが成功しました】


パーーーーン!!!!!


弾き返されたように進行方向を変える光弾。


それは術者のロックに向かっていく。


「へっ?」


「ごはっ!」


くの字に折れ曲がってその場でダメージを受けるロック。


「げほっ……がはっ……な、なぜだ……ええい!お前らあいつを狙え!ころせぇ!!!呪え呪え呪え!」


それからロックは次の魔法を使ってくる。


「【ターゲティング】」


また光弾が俺に飛んでくるが


【呪詛返し】


【呪詛返しが成功しました】


パーン!

弾き返された光弾がまたロックへ飛んでいって。


シュゥゥゥゥゥゥ……。


ロックの腹に紋章が刻まれた。


【盗賊ロックにターゲットが集中します】


「ギチッ。ギチギギチ……ぎが」


周りにいたリッチ共がそうやって反応を示し始めた。


そして。

グルン。

首を回してロックを見つめる。


ペタッ。

座り込んだロック


「お、おい……冗談だろ?お前ら、仲間じゃねぇの?」


【ファイア】

【フリーズ】

【サンダー】


「ぎにゃぁぁあぁぁあぁぁあぁあ!!!!!」


リッチたちからいっせいに魔法が飛んでいく。


袋叩きに会い始めたロックを見てから俺は


ノエルさんを抱き抱えた。


いわゆるお姫様抱っこみたいな感じで。


(向こうが干渉できるってことはこっちからも干渉できるんだな)


まさか地縛霊を抱き抱える日がくるとは思わなかったな。


そうして俺はダンジョン内を歩いていると、急にノエルに抱きつかれた。


「うぇっ?!」


ずっと気絶してると思ってたから急に動かれたことにほんとに驚いた。


「ヨルさん。助けにきてくれたんですね」

「あとから後悔するのはいやだから」


僕は少なくとも一度はこの人に命を救われてる。


なら、一度くらいはこの人を救おうと思っただけだ。


「恩を返しただけですよ」


そう言って僕はノエルさんを下ろした。

いつまでも抱き抱える必要ないだろうし。


「も、もうしてはくれないのですか?」

「どうして?歩ける(?)でしょ?」

「え?ま、まぁそうですけど」


となにが言いたいのかいまいち分からない顔をしている彼女。


そんな彼女を連れて俺はダンジョンをどんどん進んでいくことにした。


そうして冒険者手帳をもう一度見てみた。

するとそこにはこうあった。





【魔法】

・魔術が進化したものである。そしてその魔術というのはもともと呪いであった。

魔法になってもその本質は変わらず魔法というものは相手を【呪う】ことである。人を呪わば穴二つ。魔法を使う時は注意を払うこと。これは本来呪いなのである。





その一文を見てなんとなく理解した。


(なるほど。この世界では魔法というのは広い目で見れば【呪い】なんだな)


だから


(俺のスキルは魔法を跳ね返せるのか)


理屈さえ理解できてしまえばもう不安はなくなってきた。


(このスキルは最強格のスキルだと思う)


まだまだこの世界について分からないことは多いが。


魔法という武器ひとつを



その事実に俺は高揚するのだった。


そう気付いて俺はそこら辺を移動しているリッチを見て思う。

あいつらの攻撃方法は魔法だ。


物理攻撃はしてこない。


初めはモンスターなんて怖かったしできるだけ会わないように進もうと思っていたが見方が変わった。


こいつらは俺の


経験値ごはんだ。


おいしそうだ。

どれもこれも。

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