第6話 リッチに出会う

俺は歩き出した。


ある程度のことは知れたので最初よりは大胆に歩けるようになっていた。

ここに来た時は一歩進むのも恐怖でままならなかったけど。


今はもう二歩三歩と進んでいけてた。

たぶんノエルさんが緊張を解してくれたおかげだろう。


そして


(あれがリッチか)


岩陰に隠れてモンスターを見ていた。

そいつは浮かんでた。


(アニメやゲームで見かけるのと同じような姿だな)


魔法使いが死にそれがアンデッドとして蘇ったのがリッチというモンスターらしい。



名前:リッチ

レベル:256



(このダンジョンマジでやばすぎないか?)


けっこう歩き回ったんだけど初めて見たモンスターのレベルがこれだった。


「レベル1でどうにかできるもんなのか?これ」


そうつぶやきながら俺は考えてた。


ここを生き残るにはやはり【呪詛返し】これをうまく使うことしかないと思う。


普通に考えて俺のスキルの効果は【呪いの反射】だと思う。

しかし、


(呪いダメージってゲームとかアニメでも大したことないよな?)


しょせんデバフのスリップダメージ。


それが俺の中の呪いというもののイメージだ。


これが強いというイメージはない。


だから


『この世界で【呪い反射】は評価されません』


そう言われた時に納得してしまったんだ。


【剣術スキル】

【槍術スキル】

【回復力アップ】

【攻撃力アップ】


そして、他のユニークスキル。


これらと並んだ時【呪い反射】なんてスキルどうしても見劣りするしな。

それくらい弱いスキルだと思う。


しかし俺が実際にもらったスキルは【呪詛返し】


(【呪詛】と【呪い】の違いさえ分かればな)


そう思いながらそこで思い出した。


(冒険者手帳があったな、開いてみよう)


そうしてパラパラページをめくっていく。


そうしてページを見てみると。



【デバフ一覧】

やけど状態:

一定間隔でダメージを受ける状態が続く。【火傷無効化】スキルで無効化可能。


大やけど状態:

一定間隔で大ダメージを受ける状態が続く。【火傷無効化】スキルで無効化可能。


氷結状態:

一定時間動きが鈍くなる。



(これって……)


さらにページをめくってみることにした。

すると



呪い状態:

一定時間ダメージを受ける状態が続く。付与確率は低め。【呪い反射】スキルがあれば反射可能



(これか)


想像してたような効果のデバフらしい。


予想通りのものだ。


(次は呪詛について調べてみよう)


そうして探してみたが……。


(ない?デバフじゃないのか?)


デバフの欄に呪詛というものはなかった。


(呪詛ってなんなんだ?)


呪詛は呪いのことだと思うんだが。


(なら初めから【呪い反射】スキルを授かりそうなもんだけど)


ってなことをいっしょうループして考えそうになる。


分からない。

今の状況じゃほんとに何も分からない。


「ヨルさん、リッチが巡回経路を変えました」


その時ノエルにそう言われて監視していたリッチに目を戻す。


するとさっきまで俺たちの進行を阻んでいたリッチはこっちを見ていなかった。

それどころか別方向に進んでいた。


(たしかに今なら抜けれるな)


そうして俺は岩陰から出てダンジョンを進んでいくことにした。


今の作戦としてはできるだけ戦闘を避けてこのダンジョンを抜けてしまおうという作戦だ。


(そりゃそうだよな。戦えないし)


でも……いつまでもそうやって逃げ続けることができるんだろうか?


(とは言ってもこんな戦闘向きじゃないスキルじゃ無理だよな)


そう思いながら歩いてると


「ギャギャッ?!ギャギャッ?!」


リッチが騒ぎだした。

そしてこっちを見た。


(え?なんで?)


そう思った時には遅かった。

俺に気づいたリッチが動き出した。


そして


【ファイア】


杖を突き出して俺に向かって魔法を放ってきた。


「う、うそだろ……」


足が動かない。

いきなり放たれた魔法に足が動かない。


頭も動かない。

そして頭をよぎったのは


生田が炎に包まれたあの光景。


ガチガチガチ……。

歯が震える。


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。


あんな風にはなりたくない。

でもどうすればいい?


そう思って気付いた。


「俺にできることってひとつしかないよな」


スキルはひとつしかないんだから……。

ファイアボールをキャッチするように右手を突き出して


「【呪詛返し】!!!!」


こんなもの返せるわけない。

そう思いながらも叫んだ。それ以外にできることなんてないし。


すると


【呪詛返しに成功しました】


ギュン!


手に当たったはずのファイアボールは行き先を変えた。


真逆に。

飛んできた方向に進行方向を変えた。


そして、飛んできた方向と言えば、そう。


「ギャギャッ?!!!」


リッチに向かって飛んでいって。


ボウッ!!!


ファイアがリッチにあたりそして。


リッチは一瞬にして消えた。


「え?」


何が起きたのか分からずノエルさんに目をやった。


「と、とにかく先を急ぎましょう。今のリッチの動き不自然すぎますから。消し去る者の気配を感じたのかも」

「え、えぇ。そうですね」


ノエルさんに言われるまま先に進むことにした。

たしかに、今のリッチの動き不自然だった。


考えられるパターンとしては


(リッチの進む方向に、消し去る者がいた、とかか?)


それに勝てないと思ってリッチは踵を返してその結果。


俺と目が合った。


そうじゃないだろうか?


このまま消し去る者と鉢合わせるのは最悪だ。


それなら先に進んで距離を取りたい。


(今の現象についてももう少し考察したいな)


なんで、ファイアは返っていったんだ?

まさか、ほんとうに


(【呪詛返し】が魔法を返した?でも、どういうことなんだ?)


答えはまだ出ない。

いろいろ頭を悩ませていると文字が出てきた。


【レベルが上がりました。Lv1→Lv223】


(れ、レベルアップ?!)


名前:ヨル シグレ

レベル:223

体力:3345

魔力:3345


スキル:呪詛返しLv9999(パッシブスキル)

称号:Sランク勇者



しかもレベルがすごい上がったんじゃないのか?これ。


いろいろと考えたいことができてしまったな。

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