第2話 この世界では価値がなく評価されない

今ここにいる生徒数は約300人。

異世界召喚とか異世界転移って呼ばれるものの中じゃ異常な数字じゃないだろうか。


普通はクラスごと、とかなんだろうけど今回は学年ごとだ。


それだけに【神託】とやらも時間がかかっている。


僕の順番はかなりあとの方になっていた。


「っしゃおら!俺のスキル【剣術スキル】だって!」

「私の【回復力アップ】って強いんですかー?」

「えぇ?!これユニークスキルなんですか?!ユニークスキルゲットぉ!」


と先にスキルを授かったヤツらの声が聞こえてくる。

そして、それと同時に勇者のクラス分けというものが行われていた。


どうやらスキルを授かるときに勇者ランクというものも与えられるようだ。


ピラッ。


僕はさきほどエリスから配られた紙を見ていた。


勇者ランクは


【S】から【E】まで存在するそうだ。


そして現在の排出は


【S】……0

【A】……65

【B】……30

【C】……20

【D】……5

【E】……0



となっているらしい。

そこでエリスが喜んでいた。


「今回の勇者様300連ガチャは今のところ大成功のようですねー」


(ガチャ感覚なのか?これが?)


かってに召喚して勝手にガチャ扱いなのか?


うすうす思っていたことだけど


(このエリスとかいう召喚士やばいかもしれない)


そう思った時だった。


「初めてのEランク勇者が出ました」


神託の儀式を行っていた奴が報告した。


ローブを着ている男。


「あらあら、コモンですか?困りましたねー。外れちゃいましたねー」


そうしてEランクのエリアに連れていかれたのは知らない女の子だった。

名前も知らない他のクラスの女の子。

話したこともない女の子。


ひとりだけ隔離されているようで、さらし者にされてるようで。

それが心に来たのかしゃがみこんでしまった。


(言っちゃ悪いけどあぁなりたくないな)


かわいそうだとは思うけどそれだけだ。


僕も人間だし。


そうして僕の順番になった。


「次の方どうぞ」


そう言われて僕は机を挟んでローブ男と向かい合った。


「水晶に手を」


そう言われて水晶に手を当てた。


漫画みたいに光を放つことは無かったけど。


(水晶の中に文字?)


水晶の中に文字が浮かんでくるのが見えた。

そこにはこうあった。


名前:ヨル シグレ

スキル:呪詛返し

称号:Sランク勇者


(え、Sランク?)


ばっ!


急いでランク分けされた区画に目をやった。

Sランク勇者はいまだに出ていない


ばっ!


そしてもう一度水晶に目を戻した。

やっぱりSランクとなっている。


(こ、これって僕がSランク勇者ってことだよな?)


そうして少し期待していると。


男は首を横に振った。


そして立ち上がってこう言った。


「ふたり目のEランクが出ました」


僕に視線が集まった。


「え?ま、まってください」


僕はさっきの水晶のことを言おうとしたが、その時


「おやおや……なるほど。残念でしたね。ヨルさん?」


僕の背後にいつのまにかエリスが立っていた。


「あなたはEランクですね。水晶のことは見なかったことにしてください」

「え?」

「この世界では【〇〇返し】とか【○○反射】という反射系スキルは価値がないんです」


そう言って俺の手を引いてくるエリス。

そして僕はふたり目のEランク勇者というカテゴリにいれられた。


最初に入っていた女の子が僕を見てきた。


しかしすぐに顔を伏せてしまう。


Cランクの方から喜ぶような声が聞こえてくる。

そしてDランクの方からは僕たちを見て安心しているようだった。


(な、なんで)


どサリ。

その場に崩れた。


(スキルに価値がないだけで、それだけ評価が落ちるのか?)


僕がそう思っているとエリスが口を開いた。


「なぜ評価が低いかお教えしましょうか?」

「は、はい。納得できません」


「敵がスキルを持ってると考えてください。【物理反射】ならば無視すればいいからです。【呪い反射】なら物理で攻めればいいです。誰がわざわざ反射される攻撃方法で攻撃するんですか?もしその攻撃方法を使う人がいたらバカですよ。あなたはばかですか?それとも賢いですか?」


それから理路整然とさらに続けてくる。


「【物理反射】ならともかく【呪い反射】とかって範囲が狭すぎますよね?それに【呪詛返し】ってなんですか?どのような範囲なんですか?おそらく【呪い反射】の亜種なんでしょうけど、使い物にならないでしょう。範囲が狭すぎて。どうせ無視されて終わりですよ」


そう言ってエリスはもう興味を失った、というように歩いていった。

残されたのは僕と名前も知らない女の子だった。




全ての生徒のランク付けが終わった。


【S】……0

【A】……148

【B】……110

【C】……35

【D】……5

【E】……2


計300人


こんな感じの結果に終わった。


待っている間、あまりにもこの空気に耐えられなかったので女の子に話しかけたけど、この子は鈴村 ユイというらしい。


けっこう目立たないタイプのかわいい女の子だった。


僕たちだけふたりEランク勇者だった。


「勇者様ガチャ300連の結果。世は満足じゃ」


と口にしているエリス。

どうやらほんとにガチャ感覚だったらしい。


(こいつほんとにイカれてるんじゃないか?)


そう思っていたらパンと手を叩いて注目を集めるエリス。

それからこう言った。


「では、最後の仕上げに行きましょうか。この仕上げがないと勇者様ガチャは終わりませんからねぇ」


そう言って僕たちのいるEランク勇者のエリアを見てきた。


(なんだ?最後の仕上げって)


にやっと口を歪めるエリス。

僕の目にはその笑顔はとてもおぞましく見えた。





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