第13話 birth《後》
最初に動いたのはレイだった。鎌の刃が下に来るよう構え、こちらに突進してくる。その刃を一振り。その一振りはこちらの足を絡めとるように振るわれた。
もちろん、それを黙って見ているなどという愚行を犯すほど馬鹿じゃない。彼の狙いが分かるなり、こちらも接近、懐に飛び込む。相手の胸めがけて迷いなく、短刀を突き出す。
それに気づいたレイの対応も素早かった。彼は柄から片手を離し、器用に柄を一回転。その柄がぴしゃん、とこちらの鳩尾に命中する。
その勢いで弾かれ、衝撃に咳き込みそうになるが、相手はその暇すら与えてくれない。瞬時に肉迫、体勢の整わないこちらの足元を、文字通り掬いにかかる。
さすがに今度は避けられない。かといって、無理に逃れようとすれば、腱をすぱんと切られるコースだ。流れに逆らわず、素直に転ぶのが一番いい。
掬われるまま、後ろに頭から転げていく。頭からだったため、大分派手に見えたのだろう。レイが目を見開いた。そこで鎌の刃が通りすぎる一瞬、肩と頭を地についた姿勢で固まり、刃が過ぎ去った後、足で勢いをつけて飛び起きる。そのまま前傾姿勢になり、再び相手の懐へ。
と見せかけて、目前でブレーキ、相手が面食らっている隙に背後へ回り、短刀の柄をこめかみに叩きつけた。
ぐ、と微かに呻きながらもレイは鎌を横薙ぎに一周振るう。さすがにその中にいるのは危険と判断し、一旦飛び退いた。
急いては事を仕損じる。勢いよく放たれた鎌の範囲攻撃はその格言の正しさを証明した。腕をちょっと掠めただけで、血がぼたぼたと零れてくるほどの威力。鎌はこれが怖い。
けれど、それ以上の反撃はない。先程のこめかみへの一撃が効いているようだ。忌々しげにこちらを見つめるレイの瞳には敵意が宿っていた。
「っ……容赦ないね」
レイが言った。軽口を叩くくらいの余裕はまだあるらしい。
「どっちがだよ」
こちらも軽口で返す。腕を滴る紅い液体を拭った。切った跡は痛いが、武器を持つのに支障はない。
油断なく刃を向け、相手の出方を見る。間合いの広さで言ったら、こちらが圧倒的に不利だ。それに先程のとおり、鎌は長柄武器の中でも安定した範囲攻撃の持ち主。威力も生半可なものではない。
それならば、後手で出るのが得策。相手の動きを見て、搦め手を回す。リーチが短い分、体の動き、ひいては思考の作用がより早く働く。それがこの武器の利点だ。
だからこそ、武器の扱いだけでなく、それなりの、無手での体術の心得がなくてはならない。
レイは痛みがある程度引いたのか、こちらに向かってかちゃりと鎌を構え直す。そのまま真っ直ぐ突っ込みながら、刃を外側に向けて振り上げる。予想外ではあったが、このパターンも頭の隅には置いていた。対処はできるものの、なんとえげつない。
レイは刃の付け根をこちらの頭に叩きつけるつもりなのだ。何もついていない柄ですら相当痛いのに、刃のついた付け根なんて、比べるべくもない。絶対ごめんこうむりたい。
そんなことを考えつつ、こちらもレイに迫る。思ったとおり、こめかみめがけて振り下ろされた柄の先に、短刀を当てていなす。勢いと刃の重みで短刀を握る手がじんじんと痺れた。その痺れが致命的なものにならないうちに離れ、レイの横をすり抜けて、背後をとる。
痺れた手がほぼ使いものにならないのを感じ、短刀を持ち変えながら、レイの背中に突き立て──ようとしたが。
「エル」
恐るべき速さでレイが振り向く。驚きに全身が凍った。
いや、レイが振り向いたことだけじゃない。驚いたのは、からん、と音を立ててレイの手からその得物が落ちたこと。そして
「ずっと、一緒だよ」
その手の中に、見覚えのある短刀が握られていたこと。
互いの刃は、止まらなかった。
ずさり。
痛みはなかった。
ただ、衝撃だけが貫いた。
最果ての一幕が、完成していた。
レイに刺さった自分の短刀。
それと……自分に刺さっているのは、師匠の短刀?
「レ、イ……これは、どういうこと?」
お互いに刃を刺した体勢のまま、訊ねる。
レイの考えていることがわからない。思考が整合性を失う。今、自分とレイは手合わせをしていたはずだ。そりゃまあ、師匠の教えに[使えるものは全部使え]とあるが、まさかここにいない人物の武器が出てくるなんて思いもしないじゃないか。
それに、あそこから、あの余裕があったなら、こちらの短刀を弾いたりして、戦闘継続が可能だった。何なら予想外の動きをしたことでこちらに隙が生まれ、レイは一人勝ちだってできた。それがなんで、胸を刺し合っている?
レイはゆらりと顔を上げ、したり顔で笑った。
「ふふ、これで一緒に逝けるね」
「逝くって、どこに?」
問いを連ねると、レイは静かに瞑目した。ゆっくりとその唇が動く。
「元の場所に」
「……どういうこと?」
ますますわからない。
自分たちにとって、元の場所とはどこだ? そもそも、自分たちが、二人でこの場所を出ることができるのか?
「エル、君は、僕らが二人で輪廻に戻ることはできない、そう思っているでしょう?」
「うん。だって、だから二人とも、この世界で生き残ってきたわけだし」
この世界を作った罪を負って。
「そうだね。僕もそう思ってた」
レイは微笑んで、静かに続けた。
「僕らは犯した罪のために正しき輪廻の道に戻ることを許されない──僕も、そう思っていたんだよ。師匠に言われるまでは」
「師匠?」
意外な名が出た。予想していなかった事態のために、飲み込みが追いつかない。だが、まあ師匠だからな。師匠が多少規格外のことをしても、あまり驚かない。だって師匠だし。
それに、簡単なことで弟子と言えど、自分の得物を易々と託したりしないだろう。あの人は[本物]の殺し屋だ。唯一の武器をわけもなく手放すことはない。
「師匠は、全部知ってたよ。僕らが殺し合ったこともそうだけど、そのせいでこの世界ができたことまで。本当は師匠は正しい輪廻の道を辿っていたんだけれど、何者かが師匠に呼びかけて、こちら側に連れてきたんだってさ。
ですよね、師匠?」
レイがこちらの後方に向かって呼びかける。すると、後ろから溜め息をこぼす音が聞こえた。
互いを刺してから動けずにいるため、姿は見えない。しかし。
「そうだよ、レイ。だが、もういいのか?」
レイに答えたその声は、確かに師匠のものだった。
問い返した師匠に、レイが深く頷く。
「もう、終わりましたから」
その意が汲み取れない。
もどかしいこちらの気持ちを読んでか、レイが続けた。
「エル、僕は最初、君と二人でいられれば、それでよかった。いいと思ってた。だから、殺し続ける君のことを責めなかったし、囃し立ててすらいただろう?
譬、君の記憶が戻らなくても、僕はあの面白おかしく生きていた日々が戻れば、それで満足だったんだ。途中、師匠が出てきて、欲が出ちゃったんだけどね。……師匠も一緒にって」
「それは思った」
「でしょ? 今にして思うと、師匠もいたから楽しかったんだと思う」
「おい、ここで私を持ち上げても、何もしてやらんぞ?」
師匠の苦虫を噛んだような声に、いいですよ、とレイが応じる。
「もう、充分ですから」
「どういう意味?」
レイの意味深長な発言に何か嫌な予感がして、すかさず問いかける。
すると、レイは手をかけたままの短刀の柄を軽く指で叩いた。
「師匠が、これを貸してくれた──正しい道を、教えてくれたんだ」
「ここからは私が説明しよう」
師匠がこちらにやってきた。若い妙齢の女性の姿をした師匠は、二人ともが見える位置に立ち、レイの説明を継ぐ。
「お前たち二人が作り出したこの[間違った世界]を[正しい姿]に戻すためには、お前たち自身が、[正しい場所]に戻る必要があったんだよ。
つまり、ここに留まり続けていつ終わるとも知れぬ殺戮を繰り広げる業を、止める必要があった。この世界を[終わらせる]のが、[正しい道]だったのさ」
「終わらせる……」
「お前たち二人が二人共[死ぬ]ってことだよ」
師匠はさらりと言った。
「死ぬ、といっても、この世界においての話だ。この世界で死ねばどうなるか、正しい答えはもう知っているだろう?」
「この世界においての死は正しい輪廻に戻ることを示す」
「そのとおりだ。
そしてもう一つ、重要なルールがある。覚えているか?」
こくりと頷く。脳裏によぎるのは、レイの説明。
「この場所に迷い込んだ者たち同士で戦わせ、勝ち残った者は輪廻に戻れないというルール」
「生き残った人は、輪廻に戻れない……」
「そうだ。問題はそこにあった。誰かが、ここに残らなくてはならない。この世界と運命を共にしなければならなかったんだ。
それを知っていたら、お前、是が非でも自分が残ろうとしただろう? 記憶を取り戻していなくとも、お前はそいつを守ろうとしていたしな」
「えっ、じゃあ、あのとき」
師匠がレイを殺そうとしたのは、自分を試すため?
そう問うと、師匠は渋面を浮かべた。
「それもあるが。そいつが真実を知っていて黙っていることに疑念を抱いていた、という方が大きいな。あのときはそいつの考えもわかっていなかったし、黙ったまま、お前だけを正しい輪廻に返す、なんて考えていたかもしれない。それがどれだけ残酷なことかも知らずにな」
師匠の言葉に、レイの表情が歪む。本当にそれも考えていたのかもしれない。
師匠はそれを責める風でもなく、続けた。
「私は、お前たちの現状を知って、戻せるのなら、戻してやりたいと思ったよ。だから、ここに来た。
私をここへ送り込んだ奴は、私だけがどうにかできる、と言っていたからな。そんな力があるなら、使うに決まっているだろう。私がお前たちを守れなかったことを後悔しているのは、本当だからな」
師匠の一言が胸をつく。短刀で刺されるより、痛い。
師匠の目に嘘がないから、尚更。
「しばらくは、お前たちの動向を見守っていた。お前たちが何を望んでいるのか、見極めたかったからな。
それで二人が二人とも、互いが救われることを望んでいると知った。
ならば、この世界が残り三人になるまで、待つことにした。私と、お前たち二人だけになるのを」
師匠はそこでにっと笑った。
「これで戻れるぞ」
今までに見たことのない──心の底から笑っている、快活な笑顔だった。
戻れる、ということに喜びを感じるよりも、師匠の笑顔が痛くて仕方ない。レイも同じなのか、眉をひそめて師匠を見ている。
「師匠……貴女はそれでいいんですか?」
眉根を寄せ、切なげな表情でレイが問う。師匠は笑顔を引っ込め、「何がだ?」と真顔で応じた。
「貴女が言ったように、ここのルールに則って、最後の一人はもう輪廻に戻れないんですよ? 僕らが逝ったら、貴女は一人、この世界と共に消える。それでいいんですか?」
「そのために来た」
あっさりと答える師匠に絶句するレイ。
消える。輪廻に二度と戻れない──それはもう元の世界に戻れないことを示している。輪廻転生では、死んだら一度、記憶をまっさらにされてから生まれ変わるということだから、記憶は残らないのだろうが、また[生きられる]可能性がある。師匠はそれを捨てようとしているのだ。
「師匠は、死んでもいいっていうんですか?」
レイの静かな問いが落ちる。少し声が震えていた。
「僕は、エルと、師匠と、三人で戻りたかった! 三人でいたあの時間が僕にとっては救いだった。譬、歩む道が闇の中だったとしても、あのときだけは、光を感じられたから……ねぇ、エル。君も、そうだったろう?」
「うん……」
レイに話を振られたけれど、上手く言葉が出ない。[天使]だった自分は、感情を極力排してきたから。こういうとき、何もわからなくてもどかしい。
「でも、もう戻せないんですよね。幕切れはもう、完成してますから」
そっと手元に目を落とす。自分の胸に刺さった師匠の得物と、レイの胸に刺さった自分の得物。つられて視線を落としたレイがはっと息を飲む。
「この短刀、師匠がレイに貸したんですか?」
全く関係のない問いを発した。けれど、自分の中では重要だった。
「ああ」
師匠が自分の得物を他人に託すなんて。そう思ったから、師匠の本音をちゃんと受け止めたいと思った。
師匠に別れを告げるために。
そんなこちらの思いを見抜いているのかいないのか、師匠はこんなことを続けた。
「妙だろう? この世界のルールでは、砕器は持ち主の心を映して形を成す。それが他人の手に渡っても、私の短刀の姿のままなのか」
言われてみると、確かにそれは妙だった。しかし、それは今、関係あるのだろうか。
「私は一度正しい輪廻に行った。ここにおいては特異な存在だ。あるいは、創造主であるお前たちよりもな。
私はこの世界のルールに反した存在なんだよ。だから砕器も変わらないし、姿だって死んだときと違う。それゆえに、私はお前たちを変えられる唯一の因果になれた。
嬉しかったよ、それを知ったとき。お前たちをちゃんと守れると思って。いや、それ以上に──お前たちにとって、私がそれくらいの存在であったことが、嬉しかった。だからそれで充分なんだよ」
師匠がこちらに歩み寄り、二つの短刀に手をかける。それらをゆっくり引き抜いた。感覚が麻痺しているのか、痛みはない。
しかし、異変はすぐ起こった。短刀が体から離れるなり、自分とレイの体が消え始めたのだ。砂のようにさらさらと崩れていく。
師匠を見ると、始めからそうなることを知っていたように、落ち着いた眼差しでこちらを見つめていた。
「師匠……」
「そんな悲しい顔をするな。弟子の失敗の尻拭いくらい、当然の務めだ。……二人とも、今度こそ、間違うなよ」
師匠の一言に、自分たちの生前の最期を──あのときを思い、何も言えなくなった。出ない言葉の分、レイと二人で強く頷いた。
それを見て、師匠も満足げに頷き、思い出したように付け加えた。
「そう、一つ言い忘れていたが、お前たちは通常どおりに輪廻に戻れるわけじゃない。お前たちのよく知っている場所に戻るらしい」
「え、それってどういう」
「時間だ」
最後の問いかけは途中で止めざるを得なかった。
視界が薄くなっていく。気づけば、レイの姿はもう見えない。師匠の姿もおぼろげだ。
「同じ過ちを繰り返すなよ。次はないんだから」
師匠のそんな声を最後に、意識は真っ白い闇の中に溶けた。
ふと気づくと、見覚えのある天井。──師匠の家?
「ここは」
呟きながら、起き上がりかけて、手がかたりと何か固いものに触れる。見るとそれは見慣れた自分の
「……レイッ!」
はっとして辺りを見回す。短い白髪の親友の姿は、ない。
「レイ、レイ、どこだ? 師匠、よく知っている場所に戻るとか言っていたけど……って、あれ?」
おかしなことに気づく。
[輪廻の道]にいたときの記憶がある。殺し合いの記憶も、師匠やレイと交わした言葉も、実際にあったことのように鮮明に思い出せる。
現実より現実味がなく、夢よりどこかおぼろげだった世界。思えば不思議なことだらけだったのに、現実として受け入れかかっている自分がいた。
ここは、どこだ?
先程の疑問に立ち返る。今問題にすべきはそこだ。
あれが現実であるなら、レイもいるはずなのだが……全く同じ世界に戻れるなんて、自己中心的すぎる考え方だったか。
「エル?」
そんな自己嫌悪に陥りかけたところへ、望んでいた声が降りかかる。なんて都合のいい耳……じゃなくて、え?
「エル、目を覚ましたんだね」
部屋の戸を開けて現れたのは、探していた白髪。
「レイ!!」
「わわ、エル?」
思わず飛びつくと、レイは戸惑ったような声を上げる。けれどその声が自分の鼓膜を震わせていることへの喜びで頭がいっぱいだった。
レイが生きている。自分も生きている。
それがこんなに嬉しいものだなんて、今まで思いもしなかった。
「ちょっ、エル、落ち着いて。苦しい」
「あ、ごめん」
レイの首に巻きつけた手を放す。レイを見ると、困ったように、でも微笑んでいた。
「でもよかった、エルが目を覚まして。この様子だと、[輪廻の道]のことは覚えているみたいだね?」
「あれってやっぱり、本当にあったことなのか」
神妙な面持ちでレイは頷いた。
「どうやら僕らは、直接輪廻に戻るわけじゃなく、[あのとき]からやり直すことになったみたい」
レイの説明に──主に[あのとき]という言葉に反応する。
「あのときって、まさか」
「そのまさか。起きたら、血塗れのエルが目の前に転がっててびっくりしたよ。まあ、僕も君に刺さっていた傷が残ってたんだけど」
「大丈夫なの?」
「うん。お互い、傷は浅かったみたいだよ」
これのおかげでね、とレイが二つの小さな手帳を見せる。何の変哲もない一般的な手帳だが、その中央に刃物で刺した穴が開いていた。
「これは、いつも胸ポケットに入れていた」
「まあ、手帳くらい、胸ポケットに入れてても、不思議はないよね。それより」
レイは二つの手帳をばらばらと開いた。そこからひらりと二枚のくたびれた紙が落ちる。それは写真だった。自分とレイともう一人が映った写真。そのもう一人は真ん中で刃の跡に貫かれていた。
「師匠……」
「師匠だけがっていうのは、こういうことだったんだね。師匠が僕らの命を、間一髪で引き留めてくれたのかもしれない」
「そう、だね」
「今度こそ、間違うなよ」
「次はないんだから」
はい、師匠。
今度こそ、自分たちは正しい形で、自分たちの望みを叶えます。
「でもさ、エル。僕は生きてるわけだけど、依頼、どうするの?」
問われて、少し胸がそわりとした。自分で出したことのない答えを、今、出そうとしている。掴めないと思っていた未来へ歩き出そうとしている。そのことがどうしようもなく嬉しくて、くすりと笑った。
「……無視して、とんずらしよう。二人で」
「わぁっ! あの天使さまとは思えない発言」
「もう天使じゃないからいいんだよ」
苦笑して答えながら、レイに手を差し出す。
天使だった自分は死んだ。輪廻の道なんて過った場所を作った
自分たちがここからやり直すのは、やはり[あの世界]をなかったことにするため、不可避なことだったのだろう、と理解する。[あのとき]のあの瞬間に輪廻の道ができたのだとしたら、[あのとき]をなかったことにするのが一番手っ取り早い。[輪廻の道を生み出させない]そうすれば、輪廻の道という世界は存在しなかったことになる。
師匠を招いた存在が何者なのか、わからないまま終わってしまったけれど、世界の均衡を保つ大いなる何者かのようでいて、実は助けを求めていた[エル]という一人の人間だったのかもしれない。
三人で、というのは叶わなかった。三人で過ごしたあの時間に戻れるなら、それ以上は望まないけれど、師匠はそもそも天寿を全うした身。その魂までをも巻き込んで、滅茶苦茶やっておきながら、全てを望むのは業突張りというものだ。
もう師匠はいないけれど、今度は自分たちが天寿を、世界をねじ曲げず、真っ当に生を全うしていきたい。
ああ、初めて。
ちゃんと、[生きたい]って思える。
「今度こそ、[
「……うんっ!」
RE 九JACK @9JACKwords
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