おじさん、魔王と対決する

 エンシェントプラチナドラゴンをゲットして後、俺は他のプレイヤーとたくさんのゲームバトルを繰り広げた。


 エンシェントプラチナドラゴンは俺の最強の相棒になっていた。


 ──そんなある日のこと。


『アハハハハハハハハハ! 諸君、モンスター集めご苦労様でしタ! さぁ、今から“解放”するヨ?』


 ────クラウンは日本中のテレビをジャックする。


 町中のモンスターカードからモンスターが溢れ出す。


《うわあああああ! どうなってんだ!》

《きゃああああああああ!》

《なんでカードからモンスターが!?》

《お、おいどこに行くんだ!?》


「おじさん、大変なことになりました!」


 うらら達が俺の家に飛び込んでくる。


「ア、アタシのモンスターが!? ど、どうなってんのよこれぇ!」


「私のアルミラージがぴょんぴょん飛んで、どっかいっちゃった、かも!」


「俺のエンシェントプラチナドラゴンはなんともないぞ? テレビを見たけど、クラウンのやつ一体、何を?」



『ピンポンパンポーン! お前らの集めたカードには倒したモンスターの“魂”が吸い取られていたんだヨ? 僕のユニークスキルで作った特別性のマジックアイテムだヨ!』


「クラウン……、一体何が目的でなんだ……」


『そしてカード化したモンスターは僕の力で実体化し、僕の意のままに操れル! アハハハハハハハハハ! 僕はね、なってたみたかったんだヨ。“魔王”にネ!』


「──魔王だと……」


『せっかくダンジョンが生えてきてファンタジー世界になったんだから、魔王がいなくちゃ締まらないよネ! このつまんねー世界を僕が面白おかしくしてあげるヨ! 人生は喜劇だヨ! アハハハハハハハハハ!』


「────狂ってる……」


『スカイタワーに僕は陣取るから、不満があるなら誰か僕を倒しにきてみなヨ? タワー周辺に配置した、10万を超えるモンスターの軍勢を倒せるならネ? ミサイルでも撃ってみるかイ? 冒険者とモンスターには近代兵器は効かないけどネ! アハハハハハハハハハ!』


 道化の狂笑は止まらない。


「オジぃ、奴をぶっ飛ばしに行くわよ!」


「でも10万を超えるモンスター軍勢相手は無理ですよ!」


「悔しい、かも……」


「────ん?」


 俺のエンシェントプラチナドラゴンのカードが光り出す。


「うお!?」


「オジ、エンシェントプラチナドラゴンが実体化したわよ!?」


「大変です! 攻撃してくるかも──」


『乗りなさい。人の子らよ』


 声ではなく心に響く。


「て、テレパシー……か?」


『クラウンの力は、最強種である私には及ばなかったようです。彼を止めたいのならば乗りなさい』


「エンシェントプラチナドラゴン……。力を貸してくれんるんだな! 分かった! みんな、乗るぞ!」


「行きましょう! 彼を止めなくてはなりません!」


「ぶっ飛ばしてやるわ!」


「魔王なんてこの世界にはいらない、かも!」





《クラウン視点》


「アハハハハハハハハハ! この世は僕のおもちゃ箱だヨ! ああ、どうしようかナ?  虐殺? 撲殺? それとも奴隷? 笑いが止まらないヨ! ん?」


 タワーの外から音がした。


「ンンンンン? あれは……ドラゴン!?」


 ガシャアアアアアンとガラスが割れ、ドラゴンとそれに乗った何者かが現れた。


「────クラウン、お前を止めにきた!」





「エンシェントプラチナドラゴン……。けっ、僕の能力が効かないとはふざけた奴だネ……」


 クラウンは苦々しい顔をしている。


「今すぐこんな事はやめるんだ!」


 俺はクラウンに叫ぶ。


「ケッ、ドラゴンの背に乗って勇者様登場って訳カ? でも”魔王”にはまだ早過ぎるよネェ! いでよ!」


 クラウンは手持ちのカードから、何十体ものモンスターを召喚する。


「レッドドラゴン、バリアデーモン、キングスケルトン、ドレインスライム。……S級モンスターばかりです!」


「────クリエイト“ソード”」


 俺がクリエイトを発動するとモンスター達が次々と剣と化す。


「なっ!? テメーの能力はモノを他の何かに変換する能力だろウ!? なのになぜ──」


 クラウンは焦っている。


「──分からないか? いったんカード化した以上、そいつらは“モノ”扱いとなる」


「くっ、そんなインチキ通るかチョクショウ! ノーカン! ノーカン!」


 クラウンは騒いでいる。


「終わりね、クラウン!」


「覚悟して下さい!」


「私のぴょんぴょんを奪った罪は重い、かも!」


「ハアアアアアアアアアア……。もういいヨ。おまえラ」


 クラウンが大きなため息をした途端、急に不気味な気が漂い始まる。


「みんな、注意してくれ!」


「僕の体に、僕の操る全てのモンスターの力を取り込む”ヨ……。 お前らは運がいイ……。本物の“魔王”の誕生の瞬間に立ち会えるのだかラ……。アハハハハハハハハハ!」


 クラウンの全身が闇に包まれる。


「アハハハハハハハハハ! 力がみなぎってくル!」


 そして、闇からい出てきたクラウンの様子は変貌へんぼうしていた。


 漆黒の翼をまとう、その姿は絶望そのもの。


 まさに異形。まさに魔王。


『さァ、世界の終焉しゅうえんダ』


 クラウンは俺たちには目もくれず、タワーの外へと飛び立った。


「待て!」


────大魔王ダーク・クラウンが現れた!









 














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