おじさん、流行りのマジックアイテムに出会う

「おじさん、“モンスターカード”って知ってますか?」


 家でくつろいでいると、うららが話を振ってきた。


「モンスターカード?」


「はい、今、冒険者たちの間でめちゃくちゃ流行ってるマジックアイテムなんですよ!」


「へぇ、そんなのがあるんだ。どんな効果があるの?」


「ふっふっふ、まぁこれを見てください!」


 ふららは4枚のカードを取り出す。しかし、カードにはなんのデザインも入っていない。


「モンスターカードって割には、なんのモンスターもデザインされてないようだけど?」


「そこがこのカードの面白いところなんですよ! なんとモンスターを倒した時にこの空のカードをかざすと、そのモンスターのデザインが浮かび上がってくるんです!」


「へぇ、それは面白いな!」


 俺は一気に興味を持った。少年の心がよみがえってくる。


「単純に強いモンスターが人気だったり、逆に弱いけど出現率が低くレアなモンスター、かわいいモンスターなんかもコレクターの間では高値で売買されているみたいです!」


「なんかトレーディングカードゲームみたいな感じだね」


「この前かわいい激レアモンスターが一枚で、100万円近い値段がついたとか……」


「すごいな……。ホゲモンの激レア仕様のロンジャモみたいだ……」


「ここに空のカードが4枚あります。今度、ダンジョンに行った時、みんなでモンスターを倒してカード化してみませんか?」


「うん、そうだね。なんか童心を思い出してワクワクするなぁ! ところで誰がこんなモノを開発したんだろう?」


「それはこの方です」


 うららは自分のスマホを俺に見せる。


 そこにはピエロの格好をした陽気な男が映っていた。



『やぁやぁみんな、僕が作った“モンスターカード”で遊んでル? このカードは特別性でネ。カードにデザインされたモンスターが、なんと立体ヴィジョンとして再現されるのダ!』


 男がモンスターのデザインが入ったカードに向けて「召喚」とつぶやく。


 するとカードにデザインされていたゴブリンが立体的に出現する。まるで3D映画のようだ。


「こんな感じにモンスターが出てきて、他のプレイヤーのモンスターと対戦することもできるんダ! みんなぁ、僕のカードでどしどし遊んでくれよナ! アハハハハハハハハハ!」


────“道化のクラウン” チャンネル登録者数

《1080万人》



「日本に10人しか存在しない、チャンネル登録者数“1000万人”超えの配信者の内の1人です!」


「確かそれって──」


「ええ、その10人は“十天衆じってんしゅう”と呼ばれています」


「“十天衆”……」


 人気、実力、全てを兼ね備えた配信者のいただき、それが“十天衆じってんしゅう”だ。





「うらら、アンタよくこのモンスターカード手に入れたわね! アタシはどこに行っても品薄で買えなかったわ……」


 リッカはカードをしげしげと眺めている。


「朝から魔道具ショップに並んで、やっと4枚分買えたんですよぉ! 大変でした……」


「うらら、えらいえらい」


 レンはうららの頭をなでなでしている。


「えへへー! レンさんありがとう!」


 うららは気持ちよさそうに撫でられている。


《おー! 今日は“モンスターカード”回か!》

《今、めちゃくちゃ流行ってるもんな》

《全然手に入らねぇよぉ!》

《へへっ、俺のゴーレムのカード結構、強いぜ?》


「みんなはカードにデザインしたいモンスターは決まった?」


 俺はみんなに質問してみる。


「うららはやっぱり可愛いモンスターがいいですねー!」


「アタシは強いモンスターならなんでもいいわ! 力こそ全てよ!」


「私は動物系のモンスターがいいかも。もふもふ、最高」


 こういうのは個性が出て面白いな。


「オジィ、アンタは何のモンスターを狙ってんのよ?」


 リッカがたずねてきた。


「やっぱドラゴン系、かな。ドラゴンには男のロマンが詰まってからね! うー、ワクワクしてきたな!」


「男の人はドラゴン好きですよねー!」


「アンタ、小学生の裁縫箱さいほうばこのデザイン、ドラゴン選んだタイプでしょ?」


「ぎくっ、なんで分かったんだ!?」


「分かりやすすぎる、かも!」



《そういえばドラゴンと言えば、“青い目のホワイトドラゴン”がすげーらしいな!》

《知ってる! どっかの社長がこの世に3枚しかないそのカードを買い占めたんだよね!》

《アレは別格だよな》



「へぇ、ドラゴンの色によって結構値段違ってくるんだね」


「そうなんです。値段の低い順から言うと白、青、黄色、緑、赤の順番ですね。特に赤まで来ると激アツですよ!」


「でもさっきコメントで白いドラゴンが高いって言ってたよ?」


「そこがこのカードの深いところなんですよ。通常安い値段で取引されている白いドラゴンがですが変異種となると、これが評価が逆転するんです!」


「へぇー面白い! これはぜひとも激レアのドラゴンをゲットしたくなってきたな! おじさん頑張るぞー!」





《道化のクラウン視点》


 その道化は独り、笑っていた。


「アハハハハハハハハハ! この調子でどんどんモンスターをカード化するがいイ! そうすれバ、そうすれバ──」


 モンスターのカード化は止まらない。それが道化の策略だとは誰も気づかぬままに。


「アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」


 道化の狂気は疾走しっそうする。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【大事なお知らせ】


最新話まで読んで下さり、本当にありがとうございました! 


・ページ下にある“☆で称える”の+ボタン3回押し

・作品フォロー


 作品を書く励みにとってもなるので、よろしければぜひお願いします!

 

 


 









 





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る