レン、パーティに加入する

十六夜いざよいレンちゃんのパーティ加入を祝って、かんぱーい!」


「「「かんぱーい!」」」



《かんぱーい!》

《かんぱい!》

《かーんぱーい》

《ばんかーい!》

《かんぱーーい!》


 恒例こうれいとなった俺の家でのオフコラボだ。


 モンスターハザード事件後、レンはパーティに加入したいと言ってきた。


 その実力を実践で体験していた俺には、断る理由もなく、面接も必要ないと判断し、みんなからもOKが出た。


「よ、よろしくお願い、するね?」


 レンは少し緊張しているようだ。



 ──『十六夜いざよいレン』 チャンネル登録者数900万人



「やったあ! レンさんもパーティに加入してくれましたー! えへへ!」


 うららはレンに抱きつきながら、頬ずりしている。仲がよくて何よりだ。



───『姫乃ひめのうらら』 チャンネル登録者数730万人



「うん、うららも喜んでくれて嬉しい、かな」


 レンは微笑ほほえみながら、うららの頭をなでなでしている。


「まぁ、このパーティに入りたいと思うのはトーゼンよねぇ。何せこの天才大魔導士リッカ様がいるパーティだもの! 大船に乗ったつもりでいなさいよね!」


 リッカはムフーと鼻息を鳴らす。



 ────如月きさらぎリッカ チャンネル登録者数820万人



「うん、リッカはカッコよくて可愛い。私も好き、かな」


「ふええぇ!? そ、そうかしら……。あ、ありがとう……」


 リッカは顔を真っ赤にしてうつむいた。よかった。リッカとの相性もいいみたいだ。


「これでパーティは四人になったね、。タイプ的には物理アタッカー、魔法アタッカー、ヒーラー、バッファーでバランスもかなりいいと思うよ」



────『おじさん』 チャンネル登録者数980万人



《みんなチャンネル登録者数増えたなぁ!》

《この前の事件、おじさんニュースに出てたよ!》

《ドレインスライムから街を救ったヒーローだってな!》

《国からおじさん達に勲章くんしょうが出るってウワサだぜ?》

《マジ!? みんなすげーww》

《おじさん、カッコよかったよー!》



「みんなもいつも応援してくれて、ありがとう! ここまで来れたのもみんなのおかげだよ!」



《固いこと言うなってw俺たちの仲だろ!》

《いやぁ、照れるなぁw》

《ありがとう!》

《thank you!》

《Grazie!》

《謝謝茄子!》

《ขอบคุณ ครับ!》



「思えばあっという間でしたね、おじさん」


 隣にいるうららがそう言った。


「チャンネル登録者1人の時が懐かしいなぁ。うららちゃん──いや“チョコプリンちゃん”のおかげだよ」


 うららのハンドルネームは“チョコプリン”だった。


「わわっ、これまた懐かしい名前を……。えへへ、覚えていてくれたん、ですね……」


「忘れる訳ないさ。俺の最古参のファンだからね!」


「へー、うららってオジの最初の登録者だったんだぁ」


「意外、だね」


「えへへ、そうなんです。だから、これからもずっとお側で応援させてくださいね!」


 彼女の瞳はまるで星のようにキラキラしている。


「ははっ……少し照れるな」


 俺はポリポリと後頭部をかく。


「(さすがアイドル……。あざといわね……)」


「(うん、さすがうらら、かも)」





「ごくっ、ごくっ、ごくっ、プハー! やっぱ仕事終わりのビールは止められないな!」


 俺はキンキンに冷えたビールを一気にあおるる。


 うららとリッカがまたジッーとこちらを見ている。


「ノンアルコールもあるけどダメだよ。この前それで俺、大変な目にあったからね?」


「オジ様、大変な目って?」


 レンが興味津々きょうみしんしんいてきた。


「ノンアルコールビールなのに2人共、酔っ払っちゃって……」


「ふふっ、そんな事があったん、だね」


「あ、あれは忘れて下さい……」


「ほえ? そんなことあったかしらね?」


 覚えてすらないんかい。


「じゃあ、私もビールいただこう、かな?」


「あれ? ああ、そういえばレンちゃんはハタチだったね」


「そういえばそうでしたね」


「え!? ず、ずるいわね!」


「じゃあ、新しいビール取ってくるよ」


 そうして俺はビールを取りに行こうとしたが──


「ううん、オジ様。それ、ちょーだい」


 レンは俺の飲みかけのビールを指差す。


「え? 俺の飲みかけだよ? 新しいのあるに……」


「ううん、それでいい、かな」


「それじゃ、どーぞ」


 俺からビールの缶を受け取ると、レンはそれをグイッと飲み干した。


「初めてお酒のんだけど、苦い、かも……」


「え? 初めて? ならちょっとだけの方がよかったんじゃ……」


 レンの顔はみるみる赤くなっていく。


「あっー! ずるいです!」


「そうよー! そうよー! いいもんねー! 子供ビール飲んじゃうからいいもんねー!」


「だ、大丈夫? レンちゃん?」


 俺は心配になって声をかけるが──


「うーん……熱い、かも……」


 ポゥーとした顔でレンは服のボタンを外し始めた。


「うわああああああああ! 配信中だよ、レンちゃん! うららちゃん、リッカちゃん、止めてあげて!」


 俺は必死に目をらす。


「は、はい!」


「レン、なにやってんのよアンタぁ!」



《おい、おじさん! 止めんじゃねぇw》

《おじさん、俺たち仲間だろ?》

《オジ君……見損なったぞ》

《おじさんが代わり脱げ》

《私、おじさんのが見たいなぁ……》



「みんな今日はありがとう! ではまた!」


 俺は急いで配信をストップさせる。


《あっー!まてこら》

《おじさん待っ──》


「ふぅ、これで大丈夫か」


 やれやれ……レンもお酒にそう強い方ではなさそうだ。





「レンったらすっかり酔い潰れちゃって……。やれやれ、こうはなりたくないものね」


 リッカはふぅーとため息を吐く。


 おい、どの口が言ってるんだ。どの口が。


「レンちゃん、大丈夫かな?」


 俺は心配になって顔をのぞくと、レンはいきなり俺に抱きついてきた。


「うーん……おじ様ァ、チュウしたい、かも。チュッ。えへへ」


「!?」


 レンは俺のほっぺにキスをした。


「ああああああああああ! 何やってんですかぁレンさああああああん!」


「ぎゃああああああああああ! レン、何やってんのよおおおおおおおおおお!」


 よ、酔いって怖いね。


 お酒はほどほどにしようと、俺は固くちかった。



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