リッカ、モンスターを殲滅《せんめつ》する

《リッカ視点》


「いるわね! モンスターがうじゃうじゃと!」


 辺りにはゴブリン、キメラ、オーク、ワイバーン等、多種多様なモンスターがひしめき合っている。


 そしてアタシ達に目をつけたのか、一斉に襲いかかってきた。


「リッカさん! 来ます!」


 うららが警告する。


「任せなさい!」


 アタシは魔力を込める。詠唱はキャンセル。


 詠唱をキャンセルすることで、威力は多少落ちるが素早く放つ事が可能だ。


「────『ライトニングストーム』!」


『ぎしゃああああああああああああああ!』


 雷の暴風が吹き荒れる。雷の上級魔法だ。下級のモンスター程度ではひとたまりもないだろう。


「うららにだって、出来ます!」


 うららは魔力を込め、集中し始めた。


「アンタは敵を傷つける事が苦手でしょう!? 無理をしないで──」


「────『ホーリーノヴァ』!」


 辺りが白い光に包まれる。聖属性の上級魔法ホーリーノヴァだ。


「うららはもう敵を傷つけることを怖がりません! “守られるだけ”の存在じゃない! だって、だって“守りたいものが”うららにはあるから!」


 彼女の瞳には炎のような熱い決意が宿っている。


「うらら、アンタ、成長したわね……」


「えへへ、そ、そうでしょうか。──っと早くケガをした人達を治しに行かないと!」


「ええ、そうね。うらら、アンタはケガ人の治療に向かいなさい。モンスター殲滅せんめつはアタシに任せて」


「でもリッカさんを1人にする訳には……」


「ふぅ、アタシを誰だと思っているのかしら。この天才大魔導士を甘くみてもらっちゃあ困るわね! それに安心しなさい。アンタを1人にさせる訳じゃないから!」


「──え?」


 アタシは“ユニークスキル“を発動させる。たちまちアタシの瞳が赤くなり、莫大ばくだいな熱量を発する。


「ぐっ……ああああああああああああああ!」


「リッカさん、何を!?」


『“魔眼まがん”起動。“神域しんいき”接続』


 バチバチバチと周囲に魔力が吹き荒れる。


『災いをもたらす終末の獣よ、我の呼び声に応えるがいい! 呼応せよ、顕現けんげんせよ『フェンリル』!』


 現れたのは巨大な白銀のおおかみ。しかし、ただの狼ではない。


 圧倒的なオーラを放ち、周囲のモンスターを威圧している。


『グルルルルルルルル……』


 アタシはフェンリルの頭をよしよしとなでる。


「ふぅ、やっぱこの技、疲れる……わね……」


 アタシの足が、一瞬ふらつくが、なんとかふんばってこらえる。


「──リッカさん、これは……?」


「アタシのユニークスキル“魔眼・神域まがんしんいき”はね、この世ではない“神域”に存在すると言われる幻獣げんじゅうを召喚し、使役しえきする能力なのよ」


「──すごい……です」


「エサの時間よ、フェンリル。さぁ存分に食い散らかしなさい!」


『ウォォォォォォオオオン!』


 フェンリルは呼応するようにおたけびをあげると、周囲のモンスターを蹂躙じゅうりんし始めた。


 そのとき、わずか2秒。


「え? もう倒しちゃったんですか!?」


「この子をアンタに付けてあげるわ。行きなさい、うらら。アンタにはアンタにしか出来ない事があるでしょう?」


「は、はい! うらら、行ってきます!」


 フェンリルと共にうららはケガ人を治すためにけて行った。


 それを見送ったアタシはふぅと息を吐く。


 周りにはまだコリもせず、うじゃうじゃとモンスターがわいてきている。


 アタシはゴキゴキと首を鳴らす。


「ふぅ……。さぁ、かかってきなさいモンスター共……。天才大魔導士リッカ様の本気、見せてあげるわ!」





 スマホから着信がある。リッカからだ。


「もしもし、そっちは大丈夫か!?」


「オジぃ……、外のモンスターやっつけといたわよ……。うららも私の“使い魔”がついてるから大丈夫……。残るは後、1匹……。アタシがやりたいけどもう魔力が空っぽ……。後は任せたわ……」


 リッカはしんどそうな声をしている。


「うん、よくやってくれたね、すごいよリッカちゃん。後は俺たちに任せて、安全な場所でゆっくり休んでいてくれ」


「うん。でも気をつけてあのモンスターは──」


「もしもし? もしもーし?」


 ツーツーツー。電波の調子が悪いのか、通話はそこで途切れてしまった。


「うららとリッカは大丈夫だった、かな?」


 レンが心配そうに俺にたずねた。


「うん、大丈夫そうだ。でも後、モンスターが1匹だけいるみたいだ。急ごう!」


「うん、ラスト、だね!」


 俺たちは急いで会場を後にした。





《おっ、やっぱ配信してるやついたか》

《なんだあのモンスターは!?》

《デカ過ぎんだろ…》

《す、スライム?》

《スライムってあんなにデカくなるもんなのか!?》

《デカスギィ!》

《近くにいる奴は早く逃げろよ!》

《でもFPS辞められないんですけど!》


 俺たちが会場の外に着くと、真っ先に目がついたのは、スライムだった。


 しかしただのスライムではない。


 高層ビルをも凌駕りょうがする、巨大な強大な青いスライムだった。


「デカ過ぎる……かも」


 レンは目を丸くして、絶句ぜっくしている。


「────これは《ドレインスライム》……か」


「ドレインスライム?」


 リッカは首をかしげている。


「あぁ、S級モンスターの中で“最弱”と呼ばれるモンスターだ」


「最弱? あんなに大きい、のに?」


「最初は普通のスライムと見た目、大きさが変わらないのがやっかいな点でね。油断して、攻撃すると、その攻撃を吸収して、際限さいげんなく成長するんだ」


「じゃあ、もしかして──」


「多分、救助に来た他の冒険者たちの攻撃を吸収したんだろうね。それで大きくなったから冒険者たちが焦って攻撃をして、それを吸収しての繰り返し──。それでああなった可能性が高い」


《あああああああああああ》

《もうお終いやね……》

《じ、自衛隊とか来ないのか!?》

《馬鹿……モンスターに現代兵器は通じねぇんだよ……》

《冒険者の魔力が通った、攻撃や魔法じゃないと無理ポ……》


「成長する度に吸収できる攻撃の範囲も底上げされる。あの大きさを倒すには相当な威力をともなった一撃じゃないと吸収されてしまう。あの状態のドレインスライムはS級モンスターでもトップクラスだろうね」


「じゃ、じゃあどうればいいのかな……。諦めるしか、ないの?」


「いや、策はある!」


「!?」
















 



 


 

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