おじさん、大人気ガールズバンドの美少女ボーカルに出会う
歌が聞こえる。
『暗闇に咲き誇れシャドウローズ 闇を
俺のスマホには今、大人気のガールズロックバンド“シャドウローズ”の動画が流れている。
「オジィ、何、聴いてんのよ?」
リッカが俺のスマホをのぞきこむ。
リッカはパーティーに加入して以来、すっかり俺の家に入り
「ん? 聴いたことないか? この音楽」
俺はスマホの音量を上げる。
「シャドウローズじゃない。知ってる、知ってる。黒髪ロングのボーカルの子、けっこう可愛いのよね〜。ま、アタシの方が可愛いけどね!」
「そうだね……」
「その“点点点”は何だコラァ!」
大人気ガールズロックバンド『シャドウローズ』のボーカル“
彼女のキレのある歌詞とメロディは日本中を熱狂させた。
その
────『
「あら? でもシャドウローズって確か最近──」
「そう、無期限の活動中止らしいね……。レンって子はソロで活動しているみたいだけど」
「もったいないわねぇ……」
「ただいまですー!」
うららがアイドル関係の仕事が終わり、帰ってきたようだ。
「お帰り、うららちゃん」
「お疲れ〜うららー。あら、なんか嬉しそうな顔してるじゃない? 何かあったのかしら?」
「じゃーん! これ見て下さい!」
うららは三枚のチケットを見せびらかす。
「こ、これは!」
「
俺たちは目を丸くする。
「えへへー! 実はレンさんとは仕事でご一緒することがあって、それ以来仲良くさせてもらってるんです! それで招待券もらっちゃいました! みんなで行きませんか?」
「ちょうど、俺たちその話してたんだよ! そんな繋がりがあったんだね」
「いくしかないでしょ、オジィ! サンキューうらら!」
俺とリッカはガッツポーズをする。
「楽しみですね〜!」
♢
ここは
俺たちに会って話してみたいことがあると、うららに頼み込んだらしい。
俺はコンコンコンと楽屋をノックをする。
「──はい」
するとガチャッとゆっくりドアが開いた。そこにはあの“十六夜レン”がいた。
「初めまして、
「は、はじめまして……。お、お願いするわ」
リッカは有名人を前にして緊張しているようだ。
「やっほー、レンさん!」
「うん、やっほーうらら。皆さん、とりあえず上がって欲しい、かな」
俺たちは楽屋の中に入っていった。
♢
「敬語はなくても構いませんよ、
レンがこちらを向いてそう言った。
「そうか、それはありがたい。ああ、レンちゃんも敬語を要らないよ。おじさん、かたくるしいのは嫌いだからね」
「ありがとうございます──じゃなくて、ありがとうオジ様」
「お、オジ様!?」
「なんかその呼び方が気に入ったんだ。ダメ、かな?」
レンは小首をかしげてこちらをじっーと見ている。なんか猫みたいだな、この子。
「いや、気に入ったなら別にいいよ。好きに呼んでくれて構わない」
「ありがとう、オジ様」
しかし、オジ様って慣れないなぁ……。
「今日は私のソロライブに来てくれてありがとう。ふふっ嬉しい、かな」
彼女は微笑を浮かべる。
「今日のライブ楽しみにしてますよ! レンさん!」
「ま、まぁ、そこそこ、いい声してるみたいだし? た、楽しみにしてるわよ!」
まだ緊張してるんかい……。
「それで今日は、何か話したいことがあるって聞いたんだけど……」
今日、俺たちを呼んだ要件をたずねてみた。
「相談したいことがある、かも」
そこで少し彼女はうつむいた。表情も心なしか暗くなったように感じる。
「何をですかー? レンさん」
「な、な、なによ……」
「ちょっと悩んでいることがあるんだ。それでうららから、オジ様のことよく聞いてたから、それで相談をしたい、かも」
「えへへー、おじさんは頼りになるんだって、よく話してたんですよー!」
うららはドヤ顔で胸を張る。
「え、そんな話を!? 俺が頼りになる──かなぁ……」
「そんなことないですよー? ねー? リッカさん!」
「ま、まぁ私の次?くらいには頼りになるじゃないかしら?」
「だから私の悩みを少しだけ聞いて欲しいんだよ。ダメ、かな?」
「分かった。俺なんかでよければ話を聞かせてもらうよ」
そして彼女は己の過去を語り始めた。
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