おじさん、金髪ツンデレ美少女と特訓する

 それから俺たちは鬼のような特訓をした。質問攻めである。


「リッカちゃんの好きな本は?」


「やっぱ、夏目漱石の『こころ』よね〜」


《『異世界に転生した俺、最強能力で無双します!〜ps.やれやれ女の子にモテモテで困ってるんだが?〜』が大好き!》


 見栄みえ張りすぎだろ……。


「好きな漫画は?」


「はぁ? 私が漫画なんて見る訳ないでしょ?」


《わ⚪︎ぴいす大好き!》 


 もっとジブンに、正直に生きろよ……。


「好きな食べ物は?」


「アクアパッツァかゼノベーゼね」


《ど◯兵衛》


 俺も大好きだよ、ど◯兵衛……。


「人生で一番嬉しかったことは?」


「まぁ、私の魔法が世界中に貢献こうけんしていることかしら?」


《えへへ! チョ◯ボールの金のエンジェルが当たったこと!》


 俺、銀しか当たったことないよ……。





「はぁ、はぁ、はぁ、す、全てを吐き出したわ……」


 彼女は仰向けになって、肩で息をしている。


「どうだ? 少しは素直になれそうか?」


「えぇ、心がスッキリして軽くなったわ。今となっては、なんであんなに素直になれなかったのかしね。もう何も怖くない……」


「そっか、それはよかったよ」


 俺は手にした草を食べ始める。


「え? アンタ何食べてんのよ?」


「ん? これか? これは『ワスレロ草』。一定時間の記憶も忘れる効果を持つんだ。ここ30分の記憶がなくなる用に量を調整した──ね」


「な、なんでそんなことを?」


「人の秘密を無理矢理暴くんだ。最初からこうしようと思っていたよ」


「アタシの──ため?」


「丁度、最初の面接が始まる前の頃までの記憶がなくなるよう調整した。だから、もう一度俺の面接を受けてくれるか? 今のリッカちゃんならきっと大丈夫だと思う」


 今の俺はリッカに情が移り過ぎて、フラットな面接ができるとも思えないしな。


「……そう。忘れちゃうのね。今までのこと」


 リッカは寂しそうな顔をしている。


「俺のことを好きって言ってくれて嬉しかったよ」


「フン! アンタなんか! アンタなんかぁあああああ!」


 リッカは俺に抱きついてきた。


「!?」


「どうせ忘れちゃうん……でしょ? だったら、だったらこのくらいは……いいでしょ?」


 リッカは俺のほおにキスをした。


「!?」


「フン、サービスよ! アタシのキッスはめちゃくちゃ、め〜ちゃくちゃ高いんだから!」


「それは光栄だ。フフ、忘れるのが少しもったいないかな」


「だからその……だからそのぉ……」


 少し間をおいて彼女はこう答えた。


「オジ、ありがとう! 私、アンタの面接に絶対受かってみせるわ!」


「ハハ、本当に素直になれたねリッカちゃん。おっと、草の効果か。頭がクラクラしてきたな……」


 俺はソファに座り込みそのまま────





 軽い頭痛がする。


「イテテ、あれ? 俺何してたんだっけ?」


 目の前にはいきなりウチにきたリッカちゃんがいる。


「まったく、しっかりしてよね。これから面接でしょう?」


「おお、そうだった! ごめんね! 今から面接を始めさせてもらうよ」


「ふぅ、まぁよろしくお願いするわ」


「あれ? なんか雰囲気変わった?」


 ツンツンした態度が薄れたような……。


「フフッ、さぁどうかしらね? さぁ、面接を始めましょう」


「う、うん。じゃあ最初の質問は────」





《如月リッカ視点》


 そうしてアタシは面接に合格した。ふふっ、明日は3人で体験ダンジョンですって。楽しみだわ。


 素直になれなかったのは、アタシが臆病おくびょうだったから。


 本当のアタシを見せて嫌われるのが怖かったから。


 でも彼はそんな私を認めてくれた。ホントウの私を受け止めてくれた。


 胸がドキドキするわ。これは冒険の対する高鳴り? それとも恋の?


 オジ、ホントにありがとね。


 ああ、素直になるのってこんなに────。





「地獄の業火にかれなさい! 『インフェルノ』!」


 リッカの唱えた炎の上級魔法がモンスター達に炸裂さくれつする。


 モンスター達は燃え盛り、一瞬で消滅する。


 うららもその凄さにびっくりしている。


「どんなもんよ? オジィ!」


 リッカは腕を組みドヤ顔をしている。


《またすげー新人が入ったな!》

《如月リッカってあの大魔導士の?》

《リッカちゃんすげぇな!》

《さんをつけろよデコ助野郎!》


「おお……」


「リッカさん、すごいです!」


「そ、そうかしら? あ、ありがとう……。あーもう、そんなくっつかないでよ、うららぁ!」


「えへへ! 女の子がパーティーに入ってくれて嬉しいです! うらら、チャンネル登録していつも見てます!」


「ア、アタシもうららのチャンネル登録してるし……。この間の新曲“まな板の上の恋”すごくよかったし……」


「うわー! 聞いてくれたんですねー! 嬉しいですー!」


「あー、暑いから離れなさいよーもぉー! オジー、なんとかしなさーい!」


 うららは嬉しいのか、リッカに抱きついている。


《と、とうとい……》

《すいません、間に挟まってもいいですか?》

《↑お前だけは絶対に許さない》


 よかった。どうやら、うららもリッカと打ち解けたようだ。


 そして最下層に差し掛かったとき、モンスターが現れた。


「S級モンスター『バリアデーモン』だ! みんな気をつけろ!」


 黒く邪悪な、悪魔の様なモンスターだ。


「確かこっちの攻撃の種類に合わせて、バリアを貼ってくるのよね?」


「あぁ、剣には物理バリア。魔法には魔法バリアを貼ってきて、さらにはバリアで攻撃を跳ね返すやっかいな敵だ」


「ええ、それじゃあ無敵じゃないですか!? どうするんですか!?」


 うららが焦っている。


「問題なし──でしょ? オジ」


「──ああ」


 リッカは魔法を唱えはじめる。


「宇宙の彼方かなたより来たれ! 星屑ほしくずきらめきよ! 天穹てんきゅう咆哮ほうこうよ! 「メテオフレア』!」


《うぉー! 超上級魔法使いにしか使えない“隕石”魔法だぁ!》

《リッカちゃんすげぇww》

《こいつぁ珍しいもんを見れたねぇ……》

《もうひといきじゃ パワーをメテオに!》



「────クリエイト“ソード”」


 俺はリッカの魔法にクリエイトを発動させる。隕石の威力をともなった剣だ。


「な、なるほど! 物理もダメ、魔法もダメなら“その両方なら”行けます!」


 俺はバリアーデーモンに突撃する。


『グオオ!』


 敵も魔法を放ってきたが、俺の剣がそれを弾き返す。


『グオオ!』


 バリアデーモンは物理のバリアを貼ってきた。──だが無駄だ。この剣は魔法の性質を合わせ持つ!


「────『メテオフレアバースト!』」


 俺はバリアごとデーモンを切り裂く。すると剣撃と共に隕石が放たれる。


 ドドドドドドという音と共に爆発が起きる。想像を絶する凄まじい威力だ。


『オオオ……』


「やりました! イェイ!」


「やったわね! オジィ!」


「リッカのおかげだ。やったな」


《バリアデーモン、ボコボコで草》

《これもうオーバーキルだろ……》

《南無……》

《このパーティー強すぎィ!》




 





 




















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