おじさん、金髪ツンデレ美少女と特訓する
それから俺たちは鬼のような特訓をした。質問攻めである。
「リッカちゃんの好きな本は?」
「やっぱ、夏目漱石の『こころ』よね〜」
《『異世界に転生した俺、最強能力で無双します!〜ps.やれやれ女の子にモテモテで困ってるんだが?〜』が大好き!》
「好きな漫画は?」
「はぁ? 私が漫画なんて見る訳ないでしょ?」
《わ⚪︎ぴいす大好き!》
もっとジブンに、正直に生きろよ……。
「好きな食べ物は?」
「アクアパッツァかゼノベーゼね」
《ど◯兵衛》
俺も大好きだよ、ど◯兵衛……。
「人生で一番嬉しかったことは?」
「まぁ、私の魔法が世界中に
《えへへ! チョ◯ボールの金のエンジェルが当たったこと!》
俺、銀しか当たったことないよ……。
♢
「はぁ、はぁ、はぁ、す、全てを吐き出したわ……」
彼女は仰向けになって、肩で息をしている。
「どうだ? 少しは素直になれそうか?」
「えぇ、心がスッキリして軽くなったわ。今となっては、なんであんなに素直になれなかったのかしね。もう何も怖くない……」
「そっか、それはよかったよ」
俺は手にした草を食べ始める。
「え? アンタ何食べてんのよ?」
「ん? これか? これは『ワスレロ草』。一定時間の記憶も忘れる効果を持つんだ。ここ30分の記憶がなくなる用に量を調整した──ね」
「な、なんでそんなことを?」
「人の秘密を無理矢理暴くんだ。最初からこうしようと思っていたよ」
「アタシの──ため?」
「丁度、最初の面接が始まる前の頃までの記憶がなくなるよう調整した。だから、もう一度俺の面接を受けてくれるか? 今のリッカちゃんならきっと大丈夫だと思う」
今の俺はリッカに情が移り過ぎて、フラットな面接ができるとも思えないしな。
「……そう。忘れちゃうのね。今までのこと」
リッカは寂しそうな顔をしている。
「俺のことを好きって言ってくれて嬉しかったよ」
「フン! アンタなんか! アンタなんかぁあああああ!」
リッカは俺に抱きついてきた。
「!?」
「どうせ忘れちゃうん……でしょ? だったら、だったらこのくらいは……いいでしょ?」
リッカは俺のほおにキスをした。
「!?」
「フン、サービスよ! アタシのキッスはめちゃくちゃ、め〜ちゃくちゃ高いんだから!」
「それは光栄だ。フフ、忘れるのが少しもったいないかな」
「だからその……だからそのぉ……」
少し間をおいて彼女はこう答えた。
「オジ、ありがとう! 私、アンタの面接に絶対受かってみせるわ!」
「ハハ、本当に素直になれたねリッカちゃん。おっと、草の効果か。頭がクラクラしてきたな……」
俺はソファに座り込みそのまま────
♢
軽い頭痛がする。
「イテテ、あれ? 俺何してたんだっけ?」
目の前にはいきなりウチにきたリッカちゃんがいる。
「まったく、しっかりしてよね。これから面接でしょう?」
「おお、そうだった! ごめんね! 今から面接を始めさせてもらうよ」
「ふぅ、まぁよろしくお願いするわ」
「あれ? なんか雰囲気変わった?」
ツンツンした態度が薄れたような……。
「フフッ、さぁどうかしらね? さぁ、面接を始めましょう」
「う、うん。じゃあ最初の質問は────」
♢
《如月リッカ視点》
そうしてアタシは面接に合格した。ふふっ、明日は3人で体験ダンジョンですって。楽しみだわ。
素直になれなかったのは、アタシが
本当のアタシを見せて嫌われるのが怖かったから。
でも彼はそんな私を認めてくれた。ホントウの私を受け止めてくれた。
胸がドキドキするわ。これは冒険の対する高鳴り? それとも恋の?
オジ、ホントにありがとね。
ああ、素直になるのってこんなに────。
♢
「地獄の業火に
リッカの唱えた炎の上級魔法がモンスター達に
モンスター達は燃え盛り、一瞬で消滅する。
うららもその凄さにびっくりしている。
「どんなもんよ? オジィ!」
リッカは腕を組みドヤ顔をしている。
《またすげー新人が入ったな!》
《如月リッカってあの大魔導士の?》
《リッカちゃんすげぇな!》
《さんをつけろよデコ助野郎!》
「おお……」
「リッカさん、すごいです!」
「そ、そうかしら? あ、ありがとう……。あーもう、そんなくっつかないでよ、うららぁ!」
「えへへ! 女の子がパーティーに入ってくれて嬉しいです! うらら、チャンネル登録していつも見てます!」
「ア、アタシもうららのチャンネル登録してるし……。この間の新曲“まな板の上の恋”すごくよかったし……」
「うわー! 聞いてくれたんですねー! 嬉しいですー!」
「あー、暑いから離れなさいよーもぉー! オジー、なんとかしなさーい!」
うららは嬉しいのか、リッカに抱きついている。
《と、
《すいません、間に挟まってもいいですか?》
《↑お前だけは絶対に許さない》
よかった。どうやら、うららもリッカと打ち解けたようだ。
そして最下層に差し掛かったとき、モンスターが現れた。
「S級モンスター『バリアデーモン』だ! みんな気をつけろ!」
黒く邪悪な、悪魔の様なモンスターだ。
「確かこっちの攻撃の種類に合わせて、バリアを貼ってくるのよね?」
「あぁ、剣には物理バリア。魔法には魔法バリアを貼ってきて、さらにはバリアで攻撃を跳ね返すやっかいな敵だ」
「ええ、それじゃあ無敵じゃないですか!? どうするんですか!?」
うららが焦っている。
「問題なし──でしょ? オジ」
「──ああ」
リッカは魔法を唱えはじめる。
「宇宙の
《うぉー! 超上級魔法使いにしか使えない“隕石”魔法だぁ!》
《リッカちゃんすげぇww》
《こいつぁ珍しいもんを見れたねぇ……》
《もうひといきじゃ パワーをメテオに!》
「────クリエイト“ソード”」
俺はリッカの魔法にクリエイトを発動させる。隕石の威力を
「な、なるほど! 物理もダメ、魔法もダメなら“その両方なら”行けます!」
俺はバリアーデーモンに突撃する。
『グオオ!』
敵も魔法を放ってきたが、俺の剣がそれを弾き返す。
『グオオ!』
バリアデーモンは物理のバリアを貼ってきた。──だが無駄だ。この剣は魔法の性質を合わせ持つ!
「────『メテオフレアバースト!』」
俺はバリアごとデーモンを切り裂く。すると剣撃と共に隕石が放たれる。
ドドドドドドという音と共に爆発が起きる。想像を絶する凄まじい威力だ。
『オオオ……』
「やりました! イェイ!」
「やったわね! オジィ!」
「リッカのおかげだ。やったな」
《バリアデーモン、ボコボコで草》
《これもうオーバーキルだろ……》
《南無……》
《このパーティー強すぎィ!》
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