おじさん、金髪ツンデレ美少女に出会う
『
俺は金髪の可愛らしい女の子の配信を見ている。
様々な人気配信者の動画を見て、学びを得ることは配信者としては大切なことだ。
「
俺はうんうんと感心する。
────『如月リッカ』チャンネル登録者 《670万人》
『さて、今日は視聴者からの質問にガンガン答えていくわ! 覚悟しなさい!』
《砂の魔法がうまく使えないのですが、どうしたらいいですか?》
『いい質問がきたわね〜。魔法には詠唱が大事よね? まぁ、上級者になれば詠唱カットも出来るようになるけど、それは置いといて……」
彼女はホワイトボードにマジックで何かを書き始めた。
「例えば砂系の基本魔法“サンド”の詠唱。メジャーなのは『砂漠の神秘よ舞い踊れ!』だったりするんだけど」
《うんうん》
《ふむふむ》
「そもそも砂系の魔法の詠唱って日本語と相性が悪いのよね」
《そうだったの!?》
《なん……だと……》
「日本にはあまり
《じゃあどうすればいいんだ……》
「簡単よ。砂と親和性の高いエジプトの言語で詠唱すればいいのよ。『الرقص ، ألغاز الصحراء』こんな感じにね」
《おお!》
《なるほどな、その発想はなかった》
《リッカちゃん! ありがとー!》
『フ、フン、アンタ達のためにやってるんじゃないから! アタシの復習のためにやってんだから!」
《本日のツンデレ、いただきました!》
《俺、剣士だけど、このために配信見てる》
《リッカちゃんかわいい!》
配信は大盛り上がりだ。
「なるほど、これは人気が出るハズだな」
俺はうなずきながら感心する。
♢
次の日のことだ。
ピンポーンというチャイムが鳴り、おれは玄関へと向かう。
「はーい?」
黒いとんがり帽子と黒いローブを身にまとった金髪の美少女がそこにいた。
「誰……ですか? ──ってあっ!」
昨日、配信で見たばかりの顔がそこにはあった。
「如月リッカよ! 敬語は要らないわ、肩がこるし、アタシも使わないもの。アンタの事はオジって呼ぶわ。とにかく今日はアンタにいい話を持ってきたわ!」
「い、いい話?」
「オジ、アタシをパーティーに入れなさい!」
「ええええええええええええ!?」
なんだかとんでもない事になってしまいました。まる。
♢
「とりあえずお茶でもどうぞ」
俺は彼女に冷たいお茶を出す。
「あら? 気がきくじゃない、オジ」
立ち話もなんだから、とりあえず俺のリビングに上がってもらった。
「丁度、喉が
彼女は冷たい水を一気に飲み始めた。
「ごくっ! ごくっ! プハー! しみるわねー!」
おっさんかよ……。いや、俺もおっさんなんだけどさ。
「その前に聞きたいんだけど、どうして俺の家が分かったんだ?」
「…………」
「…………」
沈黙が場を支配するする。
「……まぁ、その、魔法でちょこちょこっとね……アハハ!」
「なんか明らかに犯罪臭がするんですけど……」
「ま、まぁそれは置いといて、天下無敵の大魔導士様の私がパーティーに入りたいって言うんだから、断る理由はないわよね?」
「いやー、俺の仲間との話し合いで俺がリーダーになってるんだけどさ。パーティー加入希望者がいたら、おじさんが判断して下さいって言われてるのね」
「? だったら何も問題ないじゃない?」
「だからちょっとした面接をさせてもらうよ」
「め、め、め、面接うううう!? この大魔導士リッカ様に向かって面接うううう!?」
リッカは目を丸くしている驚いている。
「パーティーメンバーは一心同体。死と隣り合わせの危険な仕事だからね。チームワークも大事だし、俺たちのパーティーに合っているか、慎重に判断しないといけない」
そう俺はリーダーなのだ。俺の適当な判断で仲間を危険にさせることは絶対にできない。
「フン、いいでしょう、オジ。この大天才にかかれば面接ごとき訳ないわ! さぁ、始めなさい!」
彼女は腕を組み、フンスと鼻を鳴らした。
♢
「えー、ではまず自己紹介をお願いするよ」
俺は紙とペンを用意して、質問を始めた。
「
プライドは高そう──っと。メモメモ。
「自分の長所はなんだと思う?」
「は? 見て分からない? その目はフシアナかしら?」
長所はなし──っと。
「短所は?」
「ないわ、無敵よ」
……。
「ウ、ウチのパーティーを志望した理由は?」
「そ、そ、そ、そんなのどうだっていいじゃない!」
彼女はなぜか顔を真っ赤にしている。
「…………」
ど、どうしようこれ。絶望的に協調性ゼロだよ。こ、これはさすがにダメだ……。
「…………」
「…………」
仕方ない……。心苦しいけど、ここは断るしかないよな……。
「……やっぱりダメなんでしょ? オジ」
さっきまでの態度が嘘のように彼女はポツリと言う。
「……そうだね」
「アタシ、昔から素直になれない性格でさ……。こんな性格だから他のパーティーでもうまくいかなくて……」
「…………」
「魔法使いだから1人でダンジョン配信する訳にはいかないしね……」
確かに前衛がいなければ、いくら強い魔法が使えても厳しいだろう。
「なんで、アタシこんなに素直になれないんだろう……。アタシ……アタシ……こんな自分のがとっても嫌……。でも、素直になれなくて、素直になるのが怖くて……グスッ」
彼女はうつむき、今にも泣き出しそうだ。
「素直になりたい……か。ん? そうだ、もしかしたら力になれるかもしれない!」
俺はこの前にダンジョンの最下層で拾った珍しいアイテムを思い出す。
「──え? オジ、ほんとう……?」
「ちょっと待っててくれ」
俺はそのアイテムを取り出しに行った。
♢
「──これは?」
「シンジツ草。これを食べるとしばらくの間、しゃべったことがウソだったら、シンジツの言葉が出てくるんだ」
「そ、そんなレアアイテムをアタシに?」
「これは本音を言える練習になると思うんだけど、どうする? 俺は
「ア、アタシやってみるわ! す、素直になれる練習になるなら! えい!」
リッカは俺から渡されたシンジツハイツモヒトツ草を一気に食べる。
「にっ、にっがいわね……これ」
「どう?」
「んー? まだ分かんないわね……」
「じゃあ、この状態でもう一度面接してみるのはどうかな?」
「フッ、やってやろうじゃない! オジ!」
♢
「さっきは聞けなかったけど、俺のパーティーを志望した理由は?」
「だだだから、なんだっていいじゃない!」
やはりまた彼女の顔が真っ赤になる。
《この前の炎上系配信者との対決を見て、ひとめぼれしたなんて言える訳ないじゃない! バカオジィ!》
「え!?」
「ななななななな……」
リッカの心の声が聞こえてきた。効果はほんとだったみたいだ。
「お、俺のどこがタイプだったの?」
俺は踏み込んだ質問をぶつけてみる。
「バババババッカじゃない! アンタなんてなんとも思ってないわよ! バカァ!」
《全部大好き! シブい顔とかぁ、優しそうなところとかぁ、ちょっと抜けてるところあるけど包容力がありそうだしィ。アタシ、年上がどストライクなのォ……」
「ぎゃあああああああああああ!」
リッカが絶叫した。
「いやー、おじさん照れるなぁ!」
「ふ、ふざけないでよ!」
《しゅきぃ……だいしゅきぃ……》
「きゃああああああああああああああ!」
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