おじさん、アイドルと初コラボする

「みなさ〜ん! おっはうっらっら〜!」


 うららがスマホに向かってウィンクとポーズを決めている。


《おっはうっらっら〜!》

《待ってた!》

《今日もネコミミフードかわいい!》


「なんと〜今日は〜この前、落とし穴に落ちちゃって、最下層まで行ってしまった私のピンチを助けてだしてくれた“おじさん”とのコラボで〜す!」


「ど、どうも……おじさんです」


 この前の救出劇はネットでバズりにバズり、“おじさん”というキーワードがSNSでトレンド1位になったほどだ。


「おじさんのチャンネル登録者数、爆増らしいですね〜! 感想はいかがですか〜?」


「いや〜まだ信じられないよ。今現在の登録者は18万人──え? 今、見たらもう30万人突破!? まだまだどんどん増えてる……。わぁ、コメントの流れもすごい……」


《話題のおじさんを観にきました》

《おじさんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!》

《レッドドラゴン瞬殺したっていうから来てみたけど、普通のおじさんだな。顔は割と整ってるけど……》

《私、結構タイプかも……》

《ま、お手並み拝見といきますかね》

《本当に強いのか?》


 レッドドラゴン瞬殺が衝撃的過ぎて、まだまだ懐疑的かいぎてきなコメントが目立つようだ。


「では今日は2人でダンジョンに潜って行こうと思いま〜す! みんな応援してね〜!」


「が、かんばりまーす」


 いかん、緊張してきた。こんなに大勢の人の前では仕方ないけども。


「おっと、いきなり出てきましたよ! “ダークピクシー”4匹! 妖精型のC級モンスターです!」


《あちゃあ、地味に嫌なやつ》

《素早いから攻撃当たらないんだよな》

《うっ……トラウマが……》


『フフフフフフフフフ、アハハハハハハハハハハ!』


 ダークピクシー達が笑いながら、素早い動きで襲ってくる。


「────クリエイト“ソード”」


 俺は岩壁に対してクリエイトを発動させ、岩の剣を造る。


「フッ」


 俺が岩の剣を振り下ろすと、そこから無数の岩が出現し、相手にすさまじい勢いで襲いかかる。


「────『なしつぶて


『ギエピーーーーーーーー!』


 ダークピクシー達は消滅し、ドロップアイテムが落ちてきた。


「怪我はない? うららちゃん」


「は、はい……。さ、さすがですね、おじさん! 早すぎて何も出来ませんでした!」


《え……? もう倒したの》

《おじさん、やるやん》

《ほぅ、クリエイト系のユニークスキルですか……》

《全然、見えなかった……瞬殺。でもこれなら“アレ”の心配も要らないか……?》

《おそろしく速い攻撃 オレでなきゃ──》


 コメントがざわついている。少しはいいところ見せられたかな?


 ──と俺がコメントに気を取られていると


「ふぎゃあ!」


 足元の段差につまずいて転んでしまった。


「な、なさけねぇ……。歳か? 歳のせいなのか? せっかくの見せ場が締まらないな……」


《おじさんw》

《おじさん無理すんな》

《おじさんってもしかしてドジっ子? やばい興奮してきた!》

《おちつけ》


「おじさん、大丈夫ですか!?」


「あー、大丈夫。でもちょっとひざを擦っちゃって血が出てるよ……。薬草やくそうつけるかな……」


「うららに任せてください! 『ヒール』!」


 彼女のいやしの魔法により、俺の傷はたちどころにふさがる。


「ありがとう、うららちゃん。そういえばうららちゃんの得意な魔法は回復系だったね」


「はい、そうなんです! うららのユニークスキル“慈愛じあい”の効果で回復系の魔法の性能が上がって、消費魔力も少なくなるので、相性がいいんですよね。ケガをしたらすぐに言って下さいね、おじさん!」


 彼女はパァとした笑顔でそう言った。か、かわいい。天使かな?


《俺もうららちゃんに癒されてぇ……》

《おっさん、ちょっと席変われ》

《ウチの娘はほんとに優秀なんですよ。“アレ”がなければね……》


 ん? さっきからちょこちょこコメントにある“アレ”って何なんだ?





 

 









 


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