おじさん、アイドルに癒《いや》される



 俺たちはサクサクとダンジョンを踏破とうはし、最下層へとたどりつく。


《すげぇ、これが最下層……》

《上級者パーティーでもめったにたどり着けないのに……》

《おっさん、すげぇよ……》


 最下層に入った瞬間、目の前に巨大な光り輝く亀のようなモンスターが出現する。


「ダイヤモンドタートル……。無敵の甲羅を持つと言われるS級モンスターです……」


 うららはダイヤモンドタートルに圧倒されている。


「こいつはラッキー! ダイヤモンドタートルのドロップ品は高く売れる!」


「でもダイヤモンドタートルは、こちらが攻撃した際、無敵の甲羅こうらに身を隠します! 絶対勝てませんよ、逃げましょう!」


《逃げろ! おじさん!》

《うららちゃん、逃げて!》

《オイオイオイ……》

《カメェェェッー!》


「確かにヤツの甲羅は無敵だ。どんな攻撃も通さない。けど────」


 ダイヤモンドタートルは甲羅にこもり回転を始め、ものすごい勢いでこちらに向かってきた。カスッただけでミンチだろう。


「甲羅もしょせんは“モノ”だ。なら──」


「あっ……!」


「クリエイト“アロー”!」


 俺はダイヤモンドタートルの甲羅にむかってクリエイトを発動させる。


 するとダイヤモンドタートルは丸裸になり、俺の手にはダイヤモンド製の弓と矢が装備される。


「丸裸のダイヤモンドタートルなんてただの亀! くらえ──」


 俺はダイヤモンドタートルに向けて弓矢を引き絞る。


「────っダメ! 『ウルトラヒール』」


「!」


 見ればダイヤモンドタートルの甲羅が完全に復活しているではないか。


《あーやっぱりか……》

《まだ克服できてなかったか》

《おじさん、すまん》


「す、すいません、すいません! とにかく今は逃げさせて……」


「いや、まだだ!」


 ダイヤモンドタートルも今の状況にとまどっているのか、首を甲羅にまだ閉まっていない。


 その隙をついて、俺はダイヤモンドタートルの首に弓矢を命中させる。


「────『アルテミスのきらめき』」


 ダイヤモンドタートルが霧散むさんし、アイテムがドロップする。



《あの状況から倒す……だと……》

《おじさん、アンタ“本物”ですわ》

《ナイスフォロー! おじさん!》

《チャンネル登録しといたよ!おじさん!》

《おじさん見てるとドキドキする……》



「《ダイヤモンドタートルのカケラ》ゲット。それよりうららちゃん……どうして敵に回復を?」


 彼女は青ざめて震えている。


 何か深い事情がありそうだ。


「うららちゃん、いったん、上の方に戻って休憩しよっか?」


「は……はい。ありがとう……ございます」





モンスターの気配がないところで俺たちは休憩をする。


「さっきはどうしてあんなことを? いや、言いたくなければそれでもいいんだ。──っとその前に配信は切っておくよ」


 うららはふるふると首を振る。


「いえ、いいんです。ファンの方にも聞いてもらいたいですから……」


「分かった。でも苦しくなったらいつでも言ってくれよ?」


「ありがとうございます……」


《おじさん、うららちゃんに悪気はないんだよ》

《そうなんだよ……》

《彼女にも深い事情が……》

《姫乃うららに悲しき過去……》


「みんなありがとう……。ここからは私に話させて」


 そして彼女はポツポツと語り出した。














 


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