おじさん、アイドルを助ける
「──ん、人が襲われている? あそこか!」
俺は声のした方に駆けつける。ここは最下層。特に危険なところだ。
「あ、あわわわわわ、た、たすけて……。だ、だれかぁ……」
見れば女性の目の前にモンスターがいる。
しかもS級モンスター《レッドドラゴン》。強烈な炎を吐くやっかいな敵だ。
そいつは今まさに、彼女に食らいつこうとしていた。
「危ない! クリエイト“シールド”!」
俺は彼女の横の岩壁に向かって、クリエイトの能力を発動させる。
すると岩が彼女とレッドドラゴンの前に巨大な岩の盾となって立ちふさがる。
「────『ゴーレムの盾』」
『グルルルルル』
邪魔をされてたゴーレムが俺の声に反応して、こちらに振り向く。
そして、レッドドラゴンは大きく息を吸い出した。
「レッドドラゴンの炎のブレスです! 上級冒険者でもイチコロです! 逃げてぇぇ!」
さきほどの女性が叫ぶ。
「問題ないですよ──っと」
その瞬間──レッドドラゴンから、全てを灰に帰す絶望の炎が吐き出された。
「ああああ! もうダメぇぇ!」
「────クリエイト“ソード”!」
俺はその炎に対して、クリエイト能力を発動させる。
「…………え?」
彼女はポカンとしている。
俺はレッドドラゴンのドラゴンブレスを“炎の剣”へと変化させた。
「────自分の炎を食らったことはあるか?」
俺は飛び上がると、そのままレッドドラゴンの頭上から一閃した。
「────『
『グルルルルルオオオオオ……」
頭上から胴体にかけて、ぶった斬る。すると傷口から激しく発火し、そのままレッドドラゴンの体を燃やし尽くした。
レッドドラゴンが消え、ドロップアイテムだけが取り残される。
「おっ、《赤龍のげきりん》! こりゃあ高く売れるぞ!」
「う、嘘……。ううん、やっぱりそうだ! うん、それなら納得!」
彼女は腰が抜けたまま立てそうにないので、俺は手を貸した。そしてよく顔を見ると──
「大丈夫ですか──って、君もしかしてアイドル系配信者の“
だれもが知っている、今話題のアイドル系配信者だった。
白いネコミミフードに、桃色の髪が特徴的な可愛らしい女の子だ。
────『姫乃うらら』 チャンネル
「そうです、“姫乃うらら”です! さっきは薄暗くてよく顔が分からなったけど、“おじさん”ですよね!?」
「え!?」
俺がその呼び名にびっくりした瞬間──
「“チョコプリン”ですよ!」
「ええええ!? 俺のチャンネルに唯一登録してくれてる!? てかあれ、うららちゃんだったんだ!?」
「はい! うらら、おじさんの大ファンなんです! だから、だから──」
彼女は息を吸い込み
「うららと、コ、コラボして下さい!」
なんて事を言ってきた。
そして俺は気づいてなかった。彼女が“今”も配信中だということを。
そして今、何万人もの彼女の視聴者が“おじさん”の活躍を目撃していたことを。
《うおおおおおお!うららちゃん、助かってよかったー!》
《ありがとう、おじさん!》
《へー、うららちゃんおじさん系がタイプ? ちょっとおじさんになってくる》
《もうなってる定期》
《てゆーか、あのレッドドラゴンを一撃?》
《レッドドラゴンって上級者パーティーでも苦戦するって聞いたけど?》
《おじさんすげぇw》
《見た事ないけど誰だろう……》
《うららちゃん、落とし穴にはまって最下層まで落ちたから、どうなることかと……》
《おっさんならコラボしてもいいや。おもしれぇw》
《レッドラ一撃とか気持ち良すぎだろ!》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます