【完】底辺おじさん、大人気アイドルを救って“大バズり”してしまう〜おじさんとコラボしたいってマジで言ってるんですか?〜 

腹ペコ侍

おじさん、アイドルの悲鳴を聞く

 俺の名前は小路三蔵おじさんぞう。略しておじさん。30代後半だ。


「さぁて、“おじさんチャンネル”今日も開幕!」


 元気よくスマホで動画配信をスタートさせ、ダンジョンへと潜り始める。


「今日は、ダンジョンの最下層までの配信をお届けするよー!」


 ちなみにチャンネル登録者は1人のド底辺配信者である。


《……》

《……》

《……》


 当然だれからもコメントはつかない。


「ふぅ、俺、結構長いこと配信やってんだけどなぁ……。やっぱおじさんなんかに需要はないのかね……」


 ふぅーと長めのため息をひとつ。


 俺が配信を始めた理由はモテたいから。以上。シンプルイズベスト!


 俺は今まで彼女が出来たことは一度もないし、友達もいない。悲しいね……。


「お金だけがあってもむなしいだけだと最近、やっと気づきました……」


 だから配信者になれば人気者になってモテると思ったのに……はぁ……。


「最近流行ってるアイドル系配信者の“姫乃ひめのうらら”ちゃんとかすごいよなぁ。登録者数多いし、可愛いし、ネコミミだし。俺とは天と地だよな」


《頑張ってください! 今から私も仕事です。行ってきます!》


 スマホからコメントが音声出力される。


「おっ、いつもの“チョコプリン”ちゃんかな? 君だけだよ、俺にいつもコメントしてくれるの。いつもありがとねー」


 俺のチャンネルの唯一の登録者だ。この子は本当に俺の支えになっている。


「この子のコメントがなかったら、俺は配信者をとっくに辞めていたかもしれないな」


 俺はコメントに元気をもらい歩き出す。





「“あれ”からもう20年かぁ。早いもんだな」


 現代社会にダンジョンが現れてからはや10年。世界の在り方は一変してしまった。


「まさかこの世界が“剣と魔法のファンタジー”になるなんて思いもしなかったよ。長生きはしてみるもんだな」


 ダンジョンからあふれる魔力によって、人体に変化が起き、力が極端に強くなったり、魔法が使えるものまで出現した。


「おっと──」


 下層までおりた途端に殺気が増した。


「ひぃ、ふぅ、みぃ、A級モンスターのギガントゴブリンが3匹。やっぱり下層は違うな!」


 ダンジョンは上層、中層、下層、最下層の4つに区分される。下に行くほど、モンスターも強くなる傾向にあるようだ。


「さぁて、一丁、やりますか! 《クリエイト“ソード”》!」


 俺の能力は『スーパークリエイト』。様々な“モノ”から武器や防具などを“造る”ことができる。


「この能力は“ユニークスキル”。俺だけの能力だ!」


 そして俺は“空気”にふれる。そして空気から剣を“造る”。つまりこの剣は“空気の特性”を得た剣ということになる。


「へへっ、空気の剣だ。見えないだろ?」


 ギガントゴブリン3匹が俺に向かって、突進してくる。


『ギャギャギャギャギャギャ!』


 俺は刀を構え、放つ。


「────『鎌鼬かまいたち』」


 俺の剣から放たれた風が、ギガントゴブリン達を横なぎに一閃いっせん


『ギエエエエエエエエエエエエエ!』


 ギガントゴブリンは3匹とも真っ二つになり、その後、霧となって消え失せた。


 俺は造った剣を解除する。剣を維持させておくだけでも魔力の消費があるからね。


「さぁて、ドロップ品はっ──と。『ゴブリンこんぼう』『ゴブリンの布切れ』『ゴブリンこんぼう極』か。おっ、『ゴブリンこんぼう極』は悪くない。今夜は美味い酒が飲めそうだ」


 もちろん、一人酒だけどな! はは……。


「きゃああああああああああ!」


「!?」


 その時、最下層の方から女性の悲鳴が聞こえた。



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