第二話『それでは出席番号1番の人から自己紹介をお願いします』

 ピンポーン!ガンガンガン!ピンポーン!ガンガンガン!

「魔王様…」

 困ったような顔でレイが「始末してきてもよろしいでしょうか?」

 …困っているよりかは怒っていたのかもしれない。

「…いいぞ」

「ありがとうございます」

『シュッ』という音をたててレイが消えた。実力で魔王の秘書になった彼女だからこそ成せる技である。因みに魔王は出来ない。


『あ!レイさんおはようござざざざざ!?痛い!ちょいただだだ!』

『安心して下さい。死なせませんから。魔王城ウチには凄腕の回復術師がいるので。』

『つまり凄腕の人じゃないと治せないくらいの傷を付けるってことだよね!?』

 ゴキッバキッ…ドゴォォン……

『うぎゃぁぁ〜〜』


「…相変わらずうるさいなあの馬鹿勇者は」

 勇者はたまにインターホンを連打したりドアを叩くがレイは一発顔面に拳を叩き込むくらいなのだが、今日は骨を折るような音だったり地面を抉るような音が聞こえてくる。


「…結構冷静に見えたがそれくらい衝撃だったんだろうな…俺の姿が変わっちまったのは」

 レイの精神状態を冷静に分析しているように見えるがガクブルである。あんなに情けない声を出している勇者でも本来は魔王と同じ実力を持つのだ。健闘するくらいは出来ても勇者を一方的にボコボコにする力はレイには無いのだが…やはりそれくらい取り乱しているという事なのだろう。


(怖っ!少しくらいレイの不安を取り除いてあげようと思ってギャグを言おうとしてたけど…もし言ったらアイツと同じ目に…)



 ☆★☆★☆★


 One hour later1時間後

 …身体はいつも通りだが服が血だらけの勇者が入ってきた。

「だ、大丈夫か…?」

 傷を全て治してもらったのだろうが血だらけの服を見て思わず声を出した。

「心配ありがとう…身体は治してもらったんだけど服がね…」

「まぁ、服くらいならこっちで用意してやるから…」

「いやぁ、悪いね。…いや、普通に話してたけど誰!?魔王くんの隠し子!?」

「誰かも分からずに話してたのか?」

「いや、雰囲気的に魔王くんかなとは思ってたよ?でも雰囲気だけだったんだ本当に」

「まぁ、俺が魔王であっているだが…話すと長くなるからとりあえず着替えて場所を変えよう」


 ☆★☆★☆★


「さて、君が貸してくれた服のセンスで魔王っぽいなとは思ったけど確信がない。1つ質問してもいいかい?」

「最初の言葉が理解出来ないが質問は構わない。」

「ありがとう。君の好きなおつまみは?」

「柿の○」

「うん。確信が持てた。君は魔王で間違いないね」

 …なんでみんな酒のおつまみで俺かどうか判断できるんだ?

 アレが好きな奴なんていくらでもいるだろうに…


「じゃあなんで君がそんな姿女の子になったのか聞いてもいいかい?」

「それはかくかくしかじかでな…」

「成程ね。知ってる?かくかくしかじかって物語の中でしか伝わらないんだよ?」

 そうだったのか…俺はてっきりこれで伝わる所謂呪文のようなものなのかと思ってたぜ…

「まぁ、よく分かったけど、薬の作戦が失敗したって事はボクと一緒に世界平和を目指すってことでいいんだよね?」

 あれ?伝わってたのか?やはり呪文の一種か…


「あぁ、そういう事になるな。…話のスケールがデカくなった気がしたが。」

 世界平和って…まぁ、魔族と人族が仲良く手を繋ぐってのはそれくらい難しいかもしれないけど…


「世界平和を目指す第一歩としてはまず僕らが仲良くなる必要があるだろう?ボク的には親友と言っても過言では無いと思うけどさ、僕達には足りないものがあると思うんだよね」

「足りないもの?」

「うん。それは…名前呼びだよ!僕ら結構会ってるのにお互い名前を知らないだろう?昨日気がついたんだ。だから今日は自己紹介をしよう。」

「事故紹介?それなら昔馬車に乗っていた時なんだが…」

「…違う違う!それは事故を紹介する方の自己紹介だろう?僕が言ったのは自分を紹介する方さ。どっちからする?」

「お前からやってくれ」

 自己紹介なんてした事ないからな…コイツのヤツを参考にしよう。


「僕からかい?どうせなら出席番号が…いやそんなものはないか。いいよ始めようか。僕の名前は『神楽坂 悠真カグラザカ ユウマ』ユーマって呼んでくれ。職業は勇者、出身は日本さ。いわゆる異世界ってやつだね。」


 名前以外なら知ってたな。

「彼女がいる」

 俺の体は風のように軽く水が流れるように勇者の懐へ潜り込みアッパーを喰らわせる。コイツを許してはいけない。

「ちょちょちょ!何なのさいきなり!?」

「彼女がいる事が許せん。安心しろウチには凄腕の回復術師がいる。」

「それさっきも聞いたね!?知ってるよ!エマさんだろ!?」

「回復してもらえるとは言ってないけどな」

「無慈悲ッ!冗談だろ!?」

「あぁ、冗談だ。彼女がいるくらいで怒ったりするほど俺の心は狭く無い」

 もちろん冗談だ。羨ましくなんかない。羨ましくないとも。

「アッパーくらわせてきたくせに…」

 まるで本気で怒ってたかのような言い方だな。無視だ無視。


「じゃあ次は俺だな。俺の名前は『マオ・ダークネス』ダークネスは俺の一族の名前だからマオと呼んでくれ。職業は魔王で出身は魔王領。」

 正直この名前は『魔王→マオウ→マオ』っていう安直な考えが見えてあまり好きじゃないんだけどな。

「君に合ったいい名前じゃないか!これからよろしく!」

 そう言って握手を求めてくる。

 …この名前も案外悪く無いかもな。

「あぁ、よろしく」

 そう言って握手に応じる。


 ここがスタートだ。今走り出した。

 いや、歩き出したのかもしれない。

 今日一日でやった事が自己紹介だけなんだからな。


 …でも、これはかなり大きな一歩だ。

 ゴールテープはどれくらい先にあるのだろうか。

 早くその先の景色を見てみたいものだ。

 一体どんな景色が広がっているのだろうか。


 ☆★☆★☆★


「…そういえば俺の服のセンスがなんだって?俺はセンスの塊だろうが」

「逆に聞くけど真っ白のTシャツに大きく『魔王』って書いた服を持っている君のどこがセンスの塊なんだい?」

「たまたまその服が合っただけだ」

「いや、クローゼットの中この服が何十着もあったよね?この服しかなかったよね?レイちゃんから『魔王様はセンスがない』って言われるまではてっきりいつも『あの魔王って感じの服』を着ていると思ってたよ」


 …なんて事言ってくれてるんだレイ、俺が見てないところではボロクソ言ってるのか?

「まぁ、あれ動きにくいからな。レイからのプレゼントだから着ているんだ」

「レイちゃんセンスいいな…」




 To be continued…


 ーーーーーアトガキーーーーーー


 必要ないと思いますけど一応名前まとめときましょうかね〜


 勇者→ 『神楽坂 悠真カグラザカ ユウマ』(ユーマ)

 魔王→ 『マオ・ダークネス』

 魔王の秘書→『レイ』

 凄腕の回復術師→『エマ』


 こんな感じですね。エマちゃんに関しては今後出てくるのか不明ですが…

 レイちゃんに関しては今後もっと細かい情報を出せたらなと考えております。

 とりあえず2話はこれで終わり!


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