廃城の戦い
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──廃城の戦い
アレステアたちはロストアイランド領を廃城に向けて進んでいる。
「前方にデュラハン複数!」
アレステアたちの進路に魔道式重機関銃を構えたデュラハンが大量に現れた。それらはアレステアたち葬送旅団を乗せたカラカル装甲兵員輸送車に向けて射撃を開始。
「スモークを展開し、突破せよ!」
カラカル装甲兵員輸送車がスモークディスチャージャーは発煙弾を放ってスモークの中を駆け抜けていく。
「撃て、撃て!」
スモーク越しに魔道式重機関銃が乱射され、デュラハンを薙ぎ倒しながら一気に前進。さらにはデュラハンを轢き殺して押し進む。
「廃城から……」
「あの光は一体……?」
アレステアたちが廃城に迫るのに廃城から天に向けて光が伸びていた。
「“煉獄崩壊”を引き起こそうとしているのだろう。もうあまり時間はないぞ」
「なら、一気に突破しましょう」
セラフィーネが告げ、アレステアがそう返す。
しかし、そう簡単に突破を許すほど偽神学会も甘くなかった。
「真祖竜!」
「あれはヘリオガバルスか。真祖竜の裏切者だ」
真祖竜ヘリオガバルスが廃城を守るような位置に付き、エリヤがヘリオガバルスを睨みながらそう語った。
「お客さんだ。歓迎してやろうぜ」
「皆殺しにしろ」
サイラスがそう言い、アザゼルが命じる。
ヘリオガバルスが真祖竜や亜竜の屍食鬼を引き連れて前に出て、サイラスが人間の屍食鬼を連れて前に出る。
「前方に敵複数!」
「時間がない。全て相手にしたら“煉獄崩壊”が起きる」
ケルベロス装甲擲弾兵大隊の将校が叫び、エリヤが険しい表情でそう言う。
「アレステア。お前がカーウィンを止めろ。あの連中は我々に任せていい」
「分かりました。幸運を」
「祈られるまでもない」
セラフィーネはそう言ってレオナルドたちとともに降車。
「ヘリオガバルス。旧神戦争が終わってから姿が見えないと思っていたら、まさか死霊術師の手先になっているとはな。真祖竜が堕ちたものだ」
「ほざけ、セラフィーネ。戦争に狂った貴様に何が分かる。戦う以外に無価値な貴様に私が恐れているものなど分かりはしまい」
「そう、戦うこと以外に私は価値を見出さない。それこそが私──セラフィーネ・フォン・イステル・アイブリンガーだ!」
セラフィーネがサーベルを握ってヘリオガバルスに向けて突撃。
「援護しよう、セラフィーネのお婆ちゃん」
エリヤがそう言うと彼の服が弾け飛び、その体が瞬く間に巨大なオオカミへと変化する。その大きさたるや真祖竜と比較しても引けを取らないほどだ。
「忌まわしき“竜狩りの獣”め。死ぬがいい!」
ヘリオガバルスが自らが操る死者とともにセラフィーネ、エリヤと交戦を開始。
「ヘリオガバルスよ。援護してやる」
「アザゼル。頼むぞ」
アザゼルもまたヘリオガバルスを援護してセラフィーネたちと戦い始めた。
「さあて。旧神戦争の英雄さんたちはおっぱじめたぞ。俺たちもおっぱじめようぜ」
「民間軍事会社が世界を滅ぼすのに加担する理由が分からないけど?」
「いろいろと不満が溜まってるのさ。そら!」
サイラスが率いる屍食鬼の群れがシャーロットたちに向けて銃弾を浴びせ、サイラスもまたシャーロットたちに向けて魔道式自動小銃を構えて進んできた。
「レニー! アレステア少年を進ませるためにやるよ!」
「ええ! やりとげましょう!」
シャーロットとレオナルドがサイラスと交戦を開始し、“グレンデルII”が火を噴く。放たれた口径25ミリ高性能ライフル弾があらゆる屍食鬼を薙ぎ倒していった。
「死霊術師を仕留めれば──」
レオナルドがシャーロットが薙ぎ倒した屍食鬼たちの隊列を突破してサイラスに斬りかかった。サイラスの体がクレイモアで引き裂かれ、鮮血が吹き上げる。
しかし──。
「残念だったな。それじゃあ死なないんだよ」
サイラスがにやりと笑うと44口径の魔道式拳銃でレオナルドの頭を弾き飛ばした。
「嘘。まさか……」
「イエス。俺は神聖契約教会のフランケンシュタインだよ。驚いたか?」
そう、サイラスもまたレオナルドと同じ神聖契約教会が生み出したフランケンシュタインだった。超人的な再生能力を有する改造人間だ。
「やれやれ。私の同輩はいないとばかり思っていましたが」
「おっと。あんたもフランケンシュタインか? また随分と神聖契約教会もろくでもない罪を重ねたものだ」
「そのことには同意しましょう。ですが、あなたもまた死霊術師として世界を混乱させている。神聖契約教会と同じだ」
「世の中は全員クソッタレさ。こんなもの滅んぢまえばいい。俺から死を奪ったクソ世界なんてな!」
サイラスが咆哮し、レオナルドとの激戦を始める。
その頃、アレステアはヘリオガバルスとサイラスの阻止を突破して廃城内に入っていた。光が立ち上っているところこそが“煉獄崩壊”を引き起こそうとしている場所で間違いないだろう。
「こっちですね」
「ああ。おぞましい空気がしている。間違いない」
アレステアとゲヘナの化身は廃城内を進み、裏庭に出た。
「カーウィン先生!」
そして裏庭の墓所にルナの姿が。
「来てしまったのか、アレステア君」
ルナが悲し気にアレステアの方を見た。
「やめてください、こんなこと! どうして世界を滅茶苦茶にしようなんて……!」
「私たちは奪われてきた。理不尽に。だから、私たちも奪う。この世界から」
ルナがそう言う中でルナの手元の本が開き、そこから光が打ち上げられた。
「あれは神聖契約教会の世界契約書! アレステア、あれを止め──」
ゲヘナの化身がそう声を発しようとしたとき、ゲヘナの化身が姿を消した。
「契約の初期化を開始。全ての神々の権利の停止を宣言。終わらせる。何もかも!」
そして世界がロストアイランド領を起点に崩れ始めた。
帝都でもその様子が見えていた。
「何が起きている……? アレステアは、我が友は失敗したのか……?」
ハインリヒは宮殿の窓から崩壊していく北の空を見て呻いた。
「陛下。すぐに地下室へ退避を! 軍はこれより戒厳令を布告します!」
「状況は分からないのか?」
「今はまだ何も」
「そうか」
ハインリヒが侍従武官に連れ添われて宮殿の地下司令部に向かう。
魔獣猟兵もまた滅びを見ていた。
「カノン。ありゃやばいぜ」
アイゼンラント城から北のロストアイランド領の空が崩れ落ちるのを見てヴァレンティーナがそう愚痴った。
「ええ。私たちも行くべきだったかもしれない」
「だが、相手はもはや神の権限を持っている。あたしたちでも勝てるか分からん」
「それでも。できることはするべきだった」
「大丈夫だ。セラフィーネならやるだろう。あいつは最強だからな」
カノンとヴァレンティーナは空を見つめ続けた。
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