第5話 転校生リク

夏の朝、蒸し暑さが混じった風が吹く。僕らは体育館に向かった。夏休みの学校。部活以外の生徒はいない。いつもと違う校内だ。僕はこの非日常の空気感が好きだ。夏休みのワクワク感と入り混じって”何かが起こりそうな”そんな期待をしてしまう。小2の夕暮れUFOをみた日から、リクとビクと出会って”バグの僕”だけ居残りの地球生活。何も起きなかった。僕は普通の人間として過ごしてきた。身体に特段の変化も見られず、頭脳、体力ともに平均。ただ他の人間と違うところは”心が読める””脳内に入りこむことができる。”これくらいか。それに相手がいないから使えないが脳内会話テレパシーが使える。これは人間同士ではできない。第8惑星人。僕の惑星同士でないと無理だ。あの日帰還寸前、宙を浮いていたあの日以来使っていない。相手がいない。”目黒さん?”たぶん彼女は僕と同じ第8惑星人。しかし何かが、引っかかっる。僕は目を閉じたまま時をやり過ごしてきた。普通の人間として。ただ気づいてたことがある。この地球には僕ら以外の異世界人も本当に多く飛来してきている。普通の人間として。”君も気づいているだろう。もしかしたら君も・・・同じ。”

「ピー、集合。」キャプテンの声が体育館に響く。部活開始だ。「ざわざわ。」

「転校生?イケメン。」女子部員がざわめく。コーチが一人の少年を連れて来た。「鹿嶋リク君だ。アメリカからの帰国生だ。アメリカでもバスケ部だったそうだ。みんな仲良くするように。学校には2学期からの登校だ。」キャップテンをはじめ僕らは声をそろえて「はい。」声が体育館にまた、響きわたる。「はじめまして転校生のリクです。」1年らしからぬクールなリクの声もまた体育館に響く。横にいるユウタが僕に「リク君っていい感じ。前から知っているみたい。背も僕と同じぐらいだし、めちゃバスケうまそう。」「そうだな。」僕は頭の中で

『ユウタ、そうだ。あたり前だ。リクは僕らの友達だったから。当然だよ。』とも言えない。ケイもすかさず「鹿嶋リク、僕らと同級生だろう。クールだが、なぜか知ってる気がするんだよな。」ユウタが「ケイ君が、そう言うって珍しいよね。ショウ君もそう思うだろう。」僕も「そうだな。」とユウタにあいづちした。体育館入口に目黒さんがいる。脳内に目黒さんの声『ショウ、ほらね、リク、もどって来たでしょう。』僕は脳内で『そうだな。』脳内に軽く電磁波が走る。あの日以来、目黒さんを僕は避けてきた。そして目黒さんは僕の脳内に侵入してきた。少しの動揺はあったが彼女はやはり同じ第8惑星人だ。『ショウ、久しぶり。10年ぶり?変わってないな。バグは、どうだ。身体に変化はないのか?』リクも脳内侵入してくる。『特に、ないのもない。あの頃と何も変わりないよ。』「ショウ、前見て、パス」ケイの声が体育館に響く。僕はあわてて先輩のボールを受ける。『リク、部活のあとでまた、話そう。』『そうだな。』僕らは脳内テレパシーで会話した。第8惑星では当たり前の通信手段だ。目黒さんの声が入る。『私も仲間に入れて。あなた達の部活終わるの待ってる。』『分かった。じゃ後で。』「ピー。」コーチのホイッスルの音が体育館に響く。「これからハーフ試合を始めるぞ。秋のインターハイはすぐだ。」「はい。」僕らは声をそろえて返事をした。


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