第3話 深山の問い
その下の段には、一番左から『鉱物名』とすると、『無色鉱物』の下に『石英』『長石』、『有色鉱物』の下に『黒雲母』から先程名前を挙げた鉱物名を横一列を書いていき、
「火山とは、『地下深くにあるマグマが噴出して、溶岩などが堆積した山』のことで、そのマグマが『地下にある岩石が高温によって溶けたもの』のことをいうのは覚えてる?」
「はい」
仁はこくりと頷く。
「マグマの粘り気によって、山の形が変わる……って習った気がします」
「そうそう、その通り。山の形は大きく三つあって、『もりあがった形』『円すいの形』『斜面のゆるやかな形』というのがあった。『円すいの形』は日本が誇る富士山が当てはまる」
深山は三つの山の形を黒板に描いた後、彼に問うた。
「さて、問題です」
「えー……。あの、答えられるか分からないですよ?」
問題を出されるとは思わなかったのだろう。仁は困った顔をする。
「大丈夫。分からなかったら分からないで良いから、ちょっと考えてみよう。さっき先生が言った、三つの山には、『マグマの粘り気』『噴火の様子』『溶岩や火山灰の色』に違いが出るんだけど、何がどう違うか分かるかな?」
「えっと……、『もりあがった形』の火山は、マグマの粘り気が強いから噴火が激しくなります。そして、粘り気が強いマグマからできる火山灰や溶岩は白くなって、『斜面のゆるやかな形』の火山は粘り気が弱いから、火山の噴火が穏やかで、マグマからできる火山灰や溶岩は黒くなります……」
「正解。『円すいの形』は?」
「『もりあがった形』の火山と『斜面のゆるやかな形』の火山の間……」
深山は小さく頷く。
「まあ、いいでしょう」
「えっ、駄目ですか?」
仁が聞くと、深山は答えた。
「きちんとした説明になってないから、テストだと
「またですか? 先生さっきから問題ばっかり。俺の質問から遠ざかってません?」
「いやいや、近づいているよ。——さて、マグマからは、火山灰や溶岩が作られると答えてくれたよね。マグマからは、火山灰や岩石ができると言ったけれど、それらを構成しているのは鉱物という小さな結晶だ。君たち中学生が覚えなくちゃいけない鉱物には、『無色鉱物』と『有色鉱物』というのがあったけど、何だったか覚えてる?」
「うーん……。すみません、分かりません」
「じゃあ、説明するね。『無色鉱物』には『石英』『長石』、『有色鉱物』には『黒雲母』『
深山は黒板の何もないところに移ると、一番上に『無色鉱物』と『有色鉱物』を書く。 そして一番左側の『鉱物名』の下に、『色』と『形』、『割れ方』という項目を追加する。
「割れ方……」
仁は項目の一つを見て呟いた。
「ね? 戻って来たでしょう?」
深山が聞くと、彼は信じられない様子で小さく頷く。
「はい……」
「じゃあ、表の空欄のところを埋めていこうか」
深山はそう言うと、仁に質問をしながら『石英』の色は『白か無色』、『長石』の色は『白色か、薄い桃色』などと表に入れていく。
そして、『割れ方』になったとき、『石英』は『不規則に割れる』『長石』は『決まった方向に割れる』、『黒雲母』は『決まった方向に薄くはがれる』と書いた。
「よし、全部埋まったね。割れ方について書いたけど、これを難しい言葉で『
「言われなくても、多分忘れちゃうと思いますけど……。その……『へきかい』がダイヤモンドとどう関係するんですか?」
仁の問いに、深山はチョークで『長石』のところを指した。
「『長石』は『決まった方向に割れる』と書いたけど、ダイヤモンドも、ある方向に対して割れやすい性質を持っているんだよ。実はダイヤモンドが発見されたのは紀元前なんだけど、十四世紀になるまではダイヤモンドは硬くて加工することができなかったんだ」
「それって、ダイヤモンドが自然界で一番硬かったから?」
深山は大きく頷いた。
「そういうこと。時代を経て『劈開』、つまり割れやすい方向があることが分かってくると、それを利用してカットをするようになっていったんだ。仁さんが言う『ギラギラ』になるまでは、もっと過程を踏まなくちゃならないし、きれいにするための技術も道具もいるけれど、今でも最初の工程に『劈開』を利用して、ダイヤモンドは加工されている」
「……そうなんだ。でも、先生。それと俺が欲しい『強い心』とどう関係するんですか?」
「もちろんそれにはちゃんと答えるよ。でも、その前に仁さんに質問です。ダイヤモンドは硬くて傷つきませんが、さらに割れることがなかったらどうなるでしょうか?」
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