第42話 ざーこの醜態

【戦闘ライブ】クズで下衆のいじめっ子を全員ボコってみた!


:タイトルセンスよw

:地味にクライマックスだな

:はよやれ!

:いてまえ!

:やっちゃってください

:早くざまぁ見たい

:黒兄のラスボス感www



 視聴者さんに嫌われただけあり、みんな煽りながら盛り上がりを見せている。

 気がつけばフォロワーが33000人とバズっていた。


「僕の全能力値アビリティ:1650。お前らがクズのおかげで、また強くなった……その点だけは感謝してるよ」


「ほざけぇ、クロ助がぁ! お前らやるぞ、こいつを囲め! 同時攻撃ならレベル差があってもダメージは負わせる筈だ! 瀕死になったところで、ギタギタにブッ殺す!」


 久しぶりに聞いたな、クロ助って(笑)。


 三井の指示に仲間達は頷き、僕を取り囲むためか左右後ろへと回り込む。

 須田も片足を負傷していたが所持していた回復薬ポーションを服用し、移動できるまで回復している。


双剣士ダブルセイバーの佐渡は《連撃》と《会心撃》スキルを持ち、槍術士ランサーの鶴屋は防御力を無視した《貫撃》スキルか……んで、魔法戦士マジックファイターの三井は魔法と剣技を混合した最大攻撃だな。確かにまともにヒットしたら、僕でさえ相当な深手を負ってリスクがある……やはり同じ転移者は侮れない」


「そうだろが! クロ助、所詮テメェは孤独なぼっち君だ! たった一人じゃ俺らに敵わねーんだよぉぉぉ! バァァァカァァァッ、ギャハハハハハハ!!!」


 マウントを取ったつもりで勝ち誇ってくる、三井 潤。

 佐渡・鶴屋・須田の三人も「へへへ」と卑しい笑みを浮かべ舌舐めずりしている。


「フン、勘違いすんなよ」


「なんだと!?」


「あくまで僕が後手に回り無抵抗だった場合の話じゃないか。クズが群れりゃいいてもんじゃないんだよ――《増強》ッ!」


 スキルを発動し、全能力値アビリティが二倍になる。

 約30秒間、能力値アビリティ:1650から3300へと爆上がりした。

 さらに追い打ちを掛け、『三日月の死神大鎌クレセント・デスサイズ』を頭上で高速に回転させる。

 僕の周囲に突風が吹き荒れ、砂塵が渦を巻き上昇気流と成した。


「な、なんだぁ!? 前が、前が見えねぇ!」


 吹きつける砂塵が三井達の視界を奪う。

 囲んだことが逆に仇になったようだ。


 そして僕は最大級の必殺技である風系魔法を撃つ。


「くらえ、《竜巻》ッ!」


 猛り狂う風の竜がとぐろを巻き、あらゆる物を丸飲みして昇天した。


「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁ――……!!!」」」」


 三井達も激流に飲み込まれ悲鳴を上げる。

 強烈な突風の渦に抗うことは誰もできない。

 体の自由が奪われ、瓦礫や砂塵と一緒に旋回を繰り返しながら宙を舞う。


 やがて突風は緩やかな回転となり《竜巻》効果が消失する。

 飲み込んだモノが吐き出されたかのように様々な物体が降り落ちていく。


「「「「――うぎゃっ!」」」」


 四人の下衆共も墜落し、強く地面に叩きつけられた。

 その衝撃あるいは激流に巻き込まれた際か。体の至る箇所に深手を負っていることがわかる。

 中には腕や足が明後日の方向に折れている者もいた。

 どちらにせよ、戦闘不能状態なのは明らかだ。



:ざまぁ!

:黒兄よくやった!

:ゲス共、ガチ口ほどでもねぇw

:ワンターンキルで草

:無双やんwww

:いいね、ざーこ

:ざーこ

:ざーこ

:ざーこ

:お前らどんだけ嫌いやねんw

:メシウマ



 視聴者さんは大満足のようだ。

 三井達が悪者感ヒールを醸し出してくれたおかげで、今回のライブ配信はもっとバズるぞ。


 僕は『三日月の死神大鎌クレセント・デスサイズ』を肩に担ぎ、悠然と奴らに近づく。

 万が一動けないフリをして逆襲を狙っている可能性があるため、《予見眼》で確認するも本当に深手を負い動けないみたいだ。


「い、痛でぇよぉ、痛でぇ……なんで俺らがこんな目に……うぐぅ」


「三井、まだやるか?」


 もう戦えないと周知するも、あえて訊いてみる。


「ひぃ、ひぃぃぃい! クロ助ぇ、来るなぁ! 来るなよぉぉぉ!」


「黒咲、俺の両足が折れちまっている! もう戦えねーよ、勘弁してくれ!」


「俺が悪かったよ! もう二度と悪さしないから命だけは助けてください! 罪は必ず償いますから!」


「そ、そうだ! 少なくても俺と鶴屋はジュンちゃ……いいや! 三井に強要されていたんだ! 現に俺ら二人はヤンキーじゃない! お前だって三井の糞に嫌がらせを受けていたからわかるよな! なっ!?」


「須田ぁテメェ! この期に及んで俺を売ろうとしやがってぇ! 違うんだよ、クロす……黒咲君! 俺はこいつらに煽られただけなんだ! 別に陰キャぼっちの癖にスカしやがってと気に入らなくて苛めてやろうと思っていたわけじゃない! 信じてくれよぉぉぉ!!!」


「バーカ! テメェからボロ出してんじゃねーか! 聞いたろ黒咲君! 三井こいつはそういう性根の腐ったクズなんだ! 同じヤンキーだった佐渡も似たような奴だ! この二人は始末していい! 須田も性欲の権化で強姦魔だし生きる価値はないだろう! けど僕は違うよ、ただのオタクでキミと通ずるモノがある! そうだ友達になろう! そうすれば、ぼっち脱却できるんじゃないか!」


「天パの糞野郎が! 鶴屋ぁテメェだって似たようなカスじゃねーか! 黒咲様、俺はカッコばかりのなんちゃってヤンキーだよ! ジュンと一緒に居たのだって所詮はノリさ! 現に俺からキミにちょっかいをかけたことなんてなかったろ! 今回の件だって、俺はただの傍観者だ! 自分から悪さをしたことなんて一度もない、信じてくれ!」


佐渡トモ、テメェ! お前だけは裏切らねぇと思ってたのによぉ! テメェが一番、黒咲を虐めるように煽っていたクチだろうが! もういい! テメェら三人共、死ねぇぇぇ! 俺だけ裁判を受けて、全部テメェら糞カス共にそそのかされたことにしてやる! ブッ殺した連中や犯した女達もテメェらのせいにしてやるぜ! 極刑さえ免れてば俺の勝ちなんだよぉぉぉ!」


「「「三井、テメェェェェ!!!」」」


 下衆四人組が仲間割れをし始め、互いに罪を擦り付けるように罵詈雑言を浴びせている。

 こいつらの本性なんてこんなもんだろう……わかっていたけどな。


「うっさい黙れ! よくもベラベラとしょーもない台詞ばかり出てくるもんだ! 聞いているだけで虫唾が走る! お前ら全員、同じ穴のムジナだ! それに言ったろ、ここでお前らとの全てを終わらせてやるとなぁ、覚悟しろ!」


「待ってくれ、黒咲! 確かに俺はお前をイジったりちょっかいばかりかけていた! そこは心から謝るよ! けどそこまでだろ!? お前に殺されるような事まではしてねぇ! そうだろ!? 助けてくれよぉ、クラスメイトじゃないか、なぁ!?」


 三井の奴、また妙な理屈ばかり並べやがって。

 クラスメイトと言えばなんとか乗り切れると思っているのか?


「……そんなの久賀君と花音さんが止めてくれていたからだろ? 苛めってのはエスカレートするものだ。簡単に増殖し人を死に追いやる最低の行為。したがって、僕の価値観ではお前達のような卑劣な人間がどうなろうと自業自得だと思っている。実際お前達はこの異世界で罪もない種族達の尊厳を踏みにじり、多くの命を奪ってきたんだからな! この村の獣人族にしたことを忘れたか!」


「ち、違う! この村に関してはアナハールに命令されただけだ! そう言ったじゃねーか! 他の罪にもグランテラス王国の裁判で罪を償う! 俺達は未成年だ! 現実世界じゃ絶対に極刑にならない……異世界だって法廷に出る権利はある筈だ! 頼む、殺さないでくれ! どうか助けてください!」


 どうせ極刑を免れようと仲間達で罪を擦り付け合う魂胆だろうが。

 だが三井達がグランテラス王国で裁判を受けることはない。

 おそらくアナハールに証拠隠滅として消される運命だろう。


 どちらにせよ。


「……わかった。確かに僕が裁くのも違う気がする」


「く、黒咲君!」


 三井の表情が希望の光が差したように明るくなる。

 佐渡・鶴屋・須田も同様だ。

 あれだけのことをやらかして助かるとでも思ったのか?

 おめでたい連中だ。


「ああ本当だ。僕は闇に染まらない……妹である月渚のため、僕は僕であり続ける」


「ありがとう、黒咲君! 俺ぇ心から反省するよ! 更生したら友達になろう!」


「――だが三井、僕は・ ・だぞ」


「え?」


「お前達を裁くのは僕じゃない――《審判》!」


 僕は先程【スパチャ】で獲得したスキルを発動した。

 天空から煌びやかな光輝を発する巨大な半透明のボードが舞降りて、僕の頭上で留まり浮遊する。

 

「……お、おい、黒咲。なんだ、それは?」


「ジャッジメント・タイム。このライブ配信を観ている視聴者さんに《審判》を委ねる!」

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