第21話 ダークエルフの少女
「なんだ、いきなり!?」
僕は上を見上げ、少女を見据えた。
長い白髪をツィンテールに縛った褐色肌で中々の美少女だ。
ビキニ水着のような思いっきり露出度の高い
背には身の丈に近い大剣を装備している。
さらに黄金色の瞳に尖った両耳……ん? 人族じゃないのか?
――ダークエルフだ。
そういや王立図書館で読んだことがあるぞ。
この異世界では闇エルフと呼ばれ妖魔族として分類される種族。
人族の天敵である魔族と同類と見られている筈だ。
てことは敵か?
「なら僕も容赦しない。撃ち抜かれたくなかったら、とっとと消えろ!」
腰のホルスターから、愛銃リベリオンを抜き銃口を向けた。
「動くなと言ったっす! この魔王軍の手先めぇ!」
奇妙な言葉遣いのダークエルフ少女。
だがその台詞に僕は眉を顰める。
「魔王軍だと? 違う、僕達は人間だ! 見たらわかるだろ!?」
「嘘ッすね! ウチは《鑑定》を持っているっす! 男の方は確かに人族っすけど
まさかダークエルフに闇堕ち扱いされるとは……って彼女こそ魔王軍の手先じゃないのか?
「確かに痛いところばかりだけど、こっちにも色々と事情があるんだ。少なくても魔王軍でないことは断言するよ。敵でないなら僕達は何もしない。どうかその弓矢を引っ込めて行かせてくれないか?」
「なるほど言い分はわかったっす! しかし後ろの奴はなんなんっすか!? 仲間じゃないっすか!?」
「後ろの仲間だって?」
僕は振り返ると、そこに蒼い光を発する黒馬に跨った首無しの黒騎士がいる。
しかも片手で漆黒の刃を持つ大剣を掲げ、こちらに向けて斬りかかろうとしていた。
バカな! いつの間に!?
月渚とネムの《索敵》スキルにも引っ掛からないだと!?
僕は反射的にリベリオンを向け発砲する。
激しく響きた銃声とは裏腹に、弾丸は虚しく首無し騎士の鎧を擦り抜けた。
「銃が通じない!? こいつ何なんだ!?」
驚愕を他所に、振り下ろされる斬撃。
僕は月渚を抱きかかえ《神速》で距離を置き、ネムは《予見》で攻撃を見切りながら《軽快》《跳躍》スキルで躱した。
「お兄ちゃん、あれ『
胸元で、月渚が《索敵》を発動させ教えてくる。
スリーピーホロウ?
確か死妖幽騎デュラハンと並ぶ
書物の記憶だと、物理攻撃を仕掛けてくる癖にこちらの物質的攻撃は無効化される理不尽な体質の筈……だから銃弾が通じなかったのか。
あと貫通系スキルが有効の筈だ。
《鑑定》で調べたら、レベル30もある強力なモンスターだ。
そんな
スリーピーホロウは黒馬の向きを変えさせ、僕の方に向けてくる。
攻撃の的をこちらに向けた感じだ。
そして、ダークエルフの少女は弓矢を構えたまま射る気配はない。
高見から見定めるように僕達を眺めている。
「月渚、兄ちゃんが戦うからここにいろ。お腹が空いたらこれを食べるんだぞ」
「……うん、わかった。気をつけてね」
僕は《収納》ボックスを開放させ、ガルフの燻製肉を妹に手渡した。
さらに『
「あの姿は
ダークエルフの少女は木の上から叫んでいる。
ああ、もう面倒くさいなぁ!
「月渚、ネム! あの黒エルフの子を手出しさせないよう牽制しておいてくれ! 下手な真似するようなら攻撃しても構わない!」
「ご主人様、わかったミャア! 黒エルフのお前、ネムのご主人様に妙な真似すんなミャア!」
「あたしのお兄ちゃんに手出しさせないんだからね!」
よし、頼もしい妹達に背中を預けることで集中して戦えるぞ。
僕はゆっくりと前方を歩き、スリーピーホロウと向き合う。
「それじゃ、ライブ《配信》の時間だ――こんちわ、黒月兄妹チャンネルですぅ!」
僕は固有スキルを発動し、頭上から半透明のチャット板が浮かび上がらせた。
その見たことのない力を前に、ダークエルフの少女は華奢な体を小刻みに震わせ戦慄している。
「な、なんっすかぁ、あれ!? てか急にバカテンション上げて、あいつ頭ぁ大丈夫っすか!?」
ガヤがうるせーっ。
こういうスキルなんだ、仕方ないだろ?
【戦闘実況】不意打ちしてきた首無し騎士にムカついたので懲らしめてみた!
:今回も告知なしかよ
:緊急イベントぽいな
:黒兄、実はトラブル体質か?
:スリーピーホロウだと? 兄キ勝てんの?
:物理攻撃しかねーもん。無理じゃねw
:ご愁傷様です。ルナたんとネムたんはワイが引き取ります草
:このチャンネル終わらせたくないので、これで頑張れ!
【スパチャ】
・《貫撃》スキルを獲得しました
こいつは有難い!
自分が使用する武器に貫通性の攻撃を付与させるとても強力なスキルだ。
つまり
ちなみに銃弾も該当するぞ。
「視聴者さん、【スパチャ】あざーす! これでチャンネルを続けられまーす! 見ていてくださいねぇ!」
僕はチャットに向けてお礼を述べている隙に、スリーピーホロウは突進してきた。
黒刃の大剣を掲げ、首を刈り取ろうと迫ってくる。
「無駄だ、《誘導》!」
僕はスキルを発動し、あらぬ方向に攻撃を誘導する。
それは跨る黒馬の首に向けてだ。
誘導された大剣が黒馬を斬首し、前膝が崩れてしまう。
結果、スリーピーホロウは落馬した。
「チェックメイトだ――《会心撃》《貫撃》ッ!」
僕は地面に蹲るスリーピーホロウを上から見下ろし、その体を縦方向に一刀両断する。
レベル差があろうと、獲得したスキルを駆使すればそれを上回る力を発揮し負けることはない。
それが
鎧ごと真っ二つに斬り裂かれたスリーピーホロウは黒い煙と化して消えていく。
最後は漆黒刃の大剣と裂かれた鎧が残骸となって地面に落ちていた。
念のため、それら回収して《収納》ボックスに保管する。
ちょっとレアっぽいし何かの素材に使えるかもしれない、そう思った。
「無事に勝ちましたぁ! 黒兄、頑張ったと思う方はチャンネル登録お願いしまーす!」
僕の呼び掛けに、フォロワーが500人に増えた。
う~ん、バズるまではいかなかったか……強力なスキルを貰えたことだし仕方ない。
ライブ配信を終わらせ、僕は木の上にいるダークエルフの少女を見据えた。
「なんなんいっすか、あの男は!? おちゃらけているのにやたら強いっす!」
酷く狼狽し完全に戦意を消失しているように見える。
おまけに月渚とネムに威嚇され、下手な行動ができないようだ。
「さぁて後は、あの子をどうするか……」
ここまで来たら煮るなり焼くなりだな。
そう思い仮面越しで笑みを零した。
──────────────────
お読みくださいましてありがとうございます!
少しでも興味を持っていただけましたら、作品のフォローをしていただけると嬉しいです!
☆☆☆をいただけるとモチベーションが大幅に左右されます。是非よろしくお願い致します!
たった数秒の操作で、それがとても励みになります!
よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます