第18話 クラスメイトのチーム①
翌日。
バルハルド率いる20名の騎士団を筆頭に、速水達はダンジョンの探索に赴いていた。
無論、戦う意志を持つ者達だけであり、それ以外は相も変わらず王城に留まっている。
「……白石先生、大丈夫ですか?」
花音は荷馬車の向かい側に座る担任教師を安否した。
白石 紗羅は移動中、ずっと口元を抑え顔色が優れない。
目的地に近づく度に嘔気を催しており、それはより酷くなっていた。
「だ、大丈夫だ、一ノ瀬。本当にすまない」
「具合が悪いのなら今からでも王城に引き返してはどうでしょうか? どうせ急ぐわけでもありませんし、なんならわたしからバルハルドさんにお願いしても……」
「いや、いいんだ……これ以上、生徒達に迷惑をかけられない。私も自分の役割くらいは果たしたいと思っている」
そしてもうじき辿り着くダンジョンは、全100階層からなる『
異世界ではこういったダンジョンが幾つも存在し、冒険者達の稼ぎ場となっている。
特に魔力鉱石やモンスターは、いくら鉱物採取し討伐しても数時間後には復活し無尽蔵に湧いて現れ、下層に行くほど貴重な素材が手に入るやすいとか。
特に魔力石は貴重なエネルギー源として重宝され軍事関係だけでなく、日常生活の材料としても需要が高い。
紗羅は職業上、非戦闘員扱いだが生徒や騎士達の武具等を作る重要な役割があり、リヒド国王の要請もあって今回の探索に同行した経過があった。
彼女も黒咲兄妹が失踪した後、すっかり気が滅入しまい以前のような自信を無くしてしまっている。
だが生徒達が自らの意志で戦おうとしていることと、「教師」という矜持が紗羅の精神を辛うじて支えるに至った。
しかし戦場に辿り着く前から既にこの有様だ。
参加している生徒達から溜息が漏れ始めている。
(先生も黒咲くん達がいなくなってから可笑しくなっている……けど不安を見せているだけ、まだまともなのよね)
花音はそう思った。
寧ろ何も疑念を持たず、のこのこついて来ている周囲が可笑しいのだと。
無論、目的があるとはいえ彼女自身も同類なのだと卑下しながら。
数時間後、洞窟の入り口前に到着する。
各自は馬と荷馬車から降り、空洞前の広場に集まった。
ここからは歩いて移動しなければならない。
「皆、いよいよ実戦だ。とりあえず20階層を目指していくぞ。それ以上、下層へ潜るかはお主達の力量次第だ。我ら騎士団もフォローするが実戦である以上、何か起こるかわからない。訓練を思い出して気を引き締めて挑むように!」
檄を飛ばすバルハルドに、速水と滝上から「はい!」と気合が込められた返答がなされた。
ダンジョン内では前衛を生徒達が担い、紗羅は騎士団と共に後衛で進むことになる。
目的はあくまで生徒達のレベリングだ。
魔王軍侵攻という来るべき日に備え、実戦を通してより修練を重ねることにある。
下層に進むにつれより強力なモンスターが出現するため、それらを見計らいながら階層の制覇を目指していくことになるだろう。
「よっしゃ! 行くぜぇ!」
「待て、昇。俺達は『ガリ勉チーム』と中衛だぞ」
滝上を制したのは『
相撲部の主将だけあり恰幅が良いだけじゃなく全体が筋肉で覆われた体格。
既に角界からも声がかかっていた有能な選手だ。
職業は
見た目とは裏腹に当人は温厚な性格で「気は優しくて力持ち」タイプだ。直情型の滝上と気が合い何故か仲が良い。
「若津くんの言うとおりだよ。ウチらチームで動くと決めているんだから暴走しちゃ駄目だぞ」
「そうだね、朱里ちゃん。やーい滝上、怒られてやんのぅ!」
二人の女子に窘められ、出鼻を挫かれた滝上は「わーったよ!」と不貞腐れている。
一人は『
テニス部で、お人好しで人の良さそうな顔立ちにすらりとしたモデル体形。
職業は
滝上とは中学時代から親交があり、いつも何かと気にかけていた。
もう一人は『
陸上部に所属し、日焼けした肌に細身で華奢ながらも力強さを感じた。
明瞭活発であり、朱里の親友でもある。
職業は
滝上をリーダーとする、この四人は「運動チーム」と呼ばれている。
「暴走したければ勝手にどうぞ。私達
純白の鎧を纏う美しき
うっかり口を滑らせた若津は「す、すみません」と大きな体を縮こませ謝罪した。
「ちょっと麗、やめなよ。若津君だって悪気がないんだからさぁ」
隣にいる少女に窘められ、麗は「フン」とそっぽを向き無言となる。
少女は『
長い髪をカチューシャで纏めている癒し系の容姿であり、麗と並ぶ成績優秀な才女だ。
クラス委員長であることから「委員長」と呼ばれている。
そんな奈緒の職業は
「そうだね。これが三井辺りだったらムカつくけど、若津君は人柄がいいからね」
そうフォローを入れるのは『
赤フレームの眼鏡に、おさげ髪が似合う小柄で小動物のような可愛らしい容貌。
職業は
「そうかな? 僕は断然、生徒会長が正しいと思うよ。ガリ勉と煽る輩なんて所詮は勉学に励めない連中のやっかみやだからね。学生の癖になんのために学校に来ていたのやら……そもそもキミらだってスポーツを取ったら、いったい何が残るんだい?」
随分と痩せこけた坊ちゃん刈りの黒縁眼鏡の男子生徒がきっぱりと言い切る。
彼は『
父親が官僚ということもありエリート気質が非常に高く、無駄のない財閥令嬢の麗に心酔し憧れている。
職業は
麗を筆頭にチームが組まれた四人は高い実力と共に頭脳派とされ、現実世界においての振舞いもあり他のクラスメイトから「ガリ勉チーム」と陰で揶揄される背景があった。
戸川の皮肉に、滝上は「戸川ぁ! テメェ言い過ぎだぞ、コラァ!」と憤るも若津から止められていた。さらに「俺が悪いんだ、本当にごめん」とひたすら謝ることで事なきことを得ている。
「おい、そこ。何を揉めている? これからダンジョンに潜るってのに、そんな場合じゃないだろ? 皆で協力して制覇を目指すんだ」
前衛の速水に注意され、両チームは気まずそうに頷く。
ここでもカースト上位の
その前衛を担うのは、以下の三チームだ。
三井をリーダーとする「下衆チーム」、普段の言動や素行ぶりそう呼ばれている。
久賀が率いる「不良チーム」、これも陰口であるが圧倒する高い攻撃力から誰からも一目置かれていた。
そして速水が統率する「勇者チーム」だ。
以上でパーティで『
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