第11話 強くなる兄妹
「うん、美味しいね! お兄ちゃん!」
「ミャア!」
:ルナたんの幸せ顔最高!
:いただきました!
:いただきました!
:猫ちゃんに癒されるわ~
:飯テロ回
:食レポ求む
「あっ、はい! えっとですね、噛んだ瞬間に肉汁と濃厚な旨味が広がっています! しっかり火が通っていて表面カリカリで中はジューシーでとても美味しいです!」
:まさかのルナたん食レポ♡
:レポ上手!
:いいなぁ
:ルナたんから肉汁とか言われるとめちゃ映えるw
:草
:尊い
:兄、仕事しろ!
「す、すみません! あとスライム・ドリンクもゼリーみたいなトロッとした舌触りですけど、無味無臭で飲料水として飲めますよぉ」
:飲みたいと思えない
:けど咽なさそう
:ええやん
:現物みたら萎える
:どんな感じ?
某配信動画サイトでも「食べてみた」系は好評だけに、視聴者さんは大いに盛り上がりを見せている。
気がつけばフォロワーは10000人に達し、同時に僕はレベル10とバズった。
ただ食べているだけなのに……いいのか?
ついそう思えてしまう。
「「ご馳走さまでした」」
すっかり完食して満たされた。
まだ肉はボックスに保管してあるけど非常食用にとっておこう。
色んなモンスターを狩るという楽しみが増えたぞ。
「食べてみた結果、見事に大成功でした! いやぁ美味しかった! では今回の配信は終わります! いったん寝まーす!」
:あざーす
:お休みなさ~い
:ルナたんと一緒に寝たい
:楽しかった
:おもろかった
:成功おめでと、良かったらこれを
:頑張れ、兄。これやる
:次回もよろ、どうぞ
【スパチャ】
・《料理》スキルを獲得しました
・《調合》スキルを獲得しました
・《洗浄》スキルを獲得しました
ん? これは調理に関してのスキルかな。
《料理》はどんな難しい素材でも美味しく作れるスキルで、《調合》は香辛料を調合してポーションなど回復薬類も作れるらしい。
そして《洗浄》はあらゆるモノを滅菌して清潔にする能力があるようだ。
戦闘系や武器の錬成だけじゃなく、生活用スキルも与えてくれるのか……改めてやばすぎる。
「チャンネル登録ぅよろしく!」
最後にウィンドウに向かってキメポーズして、《配信》スキルを終了させた。
それから少し仮眠をとることにする。
生き延びる活路を見出したとはいえ、『魔窟』と呼ばれるダンジョンの中だというのに妙な安心感があった。
やっぱり月渚が傍にいてくれるからだろう。
(そういや視聴者さんに、月渚の《捕食》スキルについて聞いてみるのもありだよな?)
ふとそう過った。
相手が神様達なら何かしらの情報を知っている筈だ。
案外、スキルを消す方法があるかもしれない。
今みたいに腹を満たすことで魔獣化は防止できそうだけど、つい不安が過ってしまう。
けど視聴者さん、自分達の素性は絶対に明かさない傾向がある。
コメント欄も自分達が興味を引くような内容ばかりだ。
しかもやたら軽く自由気ままときている。
機嫌を損ねると面倒だし、それとなく聞いてみるか。
こうしてダンジョンでのライブ配信生活が始まった。
◇◇◇
あれからも色々なモンスターを狩っては食材にし、様々な鉱石を手に入れて自身の強化を図っていく。
最も驚いたことは、月渚が魔獣化せず調理した食材からでも特性スキルを習得できるという点だ。
現にヘイナス・ラビットの肉を食べたことで《縮地》と《跳躍》を習得している。
《縮地》は体重移動を前進するエネルギーに代えて超高速を可能とし、《跳躍》は高く遠くへとジャンプするスキルだ。
またスライム・ドリンクを飲んだことで、どんな傷でも即効で治る《自然治癒》と攻撃技である《突撃》を覚えていた。
妹が強くなってくれるのは大いに嬉しいけど、あの魔獣化した姿を思い返すと複雑な気持ちになる。
ライブ配信する中で、さりげなく軽いノリで視聴者さんに聞いてみた。
月渚の《捕食》スキルについてと、何故魔獣化してしまうことについて。
:知らんがな
:くぐれよ兄キ
:ちょっと何言ってるか分かんないですねぇ
:ウチらに聞くなや
:愛の力でなんとかならんの?
:これ、なんかの役に立つかな
:うp主がいつでも逃げれますように
【スパチャ】
・《譲渡》スキルを獲得しました
・《隠密》スキルを獲得しました
やっぱり視聴者さんにとって都合の悪いワードのようで「知らない」の一点張りだ。
その代わり、新しいスキルを貰った。
なになに、《譲渡》は自分が不要になったスキルを他者に譲る能力。ただし
そして《隠密》は一時の間、気配を遮断できる暗殺と逃走に特化したスキルか。
うん、悪くない! 特に《譲渡》は使えるぞ!
これからスキルを獲得していく上で、月渚の自己強化に繋がるし、その中には魔獣化を止めるスキルだってあるかもしれない。
僕は希望に胸を躍らせる。
◇◇◇
どれほどの日数が経過したのかわからない。
延々と暗闇のダンジョンの中なので昼も夜もない世界だ。
だから食材がなかったら狩りをする。
満たされたら寝るの繰り返しだ。
僕と月渚はダンジョンの中で強くなっている。
もう大抵のモンスターは怖くない。
寧ろ狩るべき相手だ。
「月渚のおかげで以前より、火が巧みに使えるようになったよ」
「うん、こないだ食べた『ヘルハウンド』のおかげだね。可哀想だけど……仕方ないね」
相変わらず心優しい、月渚。
やらなきゃ僕らが食われてしまうというのに。
ヘルハウンドとは黒い毛に覆われた獰猛な猟犬のようなモンスターだ。
書物によると口から炎を吐くらしい。
以前、僕が仕掛けた罠にかかっており、気がつくと掘った穴に落ちて勝手に串刺しになっていた。
《鑑定》スキルにより食べられると判明したので、いつものライブ配信を通して調理し有難く召し上がってみた。
すると月渚に《嗅覚》の特性スキルを身に着け、炎系の
特に《嗅覚》は臭いであらゆる物を探知できる便利な能力だ。
さらに他の特性もあったが、既に習得したスキルばかりでノーカン扱いらしい。
そして素材として手に入れた棍棒とモンスターの油を《錬成》と《加工》を施し、松明を作ることに成功した。
棍棒はミノタウロスだけじゃなく、ゴブリンやオークなど二足系のモンスターが大概所持している。
ふと思ったが、これだけ暗いダンジョン内では木々は勿論のこと植物など育つわけがないし、奴らはどうやってこの手の武器を入手しているのか疑問だ。
きっと、どこかに地上に繋がるルートがあるに違いない。
(……でも結構探索したけど、それっぽいところはなかったんだよなぁ)
きっとこの拠点からもっと離れた場所か、あるいは別の階層があるのか。
(そろそろ、ここから離れるべきか……)
っと考えるが、最近一つ重要な問題を抱えていた。
「……フォロワー数が増えない」
最近のライブ配信は調理系や狩猟系がもっぱらだ。
月渚のおかげで視聴者さんは満足してくれているも、「なんかマンネリじゃね?」とか「飽きたわ」など好きなように言ってくる。
もともとそういう神様達だけどね。
まぁ某有名配信者達も、ジャンルにとらわれない幅広い内容数多く配信しているからな。
僕は膝の上に乗っかっている子猫の頭を優しく撫で顎の下を触る。
「よし、ネム! ついにお前の力を借りる時がきたぞ!」
「ミャア?」
次は癒し系の動物ライブ配信にチャレンジだ――。
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