第12話 使い魔ネム

【癒し注意】ウチの子猫かわいすぎてずっと見てられる件


:黒子猫ニャン♡

:めちゃかわいい

:モフモフふわふわ

:癒されます

:かわいすぎて悶絶級!

:うp主、策士だわ



 思ったとおり、動物系配信は大好評だ。

 ただネムの普段通りの様子を流しているだけで、フォロワーが爆上がりしている。

 


:ずっと見てられる

:ぶぎゃーっ!

:ルナたんの膝上羨ましい!

:ワイも子猫になって、ルナたんに甘えたい

:ペロペロペロペロ

:ペロペロペロペロ

:下品コメやめれ!

:もうね、たまんないのよ

:マジでうp主最高! 負けた昇天!


【スパチャ】

・《使役》スキルを獲得しました



 使役? 何それ?

 えっと……主従関係のある魔物(ペット)を擬人化させ使い魔として相棒にするスキルのようだ。

 主従関係のペットってネムのことか?

 とりあえず試しに使ってみるか。


「《使役》!」


 僕がスキルを発動した瞬間、ネムの小さな体が眩い光輝に包まれる。

 光は大きく膨れ上がると、すぐに萎み消失した。

 するといつの間にか、月渚の膝上に長い黒髪の女の子がちょこんと座っている。


「ミャア?」


 女の子はネムのような声を上げ、ちょこんと首を傾げて見せる。

 見た目は12歳くらいの幼さを残した可愛らしい美少女。

 艶のある褐色の肌に黄金色の大きな瞳、大切な部分はモフモフとした黒下着のような衣装で隠されている。

 最も驚いたのは、頭部の猫耳と長い尻尾だ。


 月渚は突然現れた女の子に目を丸くした。


「お、お兄ちゃん、この子って……」


「ああ……ひょっとして、ネムか?」


「そうだミャ、ご主人様ぁ」


 可愛らしい甲高い声でニコっと笑う、女の子。

 その様子から本当に黒モフの子猫だったネムのようだ。



:やばい、かわいい

:また可愛くなった

:擬人化、乙

:いいね

:美少女増えた

:うらやましいぞ、兄キ



 子猫が女の子に変化したというのに、まったく驚いた様子を見せない視聴者さん。

 寧ろウェルカムだ。流石は神様って感じ。

 どれ、今のネムを《鑑定》で見てみるか。

 


【鑑定結果】

名前:ネム

レベル:3

職業:使い魔

体力:100

魔力:100

攻撃:50

防御:30

命中:30

魔攻:50

魔防:80

敏捷:250

固有スキル:《暗視》《鉤爪》《索敵》《聴覚》《跳躍》《軽快》《隠密》



 ほう……レベル3にしては能力値が高いぞ。特に敏捷が三桁だ。

 少なくても平均値:20だったクラスメイト達より有能だと思う。

 身についている固有スキルも猫っぽい能力が多く、全体的にみると隠密行動が得意な感じがする。


 これなら文句なく即戦力だ。

 けど、見た目は小さい女の子だけに戸惑ってしまうな。


「ネム、元の子猫の姿には戻れるの?」


「ご主人様のご命令であればいつでも戻れるミャ」


「そうか、それは便利だな。あと知っていると思うけど、僕達はこのダンジョンから出るために色々なモンスターと戦わなければならない。ネムはどうしたい?」


「勿論、ネムもご主人様と一緒に戦うミャ! ネムはずっと一緒ミャ!」


「……わかった。これからもよろしくな、ネム」


 僕はネムの頭を優しく撫でる。

 彼女は猫耳を下げて、「ミャア」と嬉しそうに微笑んだ。


「ネムかわいい……なんだか妹ができたみたいで嬉しいね、お兄ちゃん」


 月渚も満更じゃなさそうだ。

 もう一人の妹か。なんだかテンションが上がってくる。

 こうしてネムがペットから仲間になった。

 今後は僕が獲得した不要なスキルも《譲渡》できるので、月渚と共に大切に育てていこう。



【実況ライブ】妹達と狩りに出てみた。


 というわけで、この三人で狩りに出てみた。

 

 ネムには僕が以前から使用しているミノタウロスの角と戦斧アックスを錬成し作った2本の短剣ダガーこと、『雷撃ダガー』を持たせている。

 彼女の素早い動きと隠密に特化した能力なら使いこなすことができるだろう。


 月渚には弓矢を主力武器として装備している。

 モンスターの撓る骨と獣毛を《再生》《錬成》《加工》と三スキルをコンボして作ってみた試作品だ。

 一応そこそこ殺傷能力はあるが、僕とは相性が悪く的に当てることは難しかった。

 また月渚は火炎系と電撃系の魔法が使えるので、併用することでより強力な武器となる。


 僕はもう一つの戦斧アックスを加工して両手剣を作り装備しているが、どうもしっくりこない。

 電撃ダガー同様の効果はある強力な剣なんだけどね。

 そもそも配信者ライバーって直接戦闘で、どう戦うのかピンとしないところもある。



「皆さん、あれをご覧ください……大きな洞穴に土蜘蛛こと『タランチュラ』の巣があります。今から三人で突撃したいと思います」



:なんか突撃取材のノリw

:兄、草

:告知見てからずっと楽しみだった!

:こんばんわー

:パチパチパチ

:兄キのこなれた感w

:乙です!



 表示させたチャット・ウィンドウからコメントが流れている。

 カメラのような役割を持っているのか、こうして表示させているだけで実況ライブが成立しているようだ。

 おかげでフォロワーは着々と増え続けている。

 それは僕にとっての経験値でありレベルにもろ影響するから、ノリノリで頑張らないといけない。


 見つけた空洞の中で、タランチュラは《妖糸》という鋼糸を張り巡らせ巣を作っていた。

 その姿は名前のとおり巨大蜘蛛であり、既に六つの赤い目で僕達を捉えている。

 地面にはゴブリンやコボルトといった低級モンスターの残骸が転がっていた。


 《鑑定》では土属性であり、《石槍》という魔法が使えるとのこと。

 特性では《猛毒》を持ち、拘束した相手を毒殺し内部を溶かした上で溶液を吸い取る習性を持つ凶悪なモンスターだ。

 一方で弱点は火炎と雷撃なので、月渚にとって相性が良い相手でもある。


「それじゃ、兄から行っきまーす! 《神速》ッ!」


 僕は間髪入れず間合いを詰め、まずは糸を断ち切ろうと斬撃を与える。

 硬質な鋼の糸だけに思いの外骨が折れてしまう。


 タランチュラは僕に標的を定め、《石槍》を発動する。

 天井から岩で構成された無数の槍が触手の如く、僕に迫ろうと伸ばしてきた。


「けど僕は囮なんですねぇ――今だ、ネム!」


 僕の合図と共に、ネムはタランチュラの背後から現れた。

 《隠密》スキルを駆使し、既に僕が両断した鉄糸を掻い潜っていたのだ。


「くらえ、ミャア!」


 ネムは短剣ダガーで蜘蛛の頭部を何度も斬りつける。

 電撃効果もあり、タランチュラは悶絶しながら体を硬直させ動けなくなった。


「よし、月渚! いっきに仕留めるぞ!」


「うん! 《火炎》ッ!」


 入口前で弓を構えていた月渚が矢を射る。

 矢は炎に包まれ、そのままタランチュラの体に突き刺さった。



 ピギィィィアアァァァァァ――!



 タランチュラの全身が炎に包まれ悲鳴らしき声を上げる。

 ネムは直前に《軽快》を駆使して、既に慣れており気がつけば僕の背後にいた。


「これで最後だ!」


 僕は剣先を突き立て、タランチュラは絶命した。



:最後の一撃いるか?

:もう勝負ついてたじゃん

:兄、地味だけに活躍したい説w

:ルナたん、ネムたんのコンビいいわ

:やったね!

:おめでとー、お祝いです!

:いいチームワークだった、どうぞ


【スパチャ】

・《会心撃》を獲得しました

・《統率》を獲得しました



 やったぁ! 新しいスキルだ。

 《会心撃》は任意でクリティカルヒットを与える能力で、《統率》はチーム全員の統率力を向上させ能力値を10%ほど向上させるスキルらしい。


 ネムの癒し動画のおかげもあってか、フォロワー数が15000人となる。

 手厳しい指摘もありながら、僕はレベル15になっていた。

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