第5話「狙われたミューズ」
日が昇り夜が明けた頃、オビトは病室のベッドの上で目を覚ました。
「ん……ん?……ここは?」
「気が付いたか……」
大谷が目を覚ましたオビトに歩み寄って来る。
「大谷さん?あれ?ここは?」
「病院だ……」
「そっか……俺……毒にやられて……」
「ああ、ずっと寝てたぞ。まぁ毒に関しては美桜ちゃんが抜いてくれたしこの病院でしっかり中和剤を投与してくれたからもう大丈夫だ」
「そっか……助かった」
「先生を呼んでくるからちょっと待ってろ」
そう言って大谷は病室を出て行く。
大谷が廊下へ出るとセイラと美桜が待合室で眠っていた。
「……おいおい、2人共起きろ、風邪引くぞ?」
「ん〜?あっ、大谷さん……どうしたの?」
セイラはまだ寝ぼけていた。
「オビト君が目を覚ましたぞ」
「本当!」
セイラの声に美桜も目を覚ます。
「ん〜?何?」
「セイラちゃん、病院では静かにな……」
「あっ……ごめんなさい」
「俺は先生を呼んでくるからオビト君の様子を見に行ってやりなさい」
「はい」
大谷は先生を呼びに、セイラと美桜は病室に入りオビトの様子を見に行く。
「オビト、具合いどう?」
「ああ、大丈夫だ。美桜ちゃん……だったな。助けてくれてありがとうな」
「いえ……無事で良かったです。あっ、私雪菜ちゃんに連絡してくるね」
「うん」
美桜は病室を出て行く。
そこに大谷が戻って来る。
「美桜ちゃん、どうした?」
「あっ、大谷さん……ちょっと雪菜ちゃんにも連絡しておこうと思って」
「そうか……なら彼女に伝えておいてくれ。小十郎君は我々が必ず見つけ出す。だから心配しないで家で待っていてくれと」
「分かりました」
そして美桜は雪菜に電話を掛けに行く。
「へ〜!あのオビトって人目を覚ましたんだ〜良かったじゃん!」
「うん、それでね……大谷さんが雪菜ちゃんに伝えてって」
「何を?」
「小十郎さんは自分達が必ず見つけ出すから心配しないで家で待っててって」
「そっか……まぁあの人達信じても良さそうだもんね。分かった……それで美桜ちゃんはどうするの?」
「私は……戦うよ。小十郎さんもお兄ちゃんも取り戻す為に」
「分かった。待ってるから皆で必ず帰って来て。皆が帰って来たらどっか遊びに行こうよ!」
「そうだね。うん、そうしよう!」
電話を終え美桜が病室に戻るとオビトは準備をしていた。
「あれ?何やってるの?」
「ああ、先生がもう大丈夫だろうと判断してくれたからな。我々も動き出そうと思ってな」
「そんな!オビトさん病み上がりなのに……」
「大丈夫。毒はもうすっかり消えたし後はセイラの回復魔法で何とかなる」
「それに早く小十郎さんと美桜ちゃんのお兄さんを見つけなきゃでしょ?善は急げって言うし」
「と言う訳だ。美桜ちゃんも準備をしてくれ。厳しい戦いになるぞ」
「……分かりました。橘流くノ一光姫……この戦いにお供させて頂きます!」
そしていよいよスカー達が動き出した。
次元の扉を開きビート達の世界にやって来た。
「この世界に居るのか……不老不死の薬を持った奴が……」
「ええ……確かミューズとか言う女ですぜ……」
「奏での戦士団……この世界には多くのヒーローが居る様だな……」
そこにダークブライトが現れる。
「よお……来たかダークブライト……お前の役目は分かってるよな?」
「この世界のヒーローを抹殺する事……」
「そうだ……我々の作戦を邪魔する厄介なヒーロー共を皆殺しにしろ」
「了解……」
次元の扉が開いた事を察知した茂達奏での戦士団と小十郎は現場に向かっていた。
「遂に来やがったな……」
「急げ直ぐ近くだ!!」
茂、彰、裕二、琴音、新庄、小十郎が到着。
「スカー!見つけたでござる!!」
「ん?星影……それに音楽の戦士共か……」
「ダークブライト、こいつらは任せたぜ」
ダークブライトは頷くと茂達の前に立ちはだかる。
「くっ……来人殿……必ず取り戻すでござる!!」
小十郎は『星影丸』を構える。
「よし、俺達も行くぞ!!」
音楽の戦士達はそれぞれの楽器を呼ぶ。
「星影−変化」
小十郎は星影に『変身』
音楽の戦士達は楽器を奏で『変身』
ビート、ボイス、ブリッランテ、フォルテ、フェローチェ、星影が並び立つ。
「行くぞ……」
ダークブライトがヒーロー達に一気に襲い掛かる。
「フンッ……行くぞブラウ」
「ヘイ!」
「くっ……あいつら……」
「おい、ビート、ボイス、奴らを止めろ!!」
フェローチェが2人に指示を出す。
「はい!」
ビートとボイスはスカーとブラウの前に立ち塞がる。
「チッ……邪魔だ!!」
ブラウはトリケラトプス怪人に変身。
ビートとボイスに突進。
「うわっ!?」
「ぐあっ!?」
「兄貴、先に行って下さい」
「フンッ……任せたぞ……」
スカーは先に向う。
「行かせるか!!」
ビートがスカーに飛び掛かろうとするがトリケラトプス怪人に邪魔をされる。
「ああ……クソッ!?」
そして、ダークブライトに苦戦する星影……。
「くぅぅぅ〜戦い難いでござる〜……」
「だったらどいてろ!!」
フェローチェがダークブライトに攻撃。
「ぐっ……」
「待ってくだされ!!奴はスカー達に操られてるだけでござる!!」
「だからってこのまま殺られろってのか?」
「そうは言ってござらん!ダークブライトの心を取り戻し、正気に戻すまで倒さんでくれと言っとるんじゃ!!」
「分かってるよ……奴だってそう簡単には倒れないだろ」
「しかし……」
その頃、スカーは音曽根楽器店へやって来た。
「ここか……」
スカーは店の中に入る。
「いらっしゃい」
「じじぃ、奏での戦士団の本部に案内しろ」
そう言ってスカーは音曽根に拳銃を突きだす。
「なっ!?お前は一体……」
「ミューズに会わせろ」
「くっ……」
音曽根はカウンターの下に設置された敵襲を知らせる警報のボタンを押そうとする。
「おっと!下手な真似するなよ?」
「くっ……」
「ミューズの元へ案内しろ」
「狙いはミューズさんか……」
「そうだ……お前に用は無い。従わなければ殺す」
「くっ……わ、分かった……」
スカーは音曽根に案内させ、奏での戦士団本部へと侵入する。
本部への入口まで来るとスカーは音曽根を気絶させた。「ぐはっ!?」
「ここか……」
スカーは本部に侵入。
「まさか……こんなボロい楽器屋の地下にこんな基地があるとはな……」
「誰ですか?」
ミューズが出てくる。
「お前がミューズか?俺の目的はただ1つ。不老不死の薬を渡せ」
「不老不死の薬!?何故それを!?」
「薬さえ手に入れば命は助けてやる……お前も……扉の向こうで寝ているじじいもな」
「!?まさか音曽根さんまで……」
「どっちが懸命な判断かは明らかだよな?」
「不老不死の薬……そんな物を手に入れて何をするつもりですか?」
「さぁな。俺が必要なんじゃねぇ。俺は手に入れる様に頼まれただけだ」
「……不老不死の薬は人間が手にして良い物ではありません。だから簡単に渡す事は出来ません。分かったら直ぐに帰りなさい」
「やれやれ……随分と言うじゃねぇか……状況分かってんのか?」
「何と言われようがあの薬を渡す訳には行きません」
「はぁ……しゃーねぇな……ならお前もじじいも殺してゆっくり探すだけだ!」
スカーはティラノサウルス怪人に変身した。
「死んで後悔しろ、ミューズ!!」
ティラノサウルス怪人がミューズに襲い掛かる。
「きゃっ!?」
ミューズは必死にティラノサウルス怪人からの攻撃をかわす。
「チッ……ちょこまかと……さっさと死んで楽になれ!!」
その頃、ビート達はトリケラトプス怪人に苦戦。
「くっ……まずいぞ……早くしないとミューズさん達が……」
ボイスが言うと……。
「分かってるって……だがコイツ……」
「こうなったらお前だけでも本部に戻れ」
「え?」
「俺が時間を稼いでやる。お前は俺達の事は気にせず本部に向かって走り続けろ!」
「お前……」
ボイスはトリケラトプス怪人に正面から勝負を仕掛ける。
「ぐっ……邪魔だ!!」
「お前の相手は俺だ!!」
「ボイス……」
「早く行け!!ミューズさんを……頼んだぞ!!」
「くっ……分かった!」
ビートは奏での戦士団本部に向かって走り出す。
その頃、本部ではミューズを助けに王堂が現れた。
「ミューズさん!お待たせしました!!」
「グランディオーソ……何処に行ってたんですか?」
「また空に空間の歪みが出て……様子を見に行ってたんです」
「こんな時にまた何か!?」
「ええ……でも安心して下さい。今度現れたのは味方です!」
「え?」
王堂が連れて来たのはオビト、セイラ、美桜、大谷だった。
「スカー!!これ以上この世界でお前達の好きにはさせないぜ!!」
続く……。
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