第四話 サラ

ユーリが記憶を取り戻してからもう一ヶ月が経った。

最初の週から日常はあまり変わってない、数日に一度は魔力操作鍛錬を諦めてクララの部屋に遊びに行く事を除いて。

それでも【炎召喚】のコツをもう掴めたんだからより大きな規模なのを使いたかった、自分よりでかいや周囲の物を燃やしてしまう程な高熱な炎とか。勿論今までのように自分の部屋でそれは出来ないのでどこかそれが出来る屋外な場所を探す必要があった、取り敢えずこっそりと。

その日は日曜日、日曜日はユーリの家族はいつも皆で昼食を撮る風習がある。

雑談や食事楽しんでいたらヴィクトールはそう切り出した、


「ユーリ、例の物なんだが、明日では準備が整っている」


茶を濁しながら言ったのはそこにクララがいたからけどそれも虚しく、それを聞いたら彼女の眉がピクッと反応した。ユーリは何も気づいていなかったが。


「本当ですか?もっと時間が掛かるかと思っていました。どうしたら良いですか」

「朝食後私の書斎に来なさい」

「分かりました」


顔がニヤけるのを堪えながらユーリは新たなメイドを初めて会うのを楽しみにしていたけど、それに失敗して唇はわずかに上向いているのをクララは見逃さなかった。


(専属メイドとか付けられたのは私達を引き離すためにお父様がした事だと思っていましたけどユーリ君は凄く楽しみにしているじゃないですか、私がここにいますのに。。。)


ユーリは新たなメイドを会う事に頭一杯で、クララは自分を睨み付けている事も気付かなかった。。。



◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈



翌日朝食後、ユーリが言われたように父の書斎を訪ねていた。


コンコン


「お父様、ユーリです」

「入って良い」


ユーリはドアを開き、中に入ったら父は相変わらず机に座っていたけど、今回はその横で一人なメイド服少女が立っていた。

少女はショートな濃紺色の髪とクロム透輝石のような浅緑色の目があった。


「この娘は君の専属メイドを務めてもらう。自己紹介をしなさい」


彼女の方を向きながらヴィクトールは言った。


「お初目にかかります、ご主人様、サラと申します」


少女はそう言ってお辞儀をした。子供にしてはかなり洗練された動きでした。


「初めまして、サラ。ユーリです。」


(小説等ではこの時主人公が謙虚とそんな大げさなご主人様ではなく、名前で呼んでくださいって言うところだが、ご主人様と呼ばれるとなんか気分が良いからこのままで。へへへ)


「サラはこれからお前の世話をする。しかし、彼女はまだ教育中だから常にお前と一緒にいる事はできない。」

「分かりました。」

「じゃあ下がって良い」

「了解。行きましょう、サラ」

「はい、ご主人様」


その後、ユーリはサラを自分の部屋に連れてきて、ソファーに座るように示した。


「仕事中に座るなんてできません!」

「まあ、今回は僕がそうするように言っているから大丈夫です」


彼女はまだ躊躇っていたのでユーリは向かいの席に着席し、更に彼女を促して。


「ほら、座ってください」


そこで彼女は遂に観念し、言われたように席についた。


(きっとお父様はメイドを厳選したけど、貴族として自分のメイドくらい自分で軽面接をした方がいいでしょうね)


「これからサラは俺の下で働く訳だが、その前にちょっとした会談をしよう。お父様曰くサラはまだ教育中と言う訳だが、具体的今は何ができる?」


ユーリがそれを聞いたらサラの体に緊張が走った。彼女がブラボ家の息子の専属メイドに選抜されたと聞いて両親凄く喜んでいた。彼女もその期待に応えたかったから最初から無能の烙印を押されては堪らない。

それでも、主に嘘を付く訳にもいかない。


「給仕、したり、着替える、のを、手伝ったり、お使い、したりできます。。。」


小さくて躊躇いがちな声で彼女は答えた。


「そうか。今はなにか学んでいることがあるか」

「洗濯。。。」

「何歳?」

「九歳です」


(へえ。。。結構出来るじゃないか。九歳にしては多分上出来だろう。ラッキー)


その時彼は小さな笑みを浮かべて言った、


「よし。予想以上でした。これからよろしくお願いします」


それを聞いて彼女はやっと肩の力が抜けた。


「はい!こちらこそよろしくお願いいたします」


と答えた。


「因みに、読み書きはできますか」


彼女は頭を振った。


「う〜〜〜ん。。。それは困りますね。。。」

「ごめんなさい。。。」


サラは俯きながら謝った。折角順調だと思ってたのに。


「あっ、いや、気にしないで」


折角メイドを手に入れたユーリは彼女を右腕にしたかったが読み書きはできないはいただけない。


「あっ、そうでした。もう屋敷を案内されましたか」

「台所や、食堂、客間、重要な所なら。。。」

「そうですか。じゃあ付いて来てください、全部案内してあげます」


ここ一ヶ月ユーリは毎日のように屋敷を歩き回っていたお陰でもう敷地を手に取るように知っていた。その後彼は屋敷内だけじゃなく外まで彼女を案内して行った。

そして帰りにユーリ達は廊下でクララと遭遇した。彼女は比較的大きな本を抱っこして歩いていた。


「お姉様!」

「ユーリ⸻あら、一緒にいるその娘は?」


クララはユーリの声を聞いてニコッと振り向いたけどサラを見た瞬間その笑顔が崩れた。


「はい、紹介します。こちらは新しく僕の専属に付いたメイド、サラです。サラ、こちらは僕の姉、クララです。」

「お初目にかかります、クララ様。サラと申します」


ユーリの時と同じようにサラが自己紹介をしてお辞儀した。


「あら、そうですか。私の大切な弟ですから彼に良くしてくださいね」


言っている事は結構普通のだが、ここに来てユーリは遂に空気が変に緊迫していた事に気付き、話題を逸らした方がいい気がした。


「お姉様!それはなんですか」


クララは抱えている本を示しながら聞いた。


「あっ、これですか。フフン〜、これは私の魔導書です!」


彼女は少し誇らしげに答えた。


「魔導書?ですか」


「ええ、魔法を使うのに必要な物ですよ。中の絵の事を一生懸命考える事で魔法が使えます」


結構大雑把で短絡的な説明ではあるが必ずしも間違っている訳ではない。ただ、ユーリは魔導書がなくても魔法を使っていたのでクララが必要だと言っていたのはどうしてか不思議に思っていた。


「どうして魔導書が必要なのですか。絵の事を考えるだけいいんじゃないですか」

「とても複雑な絵ですから。そして詳細は何一つ間違ってはいけないので絵を見て参考にしなければなりません」

「そうなんですか。。。見て良いですか」

「あのね、ユーリ。魔導書とは魔道士の命のような物ですから人の魔導書を見てもらうように頼むのは駄目ですからね」


彼女は彼を諌めるように言った。


「そうだったんですか。ごめんなさいお姉様、知りませんでした」

「今のは良いですけど気を付けてね。ほら来て、ヨシヨシ」


クララはユーリに近付いて来るように言って頭を撫でた。最も、十歳児に頭を撫でられる事にユーリは複雑な気持ちになった。


「けどそれなら僕も魔導書が欲しいです!」


クララは困ったような顔をした。


「まあ。。。お父様に頼んでみるしかありませんが、誰でもが魔法を使える訳じゃありませんよ」

「じゃあ頼んでみます、ありがとう御座います、お姉様!行きましょう、サラ」


そう宣言し、ユーリは嬉々として父に魔導書を頼みに向かった。


「そう言えば、誰でもが魔法を使える訳じゃないようですが、サラはどうですか」

「分かりません。試した事がありませんから。。。」

「何?!勿体ない!使えるのに今まで使っていなかったらどうする!」


ユーリにとって、魔法があるのに使ってみないなんてとんでもない。


「魔法は貴族、軍や僧侶の力です。私達普通な人にはあまり関係がございません」

「そういう物なんですか。じゃあ、サラが使えるか試してみましょう、使えるならサラのための魔導書も頼んでみます」



そしてそれにて、ユーリは専属メイドのサラと初めて会った訳です。



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お読みくださりありがとうございます。

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