第三話 メイド
翌日ユーリは父の書斎を訪ねていた。
コンコン
「お父様、ユーリです」
「ユーリ?入って良い」
ユーリはドアを開いて書斎には一つの大窓があって日光が部屋を照らしていた。本棚が壁を覆い、奥の方に大きな木製の机があってヴィクトールはそこに座っていた。
入って直ぐに本題から始めた。
「お父様、お願いしたい事があります」
「お願い?なんだ?」
「お姉さまはなにかと忙しくて僕とあまり遊べないので年の近い僕の相手をするメイドが欲しいです」
実を言うと前世ではユーリはあまり女子の扱いが上手とは言えなかったので初期から側に女子を置く事によってそれを改善しようとしていた。それに今の彼は貴族、自分の世話をするメイドがいるってなんだか素晴らしい聞こえがあって、一石二鳥。
「う〜む、確かにクララはいつもお前と遊べる訳じゃないが相手が欲しいなら年の近い男の子が用意できるぞ、どうだ?」
「メイドがいいです」
「う〜〜〜む。。。」
ヴィクトールはじっと息子を見て何を考えているか窺おうとした。
暫く二人はただ無言で見つめ合った後ヴィクトールは折れた。
「その年なメイドは無理だぞ?」
「二、三年上でもいいです」
「じゃあ八、九歳か。。。それならなんとかなるだろう。それでも多分メイドとしてはあまり期待できないぞ」
「それでいいです」
「じゃあ用意してやる。ただし代わりにクララを義務に集中させてもらう、それと用意できるまでは少し時間が掛かるかもしれん」
「分かりました!ありがとうございます、お父様」
ゆーりが満面の笑みで答えた。
実際のところユーリとクララはかなり仲が良い、それ自体は悪い事ではないがユーリは頻繁に彼女の注目を求め、そして彼女はよくそれを聞き入れる、時々は義務の邪魔になっても。ブラボ家の跡取りとして子供でも彼女はかなり忙しいだから最近ヴィクトールはその件に結構悩まされていたけど、誰か他にユーリの相手をする人がいたら万全解決。
どうして彼は急にメイドを欲しくなってきたかは知らなかったが、ただ一晩中一人で森に過ごしてクララは自分が求める注目を与えられないと気付き、代わりが欲しくなっただと推し、あまり深く考えなかった。
「ちなみに、お父様」
「なんだ?」
「僕を襲った人達はどうなりましたかな〜と」
それを聞いたヴィクトールは真顔に変わって腕を組んだ。
「何人かは捕獲できたが、それは私がなんとかする、お前が気にすることじゃない」
口調からして、ユーリが深く突っ込まない方がいいだと伺えたので彼は気にしないことにした。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
その後ユーリは自分の部屋に戻ってベッドに飛び入った。
「それでは改めて状況を確認しよう。魔法の件は現在進行中、コツを掴むにはもっと練習が必要が。また、魔力量を増やすために魔力を尽くさないとと言うのは鉄板だから取り敢えずその方向で」
「そして、まだ先の事だが、女の子の扱いが下手くそ件についてはお父様に頼んでメイドを付けてもらえるからそれも解決進行中として良いだろう。まあ、女の子と言っても子供だから対処はできる、多分」
「それと。。。あっ、そうだ。俺が跡取りじゃないのは残念だが使える現代知識がいっぱいいるから多分金に関しては大丈夫だろう」
「そして。。。はい、これで全部。準備はすべて整っている。折角ファンタジー世界の新人生が手に入れたから全力で楽しもう!」
それからユーリは第二の人生を謳歌し始めた。
朝はいつも昨晩の魔法鍛錬によって疲れたからただ屋敷中を彷徨い、建物の設計を頭に入っていた。午後は図書室で本を読んで勉強していた、大体は歴史と地理の本を。そして夜は魔力が尽きるまで魔法鍛錬を行っていた、それ故翌朝はまた疲れていた。
歴史書曰く、ユーリが住む国はフォレンシア帝国という。最初は小さな部族に過ぎず、ある時から族長は武力に力を入れ周囲の部族を制服し始めた、その後数世代を通って族長の子孫を王家として大帝国が築かれた。
地理書曰く、帝都は帝国の中心辺りに位置する、そしてブラボ領は帝都と帝国の北西国境の中途ぐらいに位置する。東国境には巨大な森が広がり、南西には大砂漠がある。
そのようにユーリは一週間の間一日中で忙しく動き回っていた、そこで遂にクララは我慢できず夕食後にユーリの部屋を訪ねてきた。
彼が魔法鍛錬の準備をしていた時、ドアにノックの音が聞こえた。
コンコン
ドアを開いたらそこには神妙な面持ちでクララが佇んでいた。
「ユーリ君、少し良い?」
「お姉様?はい勿論です、どうぞ」
ユーリは彼女を中へ促し二人はベッドに座ったいった。暫くしてクララはいつまで経っても何も言わずただ俯くっていたのを我慢できず彼はソットと彼女を促した。
「それで、何か話したいことはありましたか。」
それに対して彼女はただ縮んで決して彼と目を合わせないようにした。いつもは自信満々と活気に満ち溢れているな彼女にしては珍しくてユーリは驚いていた。
「怒っていますか」
「えっ?いいえ、どうしてそう思いますか」
「本当?あの時私がユーリ君を探しに行かなかったことに怒っていない?以前はほぼ毎日のように私の所に遊びに来ていたのにあの日からは一度もない。」
「すみません、ただ最近はちょっと忙しくて」
(駄目だな、俺の悪い癖がまた出てきてしまった。なにか面白い事を見付けたらそれにしか集中しなくて周りの人を脇に置いてしまう。もっと気を付けなきゃまたあの時と同じになってしまう。)
「それにお父様はあまり邪魔しないようにと。。。」
「お父様がそんな事を?」
眉間にシワを寄せながらクララは問い返してきた。
「はい。ですので最近は大体一人で過ごしてきました」
(まあ、それは嘘だけど、体裁は保たないとね)
「そうか。じゃあユーリ君は私の事を嫌いになったってわけじゃない?」
「そんな訳ありません」
「なら良かった」
そして彼女は涙目で彼を抱きしめた。
「ユーリ君は森に迷っていた時なにも出来なかった私をもう要らないと嫌いになっちゃたと。。。」
(そんなに思い詰めていたのか。可哀想に、本当にもっと気を付けなきゃ。)
「ごめんなさい」
「もうそんな事しないでね。遊びに来るのを忘れないでください」
「分かりました。けどお父様に邪魔するなと言われたのでたまにしか行けない。」
「むう〜。分かった」
不満そうにしていたけど条件を受け入れた。これは仕方なかった、彼は父に約束していたし。
その後寝る時まで二人はもうちょっと雑談してからクララは自分の部屋へ戻って行った。
その日は魔法鍛錬を諦め、ユーリは直ぐ魔力を尽きて寝付いていった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
翌日クララは父の書斎を訪ねていた。ヴィクトールは彼女が部屋に入った時即でちょっと怒っていた事に気付いた。
「どうした、クララ?」
「お父様、どうしてユーリにあんな事を言ったんですか」
「なんの事?」
「クララの邪魔をするな、と」
それを聞いたらヴィクトールの眉はピクっと動いた。
「それは、お前は忙しいから、ずっと付き纏われるのは迷惑だろう」
「迷惑じゃないです!確かに私は忙しいけど、時々息抜きも必要です!そしてユーリと遊ぶのは丁度良かったです!」
「時々と言っているけど彼はいつもお前を付き纏っていただろう」
「それでもです!」
「。。。今更だ。彼もそろそろ新たな相手がいるし、お前をそんなに構ってられなくなるだろう」
「。。。それはどういう意味ですか」
それで何を言い漏らしたか気付いたときヴィクトールは「しまった!」と言う顔になった。
「お父様、新たな相手ってどういう事ですか」
彼女はヴィクトールに迫ってきて机に両手をついて前に乗り出した。
そしてヴィクトールはため息をついて白状した。
「メイドだ。ユーリには専属メイドが付いてもらう」
クララは目を細めながら言った。
「そうですか。分かりました。失礼します。」
そして振り向き部屋を出ていった。
その後暫くはユーリが約束通り部屋に遊びに行くまで彼女は明らかに機嫌が悪かった。
そしてそれにて、ユーリに初めて専属メイドが付く事が決まった訳です。
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お読みくださりありがとうございます。
小説を書くのは初めてなので訂正や感想などコメント欄でお願いします。
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