第二話 【炎召喚】
「ん。。。ほわあぁぁ。。。知らない天井だ」
目覚めた直後ユーリがそう言ったけど、その欠伸はすぐにニヤリと笑みに変わった。
「ずっとそれ言ってみたかった。へへへ。。。」
彼はそういうテンプレを飽きる程見ているがそれを実際に経験するのは全然違う。
そして起きて早速ぐうーと腹の鳴き声が。腹が減った。
「多分もうそろそろ帰った方がいいな、家族は心配しているかもしれないし。。。問題はここの本はどうするかね。」
眉をひそめながらユーリは本棚の方を睨んでいた。全部読みたかったけど持ち帰りはマズイ気がした、それに数は多かったのでやりたくても持ち帰れなかった。
「まあまた今度戻って読み続けるしかないか。俺専用の図書館ってことで」
もっと読みたい衝動を抑えながら痛む腹を手で持ち、彼は部屋をあとにした。
洞窟を出た後彼は目を細めながら空を見上げた。洞窟の入口は空き地とかだった訳じゃないので樹冠によって太陽を直接で見えなかったが、あまり暑くなかったに関わらず青空は眩しくて少し目が痛かった。
「うーん。。。結構長い事地下にいたと思っていたが気のせいだったかな、まだ朝のようだし」
その後、ユーリは正面に目を向けた。幸いあまり密林じゃなく普通に木々の間を歩き通せた。
方向は分かっていたがあまり時間が経てないなら帰るのは危険だったかもしれない。
それでも、腹の鳴き声に抗えなくて彼は周囲を警戒しながら進んで行き、少ししてから自分を呼ぶ声を聞き始めた。
「ユーリ様ー!どこですかー!」
「ユーリ様!!答えてくださーい!」
彼が慎重に声元に近づき確認したら、父の兵士たちだったので即座に彼等のもとに駆け上がっていった。
「おいぃ!こっちです!」
「ユーリ様!よかった!」
兵士たちがユーリを見て露骨に安心した表情に変わった。
「家族のみんな様はユーリ様が森走り込んでと聞いて結構心配したんですよ?森は危険ですから」
「ごめん、ただ襲撃者から逃げようとしていただけです」
「まあ無事なら良かったです。ささ、家族様の所へ戻りましょう」
兵士たちはユーリを中に入れた後、護衛として馬車を囲ってブラボ家の屋敷まで連れてきた。
屋敷に到着して、ユーリが入口を通り抜けた瞬間。。。
「ユーリ君!」
「ユーリ!」
彼は二体の影に飛び付かれて抱きしめられた。
片方は十歳の白髪黒毛先の女の子。娘はクララ・エプシロン・ブラボと言ってユーリの姉でした。
もう片方は二十代後半の女性、こっちも白い髪。彼女はラウラ・エプシロン・ブラボと言ってユーリの母でした。
両方はユーリのような澄んだ青い目が涙いっぱいで彼を抱きしめながら文句を言い始めた。
「今までどこにいましたの?服もボロボロですし、怪我したの?もう、心配したんですから!」
「わたくしもユーリ君の探索に参加しようとしましたけどお父様があんたも迷子になったらどうすると許可を与えてくれませんでした」
「心配をかけてごめんなさい。襲撃者から逃げる事しか考えられなくて夜通しで森に隠れてしまいました」
帰り道でユーリは実は丸一日金庫室で過ごしてしまったのに気づいていた。
まだ自分を抱きしめている二人が落ち着くを待ちながらユーリの父が戻ってきた。
黒髪で長身の二十代後半男、名はヴィクトール・エプシロン・ブラボ。
「ユーリ!大丈夫か?」
「はい、お父様。心配をかけてごめんなさい」
「全くだ、森は危険だぞ。稀だが奥に行ったら魔獣と遭遇する事もある」
「そうですか?知りませんでした」
「分かったならもう森に行くなよ?」
「襲撃者から逃げようとしていただけです。。。」
「ともかく、一晩中をどうやって無事で過ごしてきた?」
「ただ隠し場所を見つかってずっとそこで待っていました」
「そうか。まあ無事なら良かった。風呂に入って休むが良い」
「えっと。。。実は。。。お腹が空きました」
「あっ、まあそれもそうか」
ヴィクトールは隅に控えていたメイドに向かって命令した。
「じゃあまずはなにか食べ物を用意してくれ」
「畏まりました、旦那様」
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
ユーリは食事を取って、風呂に入った後部屋に戻ってベッドに横たわった。
「よし、改めて状況を整理しよう」
「俺の名はユーリ・エプシロン・ブラボ、六歳。ブラボ家の一男で次子」
「母はラウラ、二十八歳。俺が知っている限り父の唯一の妻」
「父はヴィクトール、二十八歳。ブラボ家当主」
「そして俺の姉はクララ、十歳」
「伯爵家に生まれたけど、跡取り姉で俺じゃないんだな。。。」
「それなら自分で道を切り開くしかないか。まあゲームは自分でゼロからグラインドした方が楽しいし、問題ない」
それでユーリはベッドから起き上がってニヤリと笑みを浮かべた。
「さて、まず最初は魔法の事だな。へへへ。。。」
魔法概論曰く、
「魔法陣を視覚化して魔力を通す事で魔法が使える。魔法陣の構築論とかは抜きにする、知りたいなら自分で研究するが良い、最初から全部教えたら面白くないだろう?
とにかく、魔法陣は数種類があって、ここの本で載っているのは大体柔形の魔法陣、それは詠唱時で術者が自由に入力と出力をコントロール出来ると言う種類。と言う事は詠唱する前にしっかりとその魔法陣が何をするか分かって、結果をどうにしたいか視覚化するべき、じゃなかったら魔法陣が暴走する恐れがある。
柔形は詠唱時でどの程度の魔力を注ぐか選べるけど、視覚化された結果に必要の量が少なかったら魔法は発動しませんし、過度だったら余分が分散して消失される。」
魔法陣を視覚化する必要により、魔術師は大体魔導書を使って魔法陣を登録してそれを見ながら詠唱するけど、ユーリは魔導書がなかったし魔法陣を書き留める物もなかったので、ただ一つの初級魔法の魔法陣を暗記するしか出来なかった。魔法は大体強くなるにつれて魔法陣が複雑化する故、暗記も難しくなる。選ばれたのは【炎召喚】という魔法だ。
【炎召喚 ○】
魔法炎を召喚することができる。魔力によって燃え上がる故煙を出さない。場所や大きさ、温度は調整可。
「遂に時が来た」
ユーリは自分を激しく鼓動する心を落ち着かせようと深呼吸をし、そして念の為床に座禅の姿勢を取って目を閉じた。
初めてなので小さいのをにし、温度およそ600℃で蝋燭のそれのような大きさの炎を掌の上に想像した。
どうやって魔法陣に魔力を注げるか分からなかったのでただ記憶から魔法陣を視覚化し、自分からちょっとだけエネルギーが徐々に魔法陣へ流れ行くように想像した。自分からなにかが吸い出されるような感覚は覚えたけどそれ以外何も起こらなかった。
それならと今度は壊れた蛇口のように沢山のエネルギーを自分から魔法陣へと想像し、今度結果は違った。
突然熱を手に感じ、冬の間で火の上で手を温めようとしていた頃の遠い記憶が浮かび上がってきた。鼻の付け根に痛みを堪えながら目から涙が落ちろうのを我慢してた。
彼はまた深呼吸をし、目を開けたらそこにいた。掌の上に小さな赤い炎、炎だけが持つような魅惑的な美しさで踊っていた。
彼はそれを陶然と見ていたら徐々に実感が湧き始めた。
「やった。。。やったぞ!!」
炎を見た時感動のあまりでコントロールを失って魔法が消滅したがそれは些細な問題。
ユーリが飛び上がって万歳して祝って始めた。
長年に渡ってファンタジー小説を読みながら俺も魔法つかいたかったとずっと夢見ていたが遂にそれが叶った。感動しない筈がない。
暫く喜びに浸ってから、魔法を使いに少し疲れがでたと気付いたが関係ない、もう一度やりたかった。
それでベッドにもたれながら座り直して、再び集中した。
ユーリはもう一度自分から沢山のエネルギーが流れるように想像し、それは魔法陣に沢山の魔力を注ぐ意味すると仮定していた。
そしてまた炎を召喚したけど今度はそれを維持する事に集中した。最初は問題なかったが数秒後疲労感が襲ってきて魔法を維持するが難しくなり始めた。そして遂に維持できなくなって炎が消滅した。
ユーリはもうクタクタである程度回復するまで暫くただそのままぼーっと座っていた。
「MPを尽くすのはこんな感じかな。魔法を使うのはそんなに疲れるなら思っていたよりこの先苦戦しそう。」
その後ユーリはベッドに登って、そして幼い体なため眠気に抗えずすぐに眠りに就いてしまった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
数時間後。
「ふわああぁぁ。。。」
ユーリは目覚め、欠伸をしながら窓の外に目を向けた。太陽はもう頂点を過ぎ、そろそろ朱色の色合いに変わり始めるころだった。
「結構長いこと寝ていたようだな、まだ疲れが残っているけど。寝ても魔力は全回復しないか、残念」
その後ユーリは起き上がってその日の残りは記憶の再確認のため屋敷を彷徨って過ごして行った。
ある時は彼が姉に捕まって一時間以上抱っこされたり撫でられたりしてしまったが、それ以外は何も特筆すべき事件はなかった。
夜までに魔力は大分回復していたが今度は体が疲れた。それでも寝る前にもう一度魔法に挑戦することにした。
以前は【 炎召喚】の魔法陣に沢山の魔力を注いだが賢者様曰く魔力の余分はただ消失されるだけだから注ぎすぎて魔力を浪費していた可能性はある。そのため今回の目的は魔力の適量を見付けることだった。
そしてそれにて、ユーリは【炎召喚】という初めての魔法を練習し始めた訳です。
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お読みくださりありがとうございます。
小説を書くのは初めてなので訂正や感想などコメント欄でお願いします。
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