賢者の後継者

@Seve0wns

第一話 金庫室

「はじめまして、我が同胞よ、これを聞いているなら儂の金庫室を見つけたのであろう、ってことは儂と同様に異世界からきた人じゃ」

「何を言っておるんだか分からないかもしれんが聞いてほしい」

「儂は地球という異世界にある日本という国で育ち、ある日山でハイキングしていたら気づいた時はこの世界に迷い込んでいた。どうやってこうなったかは儂も知らん」

「最初はどうしたものかと思っていたが紆余曲折を経て、そして多くの人の助けもあって、自分で言ってはなんじゃががかなり上手くできたんだと思う。だから突然こんな世界に迷い込んでいても案ずるでない、きっと君もここで新しい、幸せな人生を送れるじゃろう」

「こちら側に来てはもう80年、その間は賢者と呼ばれるほどひたすらに魔法のことを研究してきたがこの人生の終わりが近づいてきて思った、儂のようにこの世界に迷い込んできた人は他にいるじゃろう。ならその人達を助けたい、だから最後のプロジェクトとしてこの金庫室を築き、魔法で記憶を探って異世界から人じゃったら開くようにした」

「見ての通り棚には多くの本がいる、儂が長年に渡って培った魔法の知識で埋められている。それらが君への贈り物。賢く使え」

「儂からは以上だ。これからは君次第、まあ大丈夫じゃろう。健闘を祈る」



◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈



ブラボ領都パラムの郊外で一台の馬車は数人の兵士に囲まれて道を進んでいた。

馬車の中には一人の少年が座っていた。黒髪で一つの白いメッシュがあって、瞳の色はタンザナイトのような清澄な青色。上品の服からして彼は貴族でした。

少年の名はユーリ・エプシロン・ブラボ、ブラボ伯爵家一男、それに関わらず実はブラボ家の世継ぎは姉のクララ・エプシロン・ブラボ。

ユーリはかなりの寂しがり屋で、その寂しさから気を紛らわせる数少ない方法の一つはこうして街を見て回る事。彼にとって変わる景色と人々の日々ぐらしを見るのは楽しかった。そして今日もまた彼はそれをしていた。

ユーリはいつものように窓外の景色を見ていたら突然馬車が停止して外から兵士の声が聞こえた。


「誰だ!?そこを退ーはっ!」

「敵襲!馬車を守れ!」


直後鉄と鉄のぶつかり音が聞こえるようになった。外で戦闘が始まった。

突然の出来事にユーリは硬直していた。

そして馬車の扉を蹴り開けられて全身黒装束を着ていた人が入ってきた。


「みぃつけた、貴様は一緒に来てもらう」


その人がユーリに向かって腕を伸ばしたら—


「させるか!ユーリ様から離れろ!」


兵士の一人が後ろからその腕を掴んで襲撃者を外に引きずり出した。

その後ユーリが開かれた扉から外を覗いたら、彼が見たのは数人の黒装束の人が兵士たちと戦っている光景。

馬車に侵入した人の話を聞く限り、彼らの目的はユーリ。それが分かったらユーリはパニックしかけていた。


(逃げなきゃ!)


みんな戦闘に集中して誰もが馬車を気にしていない、逃げるなら今がチャンス。

馬車は郊外にいたから道路の片側には森が広がって、ユーリが一直線森に向かって駆けた。

どこに向かっていたか分からなかったが逃げる一心でユーリが走り続けた。幸い幼くて精力的な体なのでかなりの距離を走れた。それでも小さなな子供が密林中で走っていたからそろろ息も切らして限界が近づいてきた。

背後を覗いて誰も追っていないか確認していたところでユーリが躓いて転んだ。

躓いたところが傾斜している洞窟の入口だったから彼が行き止まりまで転んで続けた。


「いててててっ」


幸い、大きな怪我はなかったが体中に擦り傷だらけだった。言わずもがな服がボロボロだった。

目に涙いっぱい貯めて痛みを堪えながら、彼がしばらくそのまま床に寝転んでいた。

少し落ち着いてから、ユーリが立ち上がって、まだ擦り傷の痛みで顔をしかめながら何にぶつかったか確認の為目を向けた。このような自然な洞窟にあって当然な土壁だったが一部だけが後ろの石壁を露わにしていた。

さすがの六歳子の好奇心、ユーリはあまり考えずにその露わな一部に手で触れた。

その時、そこからいくつかの青い線が点灯して広がっていった。

そして石と石のかすれ合う音とともに、石壁が開いて、それを覆っていた土壁が崩れ、その後ろにあった通路を表した。


「ぅおおっ!なに?!」


勿論ユーリがそれに驚いたけどまたも子供の好奇心に従って、あまり考えずにその道を辿っていった。

青い線が通路の壁にも広がっていて微かに光っていたのでユーリがどこに足を踏み入れているか辛うじて見えた。幸いユーリには暗闇が怖くなかった、そしてその状況で頭がいっぱいだったので擦り傷の痛みすらも忘れていた。

暫く通路を辿ったらその末に待っていたのは一つの部屋。その中が完全に暗かったにも関わらず彼は躊躇なく中に足を踏み入れた。

ユーリが見えなかったが床に魔法陣描かれていて彼がその中に入った瞬間、魔法陣が光上がった。


「ぅおおっ!今度は何だ?!」


最初は突然の光に驚いたユーリだが、直後酷い頭痛に襲われた。


「がああああぁぁぁっ!」


彼はすぐに頭を抱えて床に倒れた。

暫くして頭痛が引いたとき、彼は全部を思い出した。

前世のこと、オタクだったってこと、そして、己の死のこと。


「それにしても、飛行機が頭上に落ちて死ぬとか、とんだありえない死に方なんだ!」


そして少しの沈黙の後ユーリが笑い始めた。高笑いで。


「くく。。。クククッ。。。ハハハハハっ!」

「まさか!本当にそれが起こるとは!」

「俺の行動が無駄じゃなかった!」


ユーリは特殊なタイプのオタクだった。彼がいつも異世界のことで空想していた、それがまあ普通だが、彼が更にその先に行って、実際それに備えていた。

ガラスの作り方や、車両の仕込み等異世界で色々便利な知識を学んできた。

そしてその時がきた。遂にきた。実際にきた。

暫く喜びに浸っていたら突然彼の頭に声が響いた。

声の主が賢者であると地球出身だと主張してきた老人。声によって、魔法陣に入ったあと点灯した明かりで見えるようになった部屋の壁を覆っていた棚にある本は全部魔法について書かれていてそして全部ユーリに与えられた。


「これはこれは、素晴らしいじゃないか。っていうか、異世界に来たら魔法を使うのは欠かせないだろう?」

「まあ、突然この世界に迷い込んだのではなく、転生してきた訳だけど。」


そしてユーリはニヤリと笑った。


「まあ、贈り物ならありがたく使わせてもらうぞ。ありがとうございました賢者様」


それで少し見回してから魔法概論という本を取って読みはじめた。

そして本が面白過ぎて寝落ちするまで読み続けた。


そしてそれにて、ユーリは森迷い込みながら賢者の隠された金庫室を見つけた訳です。


====================================


お読みくださりありがとうございます。

小説を書くのは初めてなので訂正や感想などコメント欄でお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る