18
学園の近くに演習場や実験、観察などの場所を兼ねている森がある。
そこの森は入りの部分は比較的木々の間隔が遠く日差しが良く照り付ける。奥のほうになるにつれてグラデーションがかかるように緑色が深くなってゆく。そんな場所だ。今いるのはちょうど木々が生え始める場所の境界だ。
鋭く刺さるような日差しの中、件の催しが行われた。
日差しの強烈さに反して外の気温はそれほど高くはなくむしろ上着を着ていないと少し寒く感じるほどである。その証拠に私を含め女の子は基本的に上着を着ているし、男の子たちも上着、少なくとももう一枚何かを羽織っている。また帯剣しているものはいないがおおよそ全員がそれぞれ何らかの魔法道具を持ってきている。
そうして周りを見ながら待っていると二人ほどの先生が出てきた。一人は少し見慣れた顔であるアリソンマドレーヌその人。ととなりにいるのは誰なんだ?マドレーヌ先生よりも身長が高いような気がする。170後半はあるだろうか?ちなみにこの世界の長さで表すとムーセルだったかな?まあ彼は少し高のだ。全体的にガタイがよくいかにも漢、という見た目をしている。きっちりと靴紐は結ばれていて明らかに片手で取り廻すようなサイズでなく両の手で振り回すようなサイズをしている大剣を携えている。
カンッ
剣の石突が地面に勢いよくぶつかり音が響く。特段ビックリするような轟音がしたわけでもなかった。しかし男の気迫から皆が意識をただ一手にのみ集中させた。彼はどんな口調でしゃべるのであろうか?
「歓談は一度そこまでだ。一旦話を聞き給え。」
もうすでにほぼすべてのものが意識を向けているとは思ったがそれよりも外見に反して以外にも理知的な口調というか、そのような雰囲気で話してきた。声の大きさは想像したような話し方のそれであったが、丁寧な印象を受ける。
「今回の授業の監督を受け持ったジャネライ・ウブルスだ。今回の活動について説明させてもらう。まずこの催しはこの学校の学徒全員が参加する伝統的な行事だ。内容の変化は多少あるがそれでも毎年入って一年のものに行われる。みなしっかりとやるように。」
少し間を置いた。他の者たちの顔や表情を読み取るかのように一瞬目を配らせた。猛禽類のように。
「内容としてはシンプルだ。皆にはグループを作ってもらいこの旗の形をした魔法道具を守ってもらいたい。」
その手の差すほうには大きめの旗が並んでいた。人が両の手を使い振り回すような少し大きめの旗だ。いたってシンプルなものだ。しいて言うのであれば先端に透明な水晶?の様なものがついている。エレーヌ先生がその魔法道具に手を伸ばし、そてしみんなに見せるように掲げた。
「この魔法道具はただの飾りではない。訓練用に出力や術式は抑えられているが魔法と魔力がセットされている。障壁を出す能力とランダムで一つ簡単な魔法がセットされている。またこの旗は魔法の触媒としても使用可能だ。」
もう一段階声を大きくしてこう言う。
「そしてこれが一番重要だ。この旗は魔力を感知すると変色する。言いたいことはわかるだろう。諸君にはこの旗を取り合ってもらいたい。逃げるもよし、どこかに拠点を作り、そこで守るもよし、どこかに隠して高見の見物をするのもいいだろう。時間内までに旗を守っている時間の長さ、そして他の旗を奪うこと、これらを競ってもらう。またここら一帯を取り囲むように結界が張られておりそこの中のことはおおよそのことは検知できる、つまりある程度は君たちの安否をこちらは知ることが出来る。しかしだ、あまりにも危険な行為や魔法は使用を控えるように。以上だ。検討を期待する。」
静寂が破られるまで少しの時間がかかった。その後に隣にいたアリソンマドレーヌ先生が声を発した。
「今から班分けを行う。今から呼ばれた者たちは前に出てきなさい。」
名前が淡々と呼ばれていく。そして一つの班が集まったところに先ほど説明があった魔法道具が一本渡されていく。
「自己紹介をすませたらすぐに作戦考えておくように。班ができてすこし時間が経ったら鐘を鳴らす。そうしたら定位置に移動してもらう。お互いの班が等間隔で配置される。そうしたら二回目の鐘を鳴らす、それが開始の合図だ。なお配置される場所はランダムのくじ引きで決めさせてもらう。」
▲
そうして班分け?の様なものが行われた。いわく本当は自由に組んでほしいが、今回は親睦会と平等性ということを考えての班分けをしたそうだ。本来は人材を集めるところを含めてその人の実力らしい。
少しすると私の名前が呼ばれた。こにいたのは三人。少し小柄な少女、そして男子二名だ。一人は前髪が少し長く少し灰色がかった髪色をしている。もう一人は赤みがかった髪色をした体格の良いのが見て取れる。こちらはの男子は前髪が短く切りそろえられており、横髪が剃られている。先に沈黙を破ったのは二人いる男子の内の後者のほうだ。
「手早く自己紹介を済ませるぞ。」
吐き捨てるように、それでいてどこか友好的にも捉えることのできる声色でその言葉は放たれた。
「フランシス・コレットだ。一応親父にいろいろ習わされからある程度のことはできるつもりだ。よろしく頼む。」
まだ少し空気が固く少し間が空いた。ここは私が出ようかな。
一呼吸置き少し動きを大きくして話始める。
「ユリア・シュバルツだ。よろしく頼む。魔法を少しなら扱える。」
髪の長いほうの男子が声を出す。
「ハインリヒ・クロフォードです。炎に関する魔法なら少し知っています。よろしくお願いします。」
そして最後にお淑やかな声で話す。
「エーリカ・サーヴィレです。よろしくお願いします。」
それからは少し歓談が行われた。学校施設などを見学に行ったかなどや、それぞれの好きなものの話などをした。
意外なことにも家柄のことだったりある程度プライベートな話などはあまり行われなかった。せいぜい住んでいたところの景色や特産の話であった。
それからのこと少し空気が変わり作戦の話がでた。
フランシスコレットが口を開く
「さて、そろそろ本題のことと言おうか、今回の演習に着いてだが、
そこから吸い込まれるかの様喧騒を切り裂く彼女の声が響いた。
アリソン先生の声だ。
「ご歓談中申し訳ないがこちらの準備も整った。厳正なるくじ引きの結果、今回の演習における君たちのスタート地点が決まった。各自指定された場所に行くように。あぁ、そうそう。一つ言い忘れていた。今回のこの演習、実は優秀な者たちにはとある褒賞の様なものがある。期待しているように。」
それぞれが少しざわつく
「え、褒賞とはどんな……」
またもや喧騒を切り裂くように彼女の声が大きく響き渡る。
「さてさてお楽しみは後だ、皆配置につくといい。」
そういって話は遮られてしまったがみんなの空気が一部よくなった気がした。
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夜に霧を纏う ナイリル リーン テイル @leantail
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