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あの日は夕飯を食べ、湯あみを済ませたらすぐに寝てしまった。自分でもあきれるほど早く眠ってしまったのだ。なんだかこの世界に来てから本当に規則正しく過ごしている気がする。


 まあそれはそれでよしとする。

 きちんとした生活をすることは自身の能力の向上と維持に欠かせないからね。


 この世界は一応七日間が一単位で季節やある程度の節目も存在する。まあもしこの住んでいる星が地球と似ていれば自然とそうなるであろうからね。


 また宗教的にも日曜?というか一週間?が始まる直前の曜日はお祈りをするために基本的にどのお店も休みであったり或いは営業している時間の短縮だとかずらすだとかをしている。


 私は講義がその日曜日の様な日の前にもあり実質土日制度があるのがありがたい。たまに他の曜日に休みが移ったり、或いは増えたりもするそうだがほとんどがこの感じだろう。


 さてさて私が今いるのは学園から少し離れた木々が生い茂るエリアにいる。比較的凹凸があるが森林と言えるほど深いわけでもなくしかしある程度太い幹が多くある。また小さいながら綺麗な川も流れているのでピクニックなどには最適であろう。少し湿度が高い気がするが懐かしき日本のじめじめとしたそれとは違い心地よいものだ。


 そこで魔法にて少し硬めに幾つかの土壁を作っている。目的としては魔法の実験とある程度の射出の訓練をしておくためだ。きちんと中央を狙えるようにアーチェリーなどで使われてそうな的の模様も描いた。


 まずは軽く魔力の調整が出来ているかの確認、そして今日のコンディションがどんなものかを軽く知るために魔法を放ってみる。実は魔法というものは結構体調や精神状態に左右されるものなのだ。


 まずは姿勢からおさらい。足を少し開き重心を安定させる。そして上半身をしっかりと固定。この時に自身の骨格などを意識してしっかりと骨に重さを乗せることが大事、らしい。そしてまっすぐに腕を伸ばし杖を構える。そしたらあとはいつも魔力で遊んでる感覚、手癖の様に染みついているあれを杖の先端に集めて放つだけだ。今回は炎属性を放つことにしよう。


 濃密に練られた魔力が杖の先端に集中し弾丸やパチンコ玉の様な小ささの炎の塊が放たれる。綺麗な直線を描いて飛んでいきそのまま事前に作っておいた土壁へと直撃する。


 パン バキッ という音の後パラパラという土壁が崩れ落ちる音がする。



 調子良好。しかし精度のほうがまだまだである気がする。


 今回はきちんとした威力調整、射出訓練、そして簡単な魔力によるマーキングをする魔法を目的とする。まあとは適当に自由な遊びを兼ねている。


 次はこの6個の的を連続的に狙ってみようと思う。


 あの構えてから打ち出す奴だ。前世ではアメリカなどでスティールチャレンジラウンドアバウトだとかなんだとか言われている奴だ。結構楽しくて日本でも時折モデルガンなどでやっていた。


 構えて、杖を抜き出し打ち出す。


 パン パンパン

 順々に打ち抜いてゆく。


 撃ち放ち、そして着弾する。その場所は中心が少し赤くなり、そしてすぐさま暗黒へとなってゆく。


 一応的中してはいるがど真ん中とは言いづらい精度だ。マーキングをすることで指定の相手にのみ魔法をかけたい、しかしきちんと当たらないと効力がないので魔法を当てられるようになりたい。


 別に当てるだけならば範囲を広げるなり、早さをつけるなりといろいろな手段があるのだがマーキングという明確な目的のある魔術は難しい気がする。


 それでもめげずに本来の目的を試してみることにする。魔法の大まかな手順としては大まかな魔力を集める、そこから魔法陣の形成、または具体的な魔法のイメージが重要になり、そこからは放つ時への感覚へとシフトするのが私流の魔法の感覚だ。


 重力の魔法はというか私は基本的に範囲を攻撃するような、或いは球体のものを作り出してそれを炸薬させるものが多い。個人を狙うなど考えていなかった。


 マーキングをするための魔法陣を用意するまでは簡単なのだ。しかし直接触れるかきちんと充てなければ。


 今度は姿勢を変えてやってみる。どっかの軍人の様に左腕の上に自分の右手を乗せその先に杖が突出している。実は今のユリアとしての私はそこそこ視力がいい。そのためしっかりと狙いさえすれば結構当たる。弓を少し打った時も上達が早かったのだ。エルフだからであろうか。


 スパァン 


 引き離すような音が響く


 この撃ち方は結構いいな。腕を置くことで右手がぶれにくくよく当たる。もし何かを狙ったり,あるいは拠点を守るような役があったらこれでいこう。


         ■


 教会の鐘が夕刻の時だということをわたしの聴覚をもって知らせてくる。昼過ぎあたりから始めた、しかし集中していると時間の過ぎるのは以外と早いもので花紺青の空が私のことを見下ろしてくる。


 その中で涼しさと倦怠感交じりの眠気を感じながら帰路についた。

 


 

 

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