16話

時の流れとは存外に早いもので私が学園に入学してから数週間が経とうとしていた。


 あの時の昼食以来アンナとはちょいちょい話すようにはなったのだが他の人とはあまり関わりがないままであった。アンナ以外の友達を作ったほうがいい気がするがそもそもこのような中世の世界だとあまり作らないほうがいいのだろうか。うーむそれでもある程度集団の様なものは会出来ている気がするし話かけようか?  


 とりあえず今はこの講義に集中して昼飯の時にでも考えるとしょう。



 木々から漏れ出る光の下少し肌寒い風に弄ばれながら学園の食堂?の様な所で売られていたサンドイッチを口に運びそして友達の談笑を小耳に入れる。


 そんな生活がしたかったです。ここが地球でいうどの辺りに位置するかはわからないけれどとても涼しいというか寒いくらいなのだ。この体が女の子というのもあるであろうけど。かといって食堂の内部のほうは集団や先輩達?もいるのか一人だと少し居ずらい。


 そんな鬱滞とした気持ちを心に感じながらもそもそと昼食を済ませた、そのあとの講義のことであった。いつもの様相とは少し違い基本的な講義の話ではなくこの学校の歴史や年間行事でどんなことを行うのかなどを話している。祭り行事のことから、学校内のギルド、おそらく部活動などの課外活動集団のこと、学校全体で行う祭儀や血の気の多い行事などだ。そんななかあまり無視できない話がアリソン先生の口から発せられた。


アリソン 「ということで皆には近いうちに君たちには講義を受ける形ではなく、実技的で集団協力を必要とするものをしてもらいます。」 


 ??かなり急なことを言い出してきたな。周りの者たちの反応を見るとやはり大多数が動揺している。ちなみに私もそう。


パンパンと彼女の手を軽快にそれでいて重みを持つ表情と振る舞いをしながら周囲の喧騒をしずめる。

アリソン「いきなりで急だと驚く者もいるだろうが大丈夫だ。実践経験のあるものにそうでないもの両者が活躍できるようなルールにしている。誰とは言わないが血の気の多いものたちがちらほらいる。若くて大変よろしい。しかし然るべきにこそその熱量を発揮してほしい。先に話した後者の者たちも実際に身につけた知識を使うこと、またうちに秘めたる勇気を奮う経験もしてほしい。」


 その後彼女はまるで瞳に炎を宿したかのような表情と熱意を表し言う。「なにも考えず来た者も少ないだろう。見せてみたまえ君たちの力を。以上だ。」


 その後は火蓋が切って落とされたのごとく、ちょうどのタイミングで皆が動き出した。あるものは身を寄せ合い不安や戦略を立てるもの。あるものは最後の講義なのかスッキリとした顔で荷物をまとめて早々に立ち去るもの。


 ちなみに私は後者だ。色々と不安だったり、気になるようなことしかないがやっとの長い学園生活の1日が終わったのだ。早く帰らせてもらおう。色々考えるのは後だ。


           ⬜︎


 トントントントン

 エレーヌが夕飯のための準備をしている音が聞こえてくる。フスフスと鍋の中の内容物が熱されるような控えめな音。それに一切気が取られることなくユリアは思索へと耽っている。


 いつもは綺麗に整頓されていて否使用時には花瓶一つしか置かれていないその机はいつもと違いモノが少し多く乗っている。いまだにゆらゆらと湯気が炊き上がる熱めの飲み物。

 紙と羽ペンそしていくつかの簡単な魔法に関する本が重なっている。それは学園の講義にて使うであろうものだ。そしてその雑多とも形容していい山の中枢に位置するはここ最近に学園に入学して学生と呼ばれる身分になったユリアである。


 先ほどまでカップに刺さっていたであろう銀色に輝くカトラリーを左手でくるくるといじりながら考えるそのないようは、件の実技的であるとかいう活動についてだ。 場所と最低限の準備以外なにも言及がなかった。レギュレーションも話されていなかった。となると友達がいないなりの準備をしなければならない。


 血の気の多い輩が~などという口ぶりからおそらく魔法やある程度の殴り合いありきなのだろう。しかし勇気を出してほしいだとか秘めたる熱量だとかいう文言がとても気になる。推測できる範囲としては、前線や前にでる、或いは最低でも味方と協力して何かを成し遂げろというものであろうか。この中世?の世界観としては一応魔法を使えば肉体の強化、魔法による後方支援はできるが女性陣はあまり外に出なかったりするインドアな人種も多いのだという。そういった人たちに向けての言葉なのだろうか?


 さて考察をするのも楽しい。しかしそれでは問題が一向に解決しない。現状の私の問題点としては、まず魔法の使用状況や範囲が悩ましいということ。私から放たれる魔法は比較的強い部類の魔法である。ノン調整で放つと基本的広範囲になってしまうので見方が近くにいたり、或いは一人だけ習うというのが難しくなる。他の魔法魔だいぶ頑張らないとオーバーパワーになりそうなのだ。


 ここで逆に使えそうな魔法をいくつか考えてみる。まず私は重力を操る魔法がデフォルトでつかえる。というか使えたのである。それの応用で物を軽くしたり或いは浮かせたりすることが出来る。


 あとは風の魔法と少量ならば土や砂などを生成することができることか。目くらまし位にはなりそうだがどうしたものか。


 この無駄に積み上げてある本からは(マーキング)とやらの方法と、魔法の安定化と射出のコツが一番実践難易度が低そうだった。おそらく時間的につけ焼き刃にしかならなそうだが、ないよりはましである。


 さてさて、手札の軽い確認はできた。しかし何をするかが大事なんだよな。とりあえずの調整はここを考えてからにしよう。


 学園の近くには鍛錬や実験、そのたの活動がしやすそうな森がある。そもそもがこの領地も少し外れれば自然に触れることのできる場所なのだからどこでやるかはざっくりとしか見当がつかない。

 どうしたものか……

 そう思案していると聞きなじみのある声が聞こえやっとのことで子の黒髪の少女を深い深い思案の海から出させたのだ。


 「ユリア様、ご夕飯の用意が出来ましたよ。」

 「ありがとうエレーヌ」

 「熱心に考えていて学徒としてとても好ましいですが、きちんと食事をとらないと見えるものも見えてきません。」

 そういってエレーヌが手を指し占めた方向には湯気が上った皿があった。

 いつのまに?しかし見事にできている料理を前に我慢が出来なかったので急いで積み上げられたものをひとまとめにして自分の本来の勉強机の方向に荷物を追いやり、食事へと向かうのであった。

 肉の匂いにハーブの香りどれも食欲をそそる。


 ではでは「いただきます」


 



 

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