第16話ラスボス
いやー昨日はパイロットスーツを着用しながらのA.A.Sシミュレーターによる対戦が白熱したな。ヴァルキュルアスのメンバーでメンバーを分けて何回も模擬戦を行ったり市街戦でもヴァルキュリアス小隊を分隊規模に分けて、レギンレイヴ分隊だのスクルド分隊だのチームを組んで楽しんでいたな。でも――
『死ぃぃぃぃいいいぃぃぃねぇえぇぇぇぇぇッ!!』
『今日のベッド権はウチのもんやぁぁあぁぁぁあぁッ!!』
『ブッコロスッ!! 一番は私よ!!』
『お前は昨日膜ブチ破っただろうがよッ! 順番守れやクソカスがッ!』
『連チャンがゆるされるわけねーだろが!』
『妄想しながら机の角でオ〇ッとけやカマトト女ぁっ! 子〇を……よこせぇッ!』
『あ゛あ゛ぁん!? コクピット諸共ぶち抜いたるけぇ……』
『男は一人……つまり……私が正妻……妾なら許す……』
地獄絵図でした。
空気の読める男。狭間ジンベエはそっと通信機能をOFFにしました。ええ、いつの間にか俺は童貞を卒業――うッ頭が……。
腰の軽い現象が今朝も発生しベッドのシーツは昨日よりも血痕が数多に……。ええ、さすがに気付きますよ……。でも、酷くない……? えっ、映像記録は取って置いています? いつまでたっても煮え切らないあなたへの罰です? 双方の合意は取れています? ――OH……。ちゃんと意思を持って俺は行動していたようです。ただ、反省を促す為に記憶を隔離処置……能動的になれば記憶を返してあげます……と。
童貞三十六歳の草食動物的行動が女子たちには大変遺憾の意だったようです。
男、狭間ジンベエ。責任を取りましょう……。なにかしっくりこない気持ちを整理しつつ汚れたシーツを片付けていきます。綺麗に折りたたんで……一応、滅菌処理して保存しておきますか……。記念ですし……。
ここまでくると彼女達、ヴァルキュリアスは絶対死なせるわけにはいきませんね。積極的に進めていなかった生体培養研究……クローン技術とメモリキューブの導入。それに――魂の存在証明の知識を利用して生存性を追求していきます。
霊子が確認、技術として落とし込んだ今なら様々なパターンの配列で精神的記録――魂の存在を確認できています。あとは彼女達固有の霊子を保存できるメモリキューブとクローン体さえあれば身体の交換なども可能と成るわけです……ええ……地球上の理念である賢者の石的な疑似不老不死の実現です。
脳内に埋め込んだメモリキューブの回収さえできれば……。ですね。臨床試験などの医学データが圧倒的に不足しているのでいきなり実行する訳にはいきません。医学的な技術は積み重ねが必要なのです。
まぁ、活きが良いゾンビという心の痛まない実験体が一杯いますので。
それとAIにもメモリーキューブを生成すればヒューマノイド――新人類化も可能なのでは……? と、思いついたところそちらの分野の研究はエクシアさんとネメシスさんが請け負うそうです。
その日から拠点の奥深くには緑色の液体が充填されたカプセルが大量に……。ウ゛ッ……夢に出てきそうです。
◇
脳髄への霊子液体結晶収入によるメモリーキューブ形成実験
被検体NO-M23:記憶を形成する霊子との結合不全――失敗
被検体NO-F34:記憶霊子との結合を確認。長期的に海馬へのシナプス伝達が行われておらず記憶霊子の崩壊を確認――失敗
被検体NO-F53:メモリーキューブ形成に成功。しかし、記憶霊子が漂白化(以後漂白化された記憶霊子をブランクと命名)されていた為、保存しておく。
ブランクを封入したメモリーキューブをストック。人間の魂のパーソナルデータの解析の為、収集、保管する。ブランク化した記憶霊子には微細な差があり魂の質(メモリー容量)の差により特異な能力開花に繋がると推測。ゾンビの脅威度と比例する事が証明される。いわゆる才能、なのだろうか?
被検体NO-F265:ブランク化していない記憶霊子を確認。幼児程度まで記憶霊子が退化いる事が判明――重要保管庫へ
被検体NO-F325:記憶霊子の欠落が少ないメモリーキューブの形成に成功。
被検体NO-F441:記憶霊子の欠落が少ないメモリーキューブの形成に成功。
被検体NO-F623:ほぼ万全な状態の記憶霊子のメモリーキューブの形成に成功。ゾンビ化して間もない個体であった為、記憶霊子破壊が進行しなかった模様。
被検体NO-FS01:被験者の同意の元、メモリーキューブ形成実験を開始――成功。被験者の身体は衰弱し死亡寸前であった為、間もなく死亡……記憶霊子保護の為、研究中の新型イデアフィールド生成装置内に隔離。――クローン体培養の為各臓器の遺伝子培養を開始。
こんな世紀末のせいなのか、クソ共に襲われ奴隷のような扱い……だったか。仇は取ろう。
メモリーキューブの形成実験の最中だったのだが、廃墟内で様々な部位に裂傷と栄養失調による臓器不全になっていた女性を発見した。ここまで人間は残酷になれるものなのかと本質を垣間見た気がする。
俺の機巧の腕で死にかけている彼女に問うた。
――生きていきたいのか? と。
震えるガリガリの手で俺の手を握り返してくれた。まだ生きたいという彼女の強い意思を感じたのだ。この状態から生命保護、生体生成にはどうあっても間に合わない。緊急措置的に彼女の脊髄から霊子液体結晶を注入し――成功。新しい体が出来上がるまで眠っていてくれ……。
≪万能の鍵≫による有機物の生成は可能だ。しかし、強姦魔という生体で拷問のように切り刻み実験したところ記憶霊子との不和が起こったのだろう、結合不全が起こり精神的死に繋がった。安易に≪万能の鍵≫での医療行為を行わなくて良かったというかなんというか……。恐らくまだ解明できていない技術、理があるのだろう。
≪万能の鍵≫による直接的な生体生成は実験体であるクソ共で試行錯誤するとしよう。
奴隷のように扱われ殺された彼女の仇は半日以上手足を切り刻んだり、ゾンビの対組織を移植したり最後にはメモリーキューブをブッコ抜いて他人の身体にぶち込んだりしてやった。ゾンビウイルスによる体細胞の変性メカニズムのデータは役にたったな。最後にはヒートブレードで切り刻む様子を、殺された彼女へプレゼントする動画データを保存しておく。
「クローン体及び体細胞の強化措置はどうだ?」
部位ごとに分けられた臓器へDNAナノテクノロジー技術を利用して、テロメアの劣化を改善、強化する事によりヘイフリックの限界(細胞分裂の限界、寿命)を克服する。
『個体によってDNAパターンが異なりますのでサンプルデータ――彼女達の部位を複製、培養。DNAナノマシンへの変性細胞適合実験を行っています。――まだ、時間はかかりそうですね。次元保管庫内で時間を加速させているんですけどね』
「彼女達の体細胞を使うなんてバレたら怒られるんじゃないか?」
視界の先には緑色の培養液内に浮かぶ人工培養臓器……R18ものの景色が広がっている。
『問題ありません。実験内容、研究の進歩も逐一報告しています。やはり人類にとって――女性にとって老いの克服というものは宝石のように輝いて見えるようです。いつまでも若くて綺麗な姿を女性は好きな人に見せたいものですよ? ――朴念仁め』
「急に辛辣ゥッ! そんな事言わなくても……ええ、すみません。朴念仁です……」
俺の身体ならば疑似臓器だろうが人工筋繊維の換装だとか様々な強化を行っても適合している。イデアフィールド形成物質――霊的物質を回収してドンドン強化していってます。今まではフィールドの形成までしかできなかったのが正負のベクトルを付与できるまでに至りました。ここからは古来から存在する退魔士だったり呪術師だったり専門的な分野になるでしょう。――つまり、さっぱりわかりません。
近距離のみだがイデアフィールド形成による切断や、飛行ができるだけ
良しとするか。H.P.M.Sにできる事は割と自身の身体にも組み込んでいる。さすがに背中からイオンスラスターを噴出させるのは見た目的にもアウトなのでイデアフィールドによる反発推進のみ採用している。だって、背後に発生する円環の光輪……カッコいいじゃんよ。
背後にキラキラ光る光輪。浮かび上がるおっさん。――絵ヅラがひでぇな。
◇
半月ほど資源回収(霊的物質も)を行っていたのだが。神社や寺、心霊スポットには様々なサンプルがあったり、正負の霊子をイデアフィールドで凝縮――結晶化に成功する。グロテスクな状態の霊子から断末魔が聞こえたり聞こえなかったりが多々あったが……あれは魂……になるのだろうか? 所謂【念】記憶霊子の干渉により疑似的に意思を持ったものなのか、記憶霊子そのものなのか判別できない。そこはもう個人の主観的な価値観になってしまうからなぁ……。
まぁ、見た目美少女、美女な記憶霊子――妖怪? 霊魂? であるならメモリーキューブに記録封入するのだが今の所いないしな。捕まえたりすると所謂使い魔的な扱いになるのだろうか?
イデアフィールドを制御するコア(結晶)はいくらあっても足りないのでガンガン回収していく。そのおかげか近場の霊的スポットは清々しい空気が漂う事になるだろう……。現在進行形で東京都内は、負の記憶霊子の干渉により膨大な霊子が渦巻いている。あまりいい気はしないが収集先には困らないな。
それとちょっと寄るところがあってな……。まぁ、感傷だけどな。
◇
自衛隊駐屯所。かつて半壊させた組織。夜の帳が降りており宿舎の照明はすべて落ちている。自衛隊に配備されている携行照明の明かり元、現在、嗜好品は貴重な物資なのだが、ウイスキーを口元に傾けゆっくりと味わっている美女がいた。
葉隠みつこ。
豪快な姉御気質なバインバインの美女だ。いの一番にディープキスをブチかましおパンティーを叩きつけてきた人物だ。
M.A.Sを巧みに操り鬼神の如き表情で俺を殺しに来た女でもある。彼女の左手は失われており、表情もどこか憔悴していた。
「気分はどうだ?」
部屋は五階相当の高さなのだが窓が開けられていたのでステルス状態でゆっくりと侵入し声を掛ける。
彼女の超反応でテーブルに置いた拳銃を掴み取りこちらに銃口を向けて来るも――コンッ。彼女の右手の甲をノックし緩んだ掌から銃を奪い取った。即座に格闘戦に移行するも首筋を掴みソファーに押さえつける。
叫び声を上げられないように強めに声帯を抑える。腹部に跨っているので起き上がることもできないだろう。――先程から膝蹴りを背中に食らっているがダメージはない。……あの、いい加減落ち着いて欲しいのだが。
頸動脈を締め意識を落とす。最後の最後まで抵抗が激しかったのだが……これではまるで俺が暴漢のようじゃないか……いや、間違いではないが。
意識が戻るまで待っていたのだがそれから数度ほど格闘戦(ガチ)を行うとは思わなかった。叫ぶことはしなかったがよほど恨まれていたか自身の手で処したかったのか……。
今は、お高めのウイスキーとブランデーの瓶をテーブルに並べ、喫煙者である彼女が豪快に葉巻の香りを楽しんでいる姿を見せられている状態だ。もちろん嗜好品は撃墜した詫び代わりに俺がプレゼントしたものだ。
俺もグラスに入れたウイスキーをロックでちびちびと嗜む。彼女はガツガツ飲んでいるのだが底なしなのか? 面倒くさがって瓶を直接煽っているのだが……大丈夫か?
「ふぅ…………貴様は良く顔を出せたものだな。――戦争、いや、一歩的な虐殺みたいなものだったが同僚が何人も死んだ……。最初からあの命令には反対だったんだ。――だが、空輸による補給物資の中止を盾にゆすられてな。部隊損耗の保証としてたっぷり物資を請求はしたが……死んだ同僚は帰ってこない……」
ゆっくりと頬に涙が伝う。すすり泣くような事はしないようだ。悲しみを飲み込むようにウイスキーを再び煽る。不謹慎にもラフな格好であるタンクトップから零れる巨乳の谷間に目がいってしまうのだが勘弁してほしい。
「部隊は半壊。お前も大変だったな。アメ野郎の空母を沈めた事にはスッキリしたぞ? よくやったなとも思う。元々はウチんとこの糞上司――内閣総理大臣と米国の軍上層部の独断だからな。それにしても良く生きていたな、ミサイルを何発もぶち込まれたと聞いたが」
「まぁ、色々と秘策があるんだよ。それと――通信装置の電波は潰しているからいくら助けを呼ぼうとも意味が無いぞ? 全く反骨精神も程々にしろよ……何回挑んでくるんだよ……二回目以降には殺傷の意図が無いのは分かっていたのだろう? 隣人に激しいセックスでもしているかと勘違いされるだろうが……」
「――ッチ。グチグチと細かい男めッ。素直に殴られて床ペロでもしてろッ!! それに一発も二発もなにも、セックスは何年も私を組み敷いてくれるオスがいないからなッ! どいつもこいつもビビりやがって……気合でチ〇ポを捻じ込んできやがれ……」
うわぁ……。うわぁ……。こいつに勝てる霊長類いるのかよ? 結構な攻撃力に搦め手を交えた格闘戦は俺でも手古摺ったぞ? 近接格闘プログラムの更新を久々におこなったぐらいなのだからその格闘戦のすごさはいわずもながだ。
「ふむ……ふむ……まぁ、合格だろう。私に勝ったのだ。チ〇ポをブチ込んで喜ばせてみろ。床での勝負位勝たせてもらわねば同僚が浮かばれん」
……………………? なぜセックスの勝ち負けで同僚が浮かばれるんだ? あの世で絶対嘆いているぞ? ――だが、男の性なのか捲られたタンクトップの裾に目が行く。気付けにグビグビと飲み干すウイスキーの水滴が首筋から滴っていた。その水滴が鎖骨、谷間、腹筋、そしてへそにアルコールが溜まる。
豪快に脱ぎ捨てたタンクトップの下に隠れていた裸体は美しかった。芸術品を思わせる張りがあり重力に抗う上向きの胸。綺麗に割れた腹筋は見かけの割に優しい弾力があり獣性を感じさせた。
ソファーのに腰を下ろしている俺の目の前で立ち上がり迷彩の戦闘服を脱ぎ捨てた。下着であるパンツは色気のないグレー。けれども筋繊維の筋がぷくりと浮かんでいる下半身は妙なエロスを感じる。
そんな俺の眼前に堂々と下半身を見せつけなくても……自信があるのかドヤ顔をしながら下半身を顔に押し付けて来る。
「どうだ? 美しいだろう? 素晴らしいだろう? ――とっても美味しそうだろう? なに、一発や二発だけ……とシケた事は言わない。孕ませるつもりでかかってこいッ!!」
脳内でRPGのラスボス登場シーンのBGMが流れてきたのは悪くないと思う。でも、こういうカッコいい女は嫌いじゃない。――ぶっ倒してやるぜッ!
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