第7話防衛拠点にいきましょう
東京奥多摩ダム発電施設兼自衛隊防衛拠点
日本国内の五大都市で同時多発的に発生したゾンビ:パンデミック。緊急事態が宣言され即座に拠点設営に自衛隊が派遣されたのだが。人口が密集していた都市は半壊。予測だがすでに数百万人もの東京都民がゾンビウイルスに感染し死亡……怪物と化しているだろう。だが、メディアで数日間刻々と変化していく正確な情報を流していた何者か判明していない。だが、そのおかげで地方の人間の避難や対策本部を早期に設立したり防衛線の確保、食料の確保、輸送部隊のラインをある程度確保することが出来た。
日本各地の電力施設やダムを中心とした拠点化は成功するも救助活動が遅々として進んでいない。今この瞬間も東京の各地に立て籠っている要救助は膨大な人数となっている。
だが、その中で意味が分からない報告が数件ほど上がってきている。なんでも女子高等学校の生徒たちが武装、ライトコイルガンという銃器でゾンビ共を駆逐しながらここの防衛拠点へやってきたり、工事用重機を改造したようなロボットで乗り込んできた少女に、ヘルメットを被った超人少女がゾンビをぶった切りながら避難民を誘導したり…………特に頭が痛いのが国道や避難所の前に置かれた怪しい宝箱だ。
宝箱の中には食料や衣服、そして先程少女達が装備していた≪ライトコイルガン≫だ。自衛隊の技術班が回収してきたものを分解、解析したところ銃身の作り自体に特異性は見られなかったが個人認証システムとバッテリーのような物。これが厄介であった。どうやら現存する技術力では開発できることのできない未知の技術の塊であった。しかも、内蔵されていたICチップをコンピューター解析しようとしたところ自壊し塵と化してしまった……。
工事用の重機ロボットもマッドな連中が躍起になっていたので安全を確保しながら解析を命令した所自爆。森の奥の方で解体していたので被害はそこまででなかったようだがすぐさま未知の装備を解体、解析する事は一時禁止とされた。
厄介なことに個人認証されたライトコイルガンは登録した本人しか使用できないために銃弾は釘などを流用して製造が安易であった為回収したライトコイルガンは女性の自衛隊員に携行、装備してもらう事となった。なぜ女性にしか装備できないのか分からないが使える武器を使用しない等ここには余裕はないのだ。
報告では怪しいおっさん商人が空中から物を出したり避難民の男性を虐殺したりと謎な上に人間性が良く分からない危険人物として自衛隊員内では周知されている。特に未知の兵器を開発している謎の勢力に属している可能性が高い為早期の接触を図るよう臨時政府から指示が出されている。
しかも、取引の内容が……その、おっぱいであったり履いているパンツであったり下品、しょうもない内容であったりするのだが……貞操を捧げろとか奴隷になれと言われるより幾分かマシ……いや、危機的状況でこのような内容を要求すること自体卑劣なのだが取引を行った女性たちは概ね納得したうえで商取引を行ったようだが……。
顔写真も複数撮影されておりゾンビ:パンデミックが起こった当日に爆発事件の容疑者として警察にマークされていた狭間ジンベエ三十六歳と判明している。現在、起こっている危機的災害と未知の兵器の出所。何かしらの真実を知っている可能性が高い。
大量殺人犯……今、この世の中で裁判所や犯罪者を拘束して置く施設などほとんどが機能していない。一部暴徒化している集団など見受けられており避難集団の中でも卑劣な暴行が横行している。正当防衛の行使の基準などすでに破綻している。その中で女性のみ使用できる携行できる武器は……倫理的には賛成できないが女性の自己防衛手段としては個人的に賛成と言わざる得ない。目に見える脅威は暴行の抑止力足り得るからだ。
だからと言って武装した女性が男性を殺害した報告もかなりの件数報告されている。暴行を受けそうになった……証拠などどこにもない。超法規的判断として武装を一時預かり男女別に仮設住居のコンテナで生活をして貰ってはいるがすぐに防衛拠点の居住できる許容量はすぐに超過するだろう。――頭が痛い。
「お疲れの様子ですね山岸指揮官」
「ああ……やらなければいけないタスクが多すぎる……輸送部隊の手配に仮設住居のコンテナ……すでにテント暮らしの避難民に防疫の徹底……。まさか、現代で木を刈ったり原始的な暮らしを体験するとは思わなかったよ」
「ですが危機的な状況になると人間とはこうも逞しいのですね。生還した避難民の方々は柔軟に適応していっているようです。今朝なんてイノシシを狩って来た住民が解体の協力要請が出ておりました……しかも、女子高生なんて驚きましたわ」
「ああ、例の武装集団になっていた彼女達か。あの団結力は見習うものがあるな。武装することに特別許可をしたが……まさか、武装解除要請をする際に衝突しかけたのは冷や汗が出たな……。まさか『遠方からあなたの額を狙っています。我々には生きる権利を。武装する権利を頂きたい』とね。彼女は生徒会長だったらしいが逞しい若者をみたら負けられないと思ったよ」
「あの重装備をみればどこの傭兵集団なのかと勘違いしそうになりました。――それもあの【おっさん商人】とやらが提供したようですね。殺人……暴徒化した人間を殺害したようですが……せめて武器や食料の提供に協力してくれれば助かるのですがね……」
部下の山田君が入れてくれた暖かい珈琲を飲みながらサインすべき書類を確認していく。状況は良くはなっていない。だが、人間の生きる意志と言うものは馬鹿にはできないものだな……。
「今日の予定はどうなっている?」
「え……っと。やはり拠点防衛、避難人の確保の観点から施設の強化と――「やぁ! どっきりスーパーハカセ・ジンベエだよ?」
すぐさま携行している腰のホルスターに手を掛けるが――
「動くな――と言えばいいのかな? このセリフ一度でも使ってみたかったんだ。おっとそこのとびっきりの美女も動かない方がいいよ? このシブイ素敵な……ああ、君の想い人かな? 職場恋愛――と言う事かな? ああ、なんて羨ましいんだ……オフィスラブにしては血生臭い環境であるが……朴念仁の上司では報われないな。今、危機的状況で愛の告白をおこなえば――おっと、銃口を向けないでくれ。交渉をしに来た……と言えば納得は……してくれないようだねぇ……」
今、私の首筋には鋭利な赤熱している刃物。これが未来的な未知の兵器。そして、どこかでみたことがある顔。――狭間ジンベエ。未知の技術を用いて製造された兵器を所持している大量殺人者。
「山田君。銃口を降ろしてくれ。私はこの狭間君と交渉しなければならないらしい。どうか押さえてくれ」
「しかし「おっ、告白かい? ひゅーひゅーッ!! ――うわっ! 本当に撃たないでくれよッ! 服が破れるじゃないか……」
「なッ!!」
山田君が隙をついて二発発砲したのだが狭間ジンベエなる人物が掲げている掌を広げるとひしゃげた弾頭がパラリと床に落ちた。その腕部は機械化……義手にしては物々しい鋼鉄の腕が見えていた。驚愕する事実はそれだけではない。音速を超える弾丸を視認し掴み取る程の超人としかいえない身体能力だ。普通の人間ではないと思っていたがこれほどとは……。
「これも人生でやりたかったリストに載っていた【弾丸を掴み取り脅威を知らしめ怪しく嗤う事】ができたね。こうも立て続けに俺の願いを叶えてくれるなんてとってもサービス精神旺盛だねッ!! だけど発砲音を聞いて自衛隊員がやって来ると取引ができないしあんまり君たちに利点が無いんだけどね……まぁ、また今度来るからそん時は撃たないでね? ばぁ~い」
身体の表面が衣服とも薄く景色に同化すると視認する事が出来なくなってしまった。だが、キチンとドアを開けて退室していった所ステルス化する光学迷彩のような未知の技術なのだろう。大きく息を吸うとゆっくりと吐いた。
「山田君……」
「い、いえっ、あのっ、つい……あいつが……」
「ふむ。あながち彼が言っていた君の気持とやらも嘘では……無いようだね?」
「え、あの……。はい……」
いつもはキリリとした仕事のできる山田君が、今はあわあわと慌てながら頬を染め恥ずかしそうにしている姿を同僚に見られたら驚愕する事だろう。始めて見る表情だな……。だが――
「次……次に彼が接触してきたら冷静に頼む。殺人を犯してはいるが様々な情報に未知の兵器を所持している勢力との接触だ。――君の気持にはキチンと向き合い私なりの答えを出すからどうか冷静に……死なないでくれよ?」
「え、あっ、え、本当ですか……?」
「ああ、本当だ。――それにしても発砲音が響いているハズなのに部隊員がくる様子が無いが……」
「あの……実は山岸指揮官と二人っきりになれるとの事なので同僚が気に掛けてくれて巡回に回っているんです……」
「…………狭間君と交渉できればよかったんだが…………。山田君……新しい珈琲を入れて貰っても……いいかね?」
「は、はいっ! すぐに入れてきます!!」
深く。深く溜息を吐く。珈琲を入れに退出したドアを眺める。没交渉になってしまったのは仕方がない。接触して見てますます狭間ジンベエなる人間性が分からなくなってきた。愉快的に山田君をからかってはいたが我々を殺傷するような行動は……刃物を突きつけられてはいたが殺意は感じなかった。発砲されるも害されることなどないという自信の表れだろう。
窓の外の朝焼けを眺めながら今日のタスクを整理していく。やらなければいけないことは山済みだ。
◇
「やぁ」
「きゃあああああああああッ!!」
パスッパスッパスッ、とコイルガンを撃たれるも回避する。元生徒会長である宮園かすみちゃんの様子を見に来たのだ。こっそりと気付かれないように背後からにじり寄ったのだが……驚かせすぎてしまったようだ。
どうやら彼女達は無事に防衛拠点である奥多摩に辿り着くことが出来たようだ。
「あ、あなたは【おっさん商人】さん……あの時はありがとうございました。それにしても弾丸を回避するとは……人間を辞めていますね」
「挨拶代わりが鉄の弾丸とは今時の子は過激だねぇ。様子を見に来たんだけど……逞しく生きているようだね」
周囲にはキャンプ場。拙いながらも支給されたテントや野営道具が散乱していた。少し離れた位置に女子高の生徒たちが様々な作業を行っている。
「なにか入用はあるかい? 新商品なんかもあるよ? あのポイント表は不備があったから無限ポイント稼ぎされちゃったからできればドンドン消費して欲しいんだけれどね」
そう言いながら商品カタログを渡す。そこに書かれてある内容はあのアメリアちゃんに渡した特殊スーツのダウングレード版だが品ぞろえに加えている。小型化した重機風のM.A.S(マシンアームスーツ)もある。モニターやSAGAプルートのコントローラーは付属してはいないが動作に連動して感覚的に操作できるように改良をしている。もちろん燃料はガソリンとなってはいるがね。アタッチメントとして二股のマシンアームやチェンソーなんかも存在している。
一度非常識な存在を認識している為にカタログの内容を疑ってはいないようだ。すぐさまキャンプ地の人員を収集して必要物資の選択をきゃぴきゃぴと騒ぎながらしているようだ。
「あの商人さん、お久しぶりです。黛かおるこです」
「ああ、かおるこちゃんか。避難も大変だったろう。それと……あいつらはいないってことはそういうことなんだね」
「ええ、どうにも信用が出来なかった連中なので。早い段階で……どこかに逝ってもらいました。中には生徒に手を出していた外道もいましたので……ウフフフフ」
「強くなったねぇ。あのおパンツを売りに来た時に恥ずかしがっていたかおるこちゃんが……ねぇ。あはは」
「言わないで下さいッ! もぅ! でも、あのあってないような対価で私達は救われたんですよ? とっても……とっても感謝しているんですよ?」
ツツツとにじり寄って来ると俺の腕をぎゅっと両腕で抱きしめた。肩に少しパーマがかった髪の怪我フワリと触れる。ふにょんと控えめなお胸様が腕に感じる。
「あら。とっても固い腕なんですね……何があったか分からないですが……。逞しい腕ですね。あなたはふざけた要求をする割に案じてくれた。割に合っていない……そう、生きるために尽くしてくれる。――できればその中に私個人を入れてくれたら、かおるこ嬉しいなぁって」
撫でるように腰元に手を回すと艶やかな色気を醸し出す。上目ずかいで俺を見つめながらスリスリと腰を撫でてきた。――これが……これが魔性の女と言うものなのかッ! 怖い……怖いぞ……逃がさないという蛇のような執念を感じる……。
意見が纏まったのか必要物資をリスト化したかすみちゃんが背後から近づいて来る。
「――先生……何をしているんですか?」
「ん? ふふふ。ちょっと、商人さんと個人的なあ・い・び・きをしていたところよ?」
「…………商人さん。必要物資のリストだ……それと」
俺の腕に抱き着いているかおるこちゃんを気にせずに頬を両手で挟まれた。そしてつま先立ちをしながら俺の口元へ柔らかそうな唇を近付けると――キスをされた。俺の頬を強引に引き寄せ貪るように、そして舌を捻じ込んで口内を蹂躙される。
今時の女子高生は――激しいのだな……。苦節三十六年。おっさんのファーストチッスは十七歳の女子高生に奪われてしおまいました……ああ゛ーっ!! 余りにもの展開に高性能な思考が停止しています。しかし、現在進行系で脳内動画永久保存余裕です。
「なッ! かすみちゃん!! ずるい!! 先生を養ってくれる旦那さん候補を奪わないで下さい!!」
何気に人間ATMのされそうな発言をするかおるこちゃん先生はかすみちゃんを押しのけディープなチッスを捻じ込んでくる。数度ほどかすみちゃんとかおるこちゃんの俺の取り合いが続くと物資の販売を待ちわびて来る生徒の中で数人程ディープ合戦に参加してきました。
「商人さん商人さん! ディープキッスは何ポイントなん!? ほれほれ、いくらでも啜ってええで!」
「あのあのあの、欲しい物があるんです。――あと、私初めて何で……ポイント多めにくれません? 初物ですよ初物」
「ああ゛ー!? 私が先だっての!! 欲しい化粧品があるんだから! 初めてではないけど……処女なんだから高く買ってよね!?」
物欲は恐ろしい物です。かなりの物資や資源を回収しているので困りはしませんが……。キャンプ地にいるアマゾネス……いえ、女子高生集団の半分以上にディープなチッスを。他の生徒はほっぺにチュウでガッツリとポイントを荒稼ぎしていきました。
そう。童貞なのが悪いのです。エクシアさんなんて呆れ果てていますよ。ホントごめんなさい。何でかと言うと――
数台のM.A.Sがアタッチメントのチェンソーアームを装備して張り切って木をぶった切りながら開拓を行い。H.P.M.S(ハイパワーマッスルスーツ)のダウングレード版を着込んだエッチな女子高生集団が切り倒された木の枝を高周波ブレードを使用してカットしています。――とってもえっちぃです。眼福です。
そして、即席住居としてキャンピングカーを五台ほどに貯水タンク。備蓄用のコンテナ数台。保存食料一年分に衣服や銃器化粧品などありとあらゆる物資を吐き出させられました。中には電波を拾って通信可能なハイスペックノートPCをキスしながらおねだりされてしまいました。彼女達にとって扱いやすい童貞のおっさんなどまな板の上に乗った鯛のような存在なのでしょう。――はぁ。
「あのぉ……あのP.M.A.Sを廃工場に置いてくれたのは商人さん……ジンベエさんなんですよね? あなたのお陰で生き延びることが出来ました。本当にありがとうございます」
なんと、試験的に作成していた機体の操縦者の少女もこの集団に参加していたようです。感謝の気持ちを込めたキスを頂きました。ありがとうございます。抜いて置いたメモリーキューブを見せてきました。
「これ……もっていたら特典が得られるって聞いたんですけど……」
そうでした。メモリーキューブを抜き取るように指示を出していたのを思い出しました。彼女専用のそこそこ奮発した機体を用意しましょうかね。
「う~ん。感覚型の操縦と君が操作したコントローラーどっちがいい? カラーリングなどのカスタムも受け付けているけれど……」
空間投影されたモニターに彼女の所持していたメモリーキューブを掲げると待機していたAIが起動します。短い間でしたがどうやら仲良くなった彼女とAIが色々と相談しているようですね。ちょっとちょっと……どこから秘匿兵器の情報を持ち出してきたんですか……。ああ、はいはい……分かりましたよ。その代わりデータは逐次送ってくださいね?
燃料は流通しているガソリンだったのですがそれを一切オミット。内燃機関を超小型核融合炉……。比較的クリーンで現在の人類の技術では開発されていないアニメや漫画で有名なジェネレーターです。もちろん光学系の兵器に使用できるほどのスペックを誇っており現在の資源や開発できる小型ロボットに決して積んでいい物ではありません。
今後、兵器の開発が進めば様々な武装が可能ですが……彼女と仲のいいAIは随分過保護なようですね。固有名詞を付けているようですし……。いつかはアンドロイドやペットロボットのような物を開発出来たらAIを搭載しても面白いかもしれないですね。
空間投影モニターを操作しながら色々試している彼女見ると微笑ましく感じますね。
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