第8話サンドボックス系の造作って凝っちゃうよね

 開発していたハンドメイドの超小型核融合炉をM.A.Sに急遽組み込むことになり彼女達の拠点であるキャンプ地に仮設のドックを敷設して作業を行っていく。今時の女子高生にロボット関連に興味はないだろうと高をくくっていたのだがどうやらそうでもないらしい。


 各々の住居を建てる場所をきゃいきゃいと計画を立てM.A.Sで伐採や地盤を踏み固める作業が夕方に差し掛かって中止するとともに興味深げにドックの中に入って来ていた。空間投影モニターを複数展開させ様々な設計図と組み込む兵装を検討していると田中まりな――初期パイロットの少女が自慢げにAIを紹介しているようだ。


 次元保管庫内にも核融合炉やM.A.Sの製造プラントを敷設していないので大量生産するつもりは今のところはない。童貞心を激しく揺さぶられた今回……彼女達の生存能力と戦闘能力の向上の為だ。


 機体の基本フレームはかなり拡張性を持たせる設計をしている。後でいくらでもAIに期待の制御プログラムを追加できるので四肢や兵装をその部位ごと換装できるように設計している。核融合炉と言う都市全ての電力を賄えるオーバースペックな為、稼働させていない時はキャンプ地――彼女達の住居群の発電機代わりになる予定だ。


 燃料がガソリンタイプの量産型M.A.Sを購入したメンバーにはまりなだけが核融合炉型と知りぶーぶー文句を言われたが初期のテストパイロットと何かこそこそとまりなが説得をして納得したようだが何だったのだろう? きゃーきゃー楽しそうに騒いでいたので知らない振りをしておこう。女性の会話に突っ込みを入れれば俺の命が危うい。


 肩のウェポンラックに装備する予定の大型レールガンを組み立て仮設ドックにぶら下げている基礎フレームに組み込んで行く。M.A.Sのサイズは五メートル未満なので換装しやすくなっている。コクピットブロックは生命保護の為頑丈に設計するとともに脱出装置は……サイズ的に無理だな……。安全装置も今後の課題だな。


 金属装甲は軽量化の為強化プラスチックと剛性を追求した積層圧縮金属を使用する。次元保管庫内ならば高重力下に設定する事が出来るのでなんとか……製造する事が出来た。さっさと製造プラントを作成しないと過労死しそうだな。


 M.A.Sの作り自体そこまで複雑ではない為、装備する兵器以外の設計の目途は付いている。目玉であるレールガンだけ環境を考慮した出力の設定が問題だ。


 用意してあったテーブルに山盛りのお菓子と高級珈琲店から失敬していたお高めな珈琲でゆっくりと休憩するとしよう。


 椅子に座るとポットに用意して置いたお湯で珈琲を入れる。この時に香り立つ独特な香りが好きだ。店で淹れたての珈琲を飲むのも好きだが丁寧に自分で淹れた珈琲も風情があっていいものだな。

 

「ん? お前たちも飲みたいのか? ――そうか。座って待ってろ。用意してやるから」


 モノ欲しそうに見て来る女子三人(内一人成人女性)がコクコクと頷いている。


 森の中に建てた仮設ドックはちょっとした倉庫のサイズとなっている。室内には宮園かすみと黛かおるこ、そして田中まりなの三人だ。さすがに、数十人以上の女子高生だとさっさと追い返していたのだが数人程度なら問題ない。


「どうぞ。砂糖とミルクは好きなように入れると良い。ん? いつもより大人しいのかって? いつもはこんなもんさ、人と会話する時はテンション高めにするかちょっとふざけていないとなかなかコミュニケーションをとれなくてね……美味しい珈琲を飲むときくらいゆっくりしたくなるもんさ」


 かすみちゃんとまりなにはブラックコーヒーは苦かったのかすぐさま砂糖とミルクを継ぎ足していた。でも、かおるこちゃんがブラック珈琲を飲みながらドヤ顔を二人にしているのだろうか? きっと大人ぶりたい年頃なのだろう。


 珈琲を嗜みながらチラリと三人娘を見やる。かすみちゃんはメリハリの効いたナイスなスタイルに美しい黒髪長髪の正統派美少女。長いまつ毛にぱっちり二重は女子生徒の憧れの存在だろう。


 かおるこちゃんは少し頼りなさげな雰囲気だが意外と魔性の女っぽいな。童貞おっさんの評価はどこまで通用するかわからないが……ショートヘア気味で髪質は軽く癖っ毛のパーマ風。茶がかった髪色で背はかすみちゃんより低いな。でも目元は小動物を連想させるクリクリとしたアーモンド形でまつ毛も長い。胸部の戦闘能力は低めだが意外とグイグイ来る性格のようだ。将来養ってくれる旦那候補、と言われたがどこまで本気か分からない……。童貞的には嬉しいのだが押されると引いてしまう情けないおっさんなんですよ……。


 まりなはこの中でも最年少で女子中学生だったようだ。特徴的なのはおっきな眼鏡。目元を隠すように髪の毛を伸ばしているようだが見えにくくは無いのだろうか? 

年齢の割にはかおるこちゃんよりも胸部装甲が――おっと失礼な事は考えないようにしよう。俺の視線が二人の胸部を見比べてしまっていたようだ。


 つやつやお肌に綺麗な黒髪で年齢相当の瑞々しさを感じさせる。少し会話しただけでアニメや漫画、ラノベ関連と俺と趣味が一番合いそうだ。ロボット物は齧って無かったようだがAIと会話できるようになってから様々な知識を吸収していっている。特殊兵装の提案もドンドンしてくる始末だ。なかには参考になる意見を出して来たりするので空間投影型モニターを操作できる端末を一つ提供している。参考にできるサンプルデータをポイントで買いとる旨を伝えると物凄く張り切ってしまった。


「聞いていいのか分からないが……商人さん――いや、狭間さんはどのような女性が好みなんですか? ああ、名前は自衛隊のお偉いさんに顔写真のデータを見せられて知ってしまったんだ」


「大丈夫。知られても気にしていない。それとかすみちゃんもみんなも敬語じゃなくていいぞ? ちょっと、強気な方が君らしい。改めまして――狭間ジンベエだ。爆発事件の容疑者として全国区で顔を晒された哀れな人間だよ」


「ありがとう。どこかで見た事があると思えばそう言う事だったのだな……犯人とは思っていないが大変だった……のだな。今回も様々な物資を提供して頂き感謝する」


「それと好みの女性のタイプは…………この年齢になるまで女性とお付き合いしたことが無くってね……今この状況でも結構緊張しているんだ。女性を選べるほどイケメンでも口が美味いわけでもない憐れなおっさんだよ……」


「いえ、狭間さん――ジンベエさんはとてもカッコいい人間ですよ? ふふふ。だって私を救ってくれたんですもの」


「先生。あなたを守ったのではなく“私達”を救ってくれたんです。そこを勘違いしないで下さい。先生よりも若くてメリハリのある私の方が良いに決まっている」


「あら。男性と付き合った経験の無いこまっしゃくれた子供が何を言っているんですか? 色々と未経験ではありますがお・と・な、な私の方がジンベエさんを癒してあげることが出来るに決まっているじゃない」


「えと、えと、えと。趣味の合う夫婦の方が結婚生活を長続きさせるコツだと……ラノベに書いてありました……(おばさん共は引っ込んでろです。ジンベエさんが旦那さんになればうはうはの贅沢生活……喰っちゃ寝できて安全性も抜群の引きこもり生活ができるのですッ!!)」


「「ああ゛ぁん? クソガキがッ……(中学生に結婚は早いですよ?)」」


「本音と建前が逆ですよぅ……」


 ひぃん……。この状況はどう解釈したらいいんだ? いぇーいッ! ハーレムハーレムゥゥッ! レッツパーリィッ!! と開き直れたらいいんだが。童貞な内弁慶脳味噌はとても妄想が激しく、自身を主人公に四人で大乱交プレイ物でエロ小説が一作品作れそうだ……。


 エクシアさんエクシアさんどうしたらいいですか? え。さっさと子供をポンポコ産ませて人類を繁栄させろ? 遺伝子調整できるので寿命も才能も調整できる液状生命体の技術が……ってそれ人類用に調整されていない危ない技術じゃないですか……。ああ、どうでも良さそうな雰囲気を出さないで下さいよ……童貞にこの話題はしんどいんですよ……エクシアさんが頼りなんですよ……。


 え、ちょっと女性同士で会話して置く……って説得してくれるんですねッ!! さすがエクシアのアネゴッ! 神様仏様エクシア様ッ!! ええ、ええ! モニターにエクシアさん出力しておきますので女性同士? で、どうぞ会話をなさってください。ついでに味覚データーを用意しておきますので存分に楽しんで下さい!


 テーブルの上にモニターを投影したところ一瞬固まったが説得役のエクシアさんが搭乗するときゃっきゃと女子会を始めてしまった。――さて、俺は兵装の設計図……はちょっと行き詰っているので快適な住居関係の開発作業に移るとしよう。ここでベースとなるデータを作って置けば仮設ドックではなく拠点設営の訓練にもなるしな。


 訓練内容が女子高生たちの快適ライフを送る為なのが引っかかるが曲がりなりにも慕ってくれている子達だ。彼女達の為に少しぐらい骨を折っても罰は当たらないだろう。


 ――そう、決して掌の上でコロコロ転がされているわけじゃないんだからねッ!! そこッ! 童貞チョロイなんて言わないの!!



 しまった……サンドボックス系のゲームでも凝り性だった俺が拠点作成に括り始めると寝食を忘れて熱中してしまう事を……。最近プログラムだのエネルギー効率だの小難しい事を考え過ぎて疲れ果てていたのだろう。


 土いじりだったり防壁の作成やレンガ調の遊歩道製作がつい楽しくて楽しくて……。


 なんと言う事でしょう。彼女達がキャンピングカーで睡眠をとっている間にキャンプ地の中心にはエクシアさん像が天に両手を掲げている立派な噴水が……。四方に広がるレンガ調の遊歩道には円形に作られた人工の小川が造作されている。レンガで組み上げた花壇には色とりどりなバラが。


 インターネットの海外のアンティーク調のデザインを参考にして制作されたベンチが噴水広場に数台ほど設置されている。


 ゾンビの侵入や対人対策として円形に築かれた防壁は、外部の大地ごっそりと削り取りガッチガチに圧縮して築いている。もちろん削った場所は川の水を引き込んで堀に流している。日本のお城の堀の作りを参考にさせていただいた。


 防壁の上は見回りのできる通用路や監視塔も建てられておりいづれ活用する時が……来るかもしれない。俺が使用するかもしれないとヘリコプターなどが着陸できるヘリポートも一応作ってある。


 集会所兼作戦本部として中心地に作られた英国のチューダー様式と言う方式で大型の屋敷を建築している。暖炉のある広間には括りに括ったふっかふかのソファーにテーブルや椅子も完備している。組み合わせの好みに括りがあるなら彼女達が変更でもするだろう。


 キッチンやトイレ、洗面所辺りは近代化している為、薪で火を起こしたり井戸から水を汲んだりするなどの不便な所はない……。ハッキリ言ってやってみて分かったのだが建築は奥が深かった……脳内の処理能力を建築や造作の勉強に三割ほどの処理能力を割いてしまった。エクシアさんにもセンスが無いと言われ学んでいたところ賛成の意を示されていたので頑張りました……。


 似たような家が拠点内には十軒程適当に建てられている。一軒分の設計図を作ってしまえばあとはコピーアンドペーストをすればいいので大分楽だった。分解や解析、生産することが出来るのは現在の処理能力では数メートル程なので大分走り回ったり泥だらけになって苦労はしたのだが。


 夜食を食べてからおよそ半日以上かけてここまで仕上げたのだから充分驚異的だろう。うん。細かいところまで括ると果てしなく時間が掛かりそうなので、ここに来た時にちょこちょこ調整すればいいだろう。


「きゃーっ!! しゅごぃ……私んちあれね!! かざねちゃん一緒に住もうっ!!」

「ほぇー、ジンベエちゃん凄いやん! ははーん。キングサイズのベットでウチをアヒンアヒン言わす為に愛の巣を作ったんやなー。ほな、こっそり夜這いしに来てもええでー? そんかしじゃんじゃんウチに貢いだってな?」

「すごっ……ジンベエやるじゃん!! ねぇねぇ!! 私と結婚したら白レンガのお城に変更できたりするぅー? お嬢様が住むファンタジーなお城に憧れているんだよね!!」


 ……どうやら起きてきたようだ。ギャル女子高生組が興奮して早い者勝ちで家を確保していっている。


「ジンベエさん……私の為に作ってくれたのだな……。特に遠方に見える防壁。素晴らしい。あの大きな屋敷は私とあなたの家なのだな? 引っ越しはいつしようか?」

「み・や・ぞ・のさん? あの屋敷は私とジンベエさんの夫婦生活の為に建ててくれたんですよ? ふふふふ、庭付き一戸建て……。お庭の芝生の上で可愛い子供達を遊ぶの……テーブルに入れた紅茶でスコーンを……」

「ジンベエさんジンベエさん!! 秘密基地はどこですか!? どこですか!? 地下から巨大ロボットがしゅごごごって発進するんでしょうか!? あっ、でもこういう悪役令嬢が住むような場所でパソコン三昧お菓子三昧の生活もデュフフフフ」


 押し掛け女房三姉妹も元気だね。昨日はエクシアさんと女子会を開いて話が一段落したようだけど……変わった様子が無いんだけど? エクシアさーんエクシアさーん。ん? でえじょぶだって? あ、ああ、うん。

 

 喜んでくれて良かったよ……。

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