第22話 魔吸、スライムマンは触手プレイを医療行為と言い張る!!
「──お邪魔しますよっと」
テントの中に入った来夢は、キャンプ用マットの上で横たわっている女達の様子を確かめていく。
「う……ッ……」
「……ぁぁ…………」
「はぁッ……はぁッ…………」
すると、全員が息を乱してうなされながらも、目を覚ますことなく眠り続けていた。
「やっぱり起きちゃいねぇか。
酒に酔って寝てるだけにも見えるが……魔薬で身体を造り替えられているとはなぁ。
淫魔化だったか? これも魔造人間だか魔人だかの一種ってことかよ……。
うーん? ──確かに身体から魔力を感じるが、あのオーガ魔人みたいに全身がモンスターと混ざってるワケじゃなさそうだな」
来夢が目を閉じて魔力感知に集中すると、女達から感じる魔力は身体の内部だけにあることが分かった。
(おぉ、ハッキリ分かるぜ。何だか魔力感知の精度が大分上がった気がするな。
え〜と、頭と心臓と……子宮か? その辺りの魔力は少し強いが、身体の外側には魔力を感じねぇぜ。
これは身体の一部がモンスター化してるってことか?
だったら、変化した部分を〈スライムヒール〉で治せれば、上手く人間へ戻せるかもしれねぇぞ)
目を開けた来夢は、思いついた治療法について検討し始めた。
「問題は怪我の治療と違って、スライムからの人間化を応用できねぇことだな。
……スライムマンとしての感覚的に、淫魔からの人間化はできる気がしねぇぜ。
──できる気はしねぇんだが、一応の解決手段があるんだよなぁ」
そうボヤきながら、来夢は片手に持っていたリュックサックから錠剤の入った瓶を取り出した。
(魔薬の劣化品だっけ? これで淫魔のカタチを覚えてから人間化できるようになれば、娘さん達にも〈スライムヒール〉が可能になる……かもしれねぇ。
それにヤバい薬を自分から飲むなんてオカシイ筈なんだが、どうしても惹かれるんだよなぁ……。
まぁ、ライチが勝手に瓶ごと呑もうとしてたし、スライム的には問題ねぇのか?)
ただのビタミン剤に見える瓶を開けて、中身を手の平に出した来夢は、錠剤の山から一粒摘むと、
「……取り敢えず、一粒飲んでから考えるとするぜ」
そう呟いてから一息に飲み込んだ。
「んお?」
すると、何故か両腕の欠損を修復してからの虚脱感が少し楽になった。
「…………?」
疑問を顔に浮かべながら、来夢は少しずつ錠剤型の魔薬を飲み込んでいく。
「──間違いねぇな。身体の調子が良くなってやがる。
マジで栄養剤……じゃねぇよな?
どうなってんだ? それなりの魔力は感じるのに、殆ど魔力抵抗がねぇし、直ぐにチカラが身体へ馴染んでいくぜ」
そうして、瓶に入っていた魔薬を全て飲み込んだ来夢は、完全に虚脱状態から回復することができてしまった。
満たされたような感覚と共に、身体中で魔力も漲っている。
「おぉ、身体が凄え楽になったな。
よく分からねぇが、スライムマンにとって魔薬は栄養剤代わりになるってことかよ?
なら、淫魔化はしねえのか? んお!?」
己の状態を確認していた来夢が、魔薬による淫魔化を意識した瞬間、身体の表面がスライム化しながら、一斉にグニャグニャと蠢きだした。
「なッ!? ……これは勝手に【トランスフォーム】が発動してるのか?」
来夢の大柄な身体が、突然の【トランスフォーム】によって、スライムマン状態から身長はそのままで細身になっていく。
また、身体の変化に伴って、顔つきも野生的で男らしい顔から、中性的で少し幼なげな顔へと変化していった。
更に、全身の表面に妖しげな魔力を帯びた紋様が浮き出てきた。
そして、【トランスフォーム】が終わった時、来夢はマッチョマンから、妖しげな色気のある美男子へと変貌していた。
「この刺青みたいな魔力の模様は、魔紋ってヤツか?
それに身体が縮んでジャージに余裕ができたな……おぉ!? かなり痩せたのに筋肉はあるぞ!! また身体が理想の細マッチョになってるじゃねぇか!!」
ジャージを脱いで身体中を確認しながら、来夢は己に起きた変化に驚いていた。
「──って、なんじゃこりゃ!? 俺のアレが、キングスライムになってやがる!?」
特に下半身を確かめた結果、スライムマンになってから途絶えていた生理機能が復活していることに混乱した。
(……どういうことだ? スライムマンになってから、排泄なんかと一緒に機能しなくなってたよな)
だが、直ぐに来夢はアレがキングスライムとなった原因に気づく。
「あッ!? そうか、これが淫魔化した影響なんだな……」
魔薬による淫魔化とは、文字通り色欲に特化したモンスターとしての能力を得るという意味だったのだ。
(というか、この姿はインキュバスってヤツじゃねぇのか?
何だかスライムマンの時とは、かなり感覚が変わってるが……兎に角、これで淫魔化を〈スライムヒール〉で治療する目処が──)
ガシッ!
「うおッ!?」
来夢が魔薬を飲んだ目的を果たそうと考えた瞬間、その足を誰かが掴んだ。
反射的に振り払おうとした来夢だったが、ギリギリで踏み止まると、相手を確認して困惑を顔に浮かべた。
「あれ? お嬢さん達、起きれたのか?」
足を掴んでいたのは一番近くで眠っていた女であり、よく見れば魔薬を飲んで気を失っていた筈の女達全員が目覚めていたのだ。
「身体が熱い……」
「お願い、耐えられないの……」
「……凄くいい匂いがする」
そして、うわ言を呟きながら、女の一人がジャージのズボンを引っ張っている間に、残り二人も這い寄るように近づくと、来夢へしなだれ掛かってきた。
「は? おい、ちょっと、それ以上は不味いだろ!?
やめろって、ズボンを引っ張るのは……正気に戻れよ!? あッ──」
強引に動いて女達へ怪我をさせないように配慮した結果、来夢は完全に押し倒されて裸に剥かれていった。
いつの間にか女達も服を脱ぎ去り、何が起きているのか把握できていない来夢へと絡みついてくる。
(!?!? な、何が起きてんだ!?
あッ!! そうか、この娘さん達も淫魔化の影響を受けてるのか!?
だが、何で目を覚ましたんだ……俺の淫魔化に反応したのか?
魔力感知で何か分かれば──ッ!?
ヤバい!? めっちゃ魔力のモヤモヤが出てるじゃねぇか!!)
テント内には魔素が充満していた。
ライチを外に待機させていたこと、魔薬によって一時的に魔力が充溢したこと、閉鎖空間であることの三つが重なったことで、魔素濃度が高まってしまったのだ。
その結果、淫魔化の途中であった女達が活性化したことでモンスターとしての本能が暴走、インキュバスとしての魅了能力を無意識に発動していた来夢を襲ってきたのである。
「おい、しっかりしろ!! ウプッ!?
プハッ、待てって、俺のキングスライムを虐めるのはやめろ!?
アッ……クソ、凄えエロい香りで頭がクラクラしやがる……何とかしねぇと……」
暴走した女達が放つフェロモンに来夢の理性が削られていく。
だが、それは来夢と融合しているスライムに未知の欲求を感じさせることにもなった。
だからこそ、インキュバス状態となって復活した生理機能が暴走する寸前、来夢に新たな能力が目覚めたのだ。
ニュルニュルニュルン!!
「「「アァッ!?」」」
女達が一斉にあられもない声を上げる。
「なッ!? これは……俺のキングスライムが触手になっただと!!??」
驚愕する来夢のキングスライムが無数に枝別れした触手に変化したのだ。
更に触手は自動的に動き出すと、女達を空中へ縛り上げた。
「す、凄え……凄えイカれてるぜ。
スライムマンになってから、断トツで意味が分からねぇぞ!?
何で触手が……いや、スライムといえば触手なのか? その辺は解釈の問題だよな?
──俺は一体何を悩んでるんだ!?」
来夢は余りの異常事態に一周回って冷静になり始めていた。
「勝手に動くのかと思ったが、意識すればコントロールできそうだな。
もしかして、俺がこの娘さん達を傷つけないように拘束しようと考えていたから、こうなったのか?
この触手──〈スライムテンタクル〉は、クソ頭悪そうな見た目だが……使えるな」
来夢が拘束に使われていない触手を操作しながら、〈スライムテンタクル〉について考察していると、
「「「アアァァッ!?」」」
「なんだッ!?」
空中で縛られた女達が、悶えるように苦しみだした。
それは中途半端に淫魔化した状態で活性化したことの副作用であった。
「魔力が乱れてる? かなり危なそうだぞ。
どうすれば……いや、人間化させる目処は立ってるんだ。
ぶっつけ本番でもやるしかねぇだろ!!
幸い、モンスター化した内部を直接治療する丁度いい能力もあるしな──大丈夫、これは医療行為だぜ。
だから、
ズリュリュリュン!!
無数の触手が蠢き、女達を治療するための医療行為が開始された。
「「「ああぁんッ!?」」」
女達から苦しみ以外の呻きが漏れる。
すかさず、来夢は触手に命じた。
「触手から魔力を吸収する!!
ズゾゾゾゾ!
「「「────ッ!?」」」
モンスター化した部分に取り付いた触手が魔力を吸収していく。
「よし、上手く魔力だけを吸えたな。
淫魔同士だと魔力に干渉しやすかったりするのか? それともインキュバスの能力?
まぁ、いいか。これで魔力抵抗をギリギリまで下げてやる」
モンスター化した身体から魔力を奪ったことで、目に見えて女達が衰弱していく。
「これ以上はヤバそうか?
だったら、これで最後だぜ。
人間に戻れ!! 〈オーバーヒールトランスヒューマン〉!!」
ズビュビュビュビュンッッ!!!!
「「「ッ!!??」」」
過剰な魔力を込められたスライム液が、女達へと注がれ、人間化を発動させながら、少しずつ身体へ同化し始める。
その際に身体内部の不調部分も一緒に治療されることで、恍惚とした表情で気を失っている女達の身体は、艶々な健康体へと徐々に変化していくのだった。
「フゥ、どうやら成功したみたいだな。
──あ、いや、セイコウはしてないんだった。俺は医療行為をしただけだぜ」
女達の身体が治療されていく様子を見つめながら、来夢は無意味な言い訳を呟いた。
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