第9話 祝辞あらため呪辞
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「皆さん、ご卒業おめでとうございます――と、ここが普通の学校であれば、今日という日は今のようなフレーズで生徒の皆さんを祝福すべきときを迎えているのでしょう。だが、我が
そんなあなた方を矯正し、真っ当な人間に仕立て直そうというのが我が学園の目的でした。
しかし――先日、緊急事態に陥った政府の方から発表がありましたように、以前より討議されていた例の法律が速やかに成立し、即時に施行されました。我が学園も対応しなければなりません。
矯正を放棄し、代わりに、命の選抜をします。
その一環として、あなた達にはデスゲームで競ってもらうことになりました。これこそが、我が学園の新たな卒業試験となるのです。
もちろん、負ければ人生が終わると思ってください。が、勝ち残っても、それだけであなた方の罪が許される訳でもありません。勝ち残った人達には、生きながらえるチャンスが与えられるというだけです。
悲観的に捉えてはいけません。デスゲームを勝ち抜き、生き残れば、“次”があるということです。次のステージを目指し、頑張ることが肝要です。
なお、卒業者には定員が設けられます。
今年度、本学園から勝ち残れる人数の枠は最終的に四名と決まりました。皆さんは上位四名までに入ることを目標に、精一杯努力をしてください。
……
* *
スピーカーから流れ出る音声の内容は、事の次第の説明に続き、デスゲームとやらのルールに関する話に移っていった。
無茶苦茶な状況下に突然置かれたというのに、我々の誰も抗議しない。最早、あきらめが付いていたからかもしれない。国の方針が突然変わったのは、為政者らの気まぐれなんかでは決してなく、世界の趨勢だと分かっていた。始まりは、欧州地方の小国の一つの自治州だったと記憶している。そこは完全民主主義が実現できるほどの小規模な集落で、だからこそ斬新な制度が採用できたのだろう。それが今や、大多数の国家がデスゲームを統治のために取り入れている。体のいい人減らしだ。国から死ぬべきと定められた、言ってみれば“死刑囚”である者を集めて殺し合いをさせれば、執行費用もいくらか浮くに違いない。
何故、このようなゲームごときで命の危険に晒されねばならないのか。しかも、高確率で命を落とすデスゲーム。己の置かれた環境や生まれた時代を呪いたくもなるが、あきらめの方がより大きい。
ただし、あきらめたあきらめたと言っても、それはこの理不尽な制度の運用開始についてであって、ゲームに勝利することまであきらめている訳ではもちろんない。
学校側の説明によれば、デスゲームはいくつか用意されており、好きな物を選べるという。お優しいことだ。すべてのゲームの説明を聞き終えてから一時間以内に、どのゲームに参加するかを表明しなければならない。万が一にも選ばなかったら、その時点で即座に失格、死が待っている。
各々のゲームについて、やり方を見ていくと、似たり寄ったりのものが並んでいるのではなく、ある程度の特徴付けがなされていると感じられた。
たとえば『平手打王』と名付けられたゲームでは、そのネーミングから想像できる通り、相手を平手で張り倒したら勝ちというシンプルな体力・腕力勝負。一発ずつ、交互に打ち合うため、恐らく先攻が有利になる。先攻後攻はくじで決まるというから偶然性は残しているものの、身体付きのよい、腕力自慢の男ばかりが集まるのは必至だ。
一方、『クエスチョン・クエスト』なるゲームでは、対戦する二人が互いにクイズを出し合い、より早く正解した方が勝ち残るとされている。どんな問題でもいい訳ではなく、難易度は高くないがひたすら時間を要するような計算問題や、異論が噴出しがちな謎々の類は禁じ手とされ、純粋に知識を競う場と言えそうである。
また、『リアル神経衰弱』では、記憶力の限界を試されそうな説明があった。
このように体力、知力など何らかの分野で自信があれば、生き残る可能性が少しでも高まるであろうゲームが用意されている。
さらに、かゆいところに手が届く言っては変になるが、得意分野のない者のために、運のみのゲームも複数あった。ジャンケンやサイコロなどで勝ち続ければよい、という代物だ。
さらにさらに、完全な運任せも気後れするという面々に向けてか、平均的な人間こそが勝ち残るゲームまであった。二択のアンケートを繰り返し行い、多数決を採っていく。常に多数派を選び続け、最終的に唯一人になったら勝ち残り。無論、このルールだけだと多数派を選び続けた者が途中でいなくなるケースも想定される。そのときは少数派を選んだ回数が最多の者を除外した上で、改めて一からアンケートを採っていくという。
以上のように多様なゲームが並ぶ中、自分・
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