006●第一章④公王城《デュクストラ》、美女たちの胸と尻〈20240916再修正〉
006●第一章④
*
その中心部は、、この国の最高権威者である
まさにその名に値する壮麗さだった。
エリシウム公国の首都エリス、人口三百万に達する大都会の中央部に一辺が六ロキメルト(我輩の
城門は東西南北それぞれに一か所あり、頑丈な跳ね橋で堀を渡る。
東側の門が、
正門前の広場とエリス湾の間には国会議事堂や宰相府、各種官庁の厳めしい
馬車列が東門の橋を渡るとき、我輩は跳ね橋の城壁側の巻上げ装置に注目した。金属の歯車機構はよく手入れされており、操作員がついていた。有事には
上から見て一辺の長さ六ロキメルトの正方形の城郭には、その四隅の角の部分と、四つの辺の中央にそれぞれ要塞施設が築かれていて、砲門らしき開口部が並んでいる。それらには灯が瞬いていて、平時から警戒を怠っていないようだ。
城門の前に並んだ儀仗兵の一団が、大音声の号令のもと、
……確か補佐官のシェイラは、近衛隊の司令官を兼ねていたな。
そう思った僕はシェイラに、親指を立ててサムアップ・サインを送る。
「GOOD! すばらしいね。訓練が行き届いている、君の部下なんだろう?」
シェイラは戸惑いながらも、彼女にとっては生まれて初めての異世界の習慣となるサムアップ・サインを真似て返し、ニコッとほほ笑んだ。
「はい、私の部下でありますが、なによりも全員が
鞏固な自信と誇り、それがシェイラの口調に溢れていた。
そうか、と俺は思った。シェイラは俺の補佐官だが、彼女の正体は役人というよりも軍人だ。これは助かる、いかなる政治力も軍事力の前には屈することが、我輩の
しかし同時にシェイラは、“最も警戒すべき”腹心の部下ということになる。
シェイラの立場を尊重しつつも、日ごろから軍事力の正確な掌握に留意しなくてはなるまい。権力者になったからといってボーッと生きていると、いつのまにか軍事力の指揮権を彼女に奪われて、
ところで魔法戦闘隊はどんな? と尋ねたかったが、聞きそびれた。
橋を渡る馬車を祝福して歓迎のファンファーレが鳴り響き、城壁の内側から、ドン、ドンと腹に響く礼砲が二十四発、続いて数百発の花火が打ちあがって首都エリスの夜空を宝石箱の煌めきで染め上げたからだ。
「おおーっ!」と僕は感嘆の叫びをあげて、窓から半身を乗り出して見上げた。「これは綺麗だ。お抱えの花火師でもいるのかい?」
「いえ、猊下」とシェイラは少し鼻を高くした。「あれは近衛隊の隊士が操る臼砲で、
常在戦場な精神の、マニアック軍人のようだ、シェイラは。それに、見た目だけを派手に演出する無駄な出費は引き締めるタイプであることも察せられた。
これは気に入った。シェイラは
首筋をさすりながら、我輩は悪夢の記憶を追い払う。今回の転生では、しくじってはなるまいぞ。
群衆の歓呼を城門の外に置き去りにして、俺たちの馬車は城内を走る。
まるでどこかのテーマパークのように、管理の行き届いた庭園や林、池に噴水、温室やロッジ風の別邸などが、ぼんやりと街灯に浮かび上がる。
薄闇を軽やかに走りけると、目の前には意外と奥行きのある内堀の水面。そこには夜空の星々と、目に見える速さで動いていく三つの月がきらきらと映っていた。堀の向こうは……
円形の城郭だ。
「ここが
シェイラは続けて説明してくれたが、
中央に直径500メルトほどの広場があり、その中心に“
内堀の跳ね橋を渡ると、 “本丸ビル”すなわち
白い光沢を放つ大理石と、クリスタルの巨大シャンデリアが目を引き、そしてお定まりの大階段が緩やかに弧を描いて最上階へと続いている。
馬車を降りると赤い
この館の
僕は目を見張る、ほおーっ……とため息が出た。
全員、女性ばかりだ。
それも男性の審美眼に強烈にアピールする愛らしいアイドルタレントを選んで、ミュージカルの大団円を思わせる華やかさで集合させたかのようだ。百人は優に超えるだろう。
どうして華やかなのかというと、衣装はあくまで家政婦の制服っぽい、ふくよかなロングスカートにエプロンドレスなのだが、全て金銀のラメに飾られて、キラキラと輝いていたからだ。様々な高さで天井から吊るされた数十の王冠形巨大シャンデリアの光芒を浴びて、床には人間ミラーボールがずらりと並んだようなもの。
「彼女たちはみな、ここ
シェイラの紹介に合わせて、彼女たちは一斉にお辞儀した。
同時に甘ったるい砂糖菓子を思わせる、蠱惑的な声で合唱する。
「
百人を超える美女がスカートの裾を持ち上げて礼儀正しくカーテシー風のスタイルで
というのは……
彼女たちのエプロンドレスに似たコスチュームの胸の部分にはハート形のカッティングが施してあり、そこにはつまり布地が無かったからだ。
ラメの光沢でキンキラ状態の服の、その部分は艶やかで、すべらかな胸のふくらみが、肌の色の濃淡の個人差はあるとはいえ、そのまま……
うーむ、たわわが五割、手ごろなおにぎりサイズが三割、小粒な
どこからともなく優雅な音楽が流れてくる。我輩の
胸の柔肌を露出していない従者はシェイラだけだ。といってもぴったりと肉体に密着したメタルブラックの
いかがでしょう、今夕の胸々軍団の出来栄えは……とでも言いたげなシェイラ。
その前で、たちまち鼻の下が伸びて、曖昧な笑みを浮かべたまま、よだれがしたたるのをこらえている俺を、赤面した僕がおろおろと自覚している……という心理的図式を隠そうと脂汗にまみれるばかりの我輩。その耳元にささやいて、シェイラは俺に行動を促す。
「どうぞ、全ての柔肌に猊下の御手を触れてやってくださいませ。みな喜びます」
「お、おい、本当に……?」と、俺は半ば恍惚として声を返す。
ここで早速、オールおさわりオッケーなのか!
「はい」とシェイラはほほ笑む。「ここに整列しております者は
……てことは何だい、帰宅早々、お城まるごと超巨大ハーレムってことだ!
下半身が欣喜雀躍し、やる気満々の姦淫天国へ一気に堕落する俺。
転生冥利、ここに尽きるではないか。据え膳食わぬは男の恥だし。つまみ食い程度ならいいだろう? おひとりワンタッチで胸の
一歩、二歩と進む。居並ぶ美女たちの肌の色や顔相や髪の色やヘアスタイルは百人百様だが、だれもが例外なく、眼差しをきらきらと輝かせ、にこやかな笑みで誘ってくれる。……はい、どうぞ、猊下、いかがでしょう、人と人、愛あるスキンシップで触れ合うことは喜びでございます……と。
近づくと、手前の美女から順番に、くるっと腰を捻ってウエストのくびれを強調する、と同時にチラリと臀部が見えた。
ラメ入りロングスカートの背面三分の一ほどは三角形に大きくカットされていたのだ。すらりとした生足と、その上に生のヒップがつるりと球形の誘惑を放つ。
お、ノーブラにしてノーパン……
ごくりと唾をのみ込んでしまう。
異世界へ転生したその夜に、この破格の待遇。
僕の心臓は恥ずかしながら割れ鐘のように鳴り、鼻のてっぺんまで真っ赤に充血してしまった。そして俺はもう、下半身の欲望のカタマリと化す。
ああ……触りてえ! なでて、握って、揉みしだきたい! そしてもっと、あんなことや、こんなことを……
そこでシェイラのささやき。
「暴行は無制限、傷害は流血程度までは許されます。ですが、失明および四肢の機能が失われる重度傷害および
「えっ?」
転生経験値の高い我輩の脳裏に、ピコンピコンとアラームが点滅した。“ちょっとだけ”どころか“骨折寸前までなら全然オッケー”な暴虐プレイまで承知しているというのか?
これは異常だ。スケベ男の“おふざけ”の域などはるかに超えている。
突然ながら大事なことが気にかかり、念のため小声で確認する。
「……その、法的な問題はないのかね? 彼女たちの基本的人権ってやつは?」
シェイラは事務的に平然と答える。
「ええ、ですから
人権はお金で買いましたのでご心配なく……というわけだ。
「そ、その報酬って、どこから出ているの?」
素朴な僕の質問に、シェイラはひそやかに答える。
「もちろん税金です」
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