第68話 王都ステオグロ

 王都に到着すると街の人々が道の脇に並んで手を降っていた、王女帰環の式典らしい。

 王都に到着する直前に起こされたローレンは先程まで寝ていたとは思えないほど綺麗な笑顔で手を振り返している。


 「すごい人の数ですね…」

 「ここ『王都ステオグロ』はアムセ王国で最大の都市だからね、それにローレン様を一目見ようと他の街からも人が来ているはずだよ」

 「ローレン様人気があるんですね」

 「そうですよ、見直しましたか?」


 ローレンはアオバに向けてドヤ顔している。


 「それにしても活気がありますね、僕も初めて来たので驚きました」

 「王都はこの国の娯楽が集まる場所ですからね、他の街に行くより王都に来たほうが手軽に色んなものを購入できるんですよ」


 この国では芸術の街スプレンや流行の街シムフィのように街単位で一つの分野に特化した政策を取っているため、欲しいものを購入する時に遠い街まで移動しないといけないというデメリットが生じる、それを国の中心に位置する王都が他の街の特産品を集めることで最小限の移動で済むようになっている様だ。

 王都の街並みは中央にそびえるお城が圧倒的な存在感を放っていて、それを囲むように様々なお店が並んでいる。

 お城の正面には豪華な噴水が左右に一つずつある広場があり、中央には緻密な加工が施された石像が置かれている。


 「あの石像が去年スプレンで行われたデンス祭の優勝作品だよ、幸運の象徴と言われる『ロテココ』という魔物をモデルに造ったものらしい、迫力あるよね」


 その石像は巨大な鳥の姿をしていて羽がとにかくカラフルでとても綺麗だ、羽ばたいている瞬間を切り取った様な造形は今にも動き出しそうな迫力がある。


 広場の中央付近でノシム車が止まりローレンが降りる、それに続いてアオバ達もノシム車から降りて広場の中央へと向かうと豪華な鎧に身を包んだ兵士を側に従える老人が立っていた、格好からしてこの国の現国王だろう。

 ローレンは国王の前に移動するとペコリと軽くお辞儀をした。


 「お父様、ただいま戻りました」

 「ローレンよご苦労だった、道中苦労したようだな、色々話を聞いて気が気ではなかったぞ」

 「はい、ですが優秀な近衛兵と護衛のハンター達のおかげで誰一人欠けることなく帰ってこられました」

 「そうか、それは何よりだ、皆の者!ローレンとその護衛達に惜しみない称賛を頼む!」


 国王の言葉を聞いて周りで見ていた人々が一斉に声を上げる、割れんばかりの賛称の声が広場に響いた。

 しばらくして国王が右手を軽く挙げると広場は静かになった。


 「長旅で疲れているだろう、城で休むと良い」

 「ご厚意ありがとうございます、それでは先に失礼いたします」


 ローレンとアオバ達がノシム車に乗り込み城へと向かう、広場に残った国王はこの式典の閉幕を宣言していた。


 「すごい声援でしたね…」

 「この国の国民はこういった行事が好きですからね、単純に私達を理由に騒ぎたいだけだと思いますよ、それよりこれからお三方にお城の中を案内して差し上げますわ!」

 「中に入って良いんですか!?」

 「もちろんです!護衛任務の報酬を用意させている間にお城の観光と行きましょう!」


 洋風のお城なんて某テーマパークにあるやつを外からしか見たことのないアオバはとてもワクワクしていた。

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