第62話 包囲成功

 アオバはハンターギルドの扉を勢いよく開くと水のクッションに乗せられてぐったりしてるエランとルルを中へと入れる。


 「すみません!この子達を預かってもらえますか?街の南側で魔物が脱走した様だったので避難してきました!」


 ギルドにいるハンター達が呆気にとられて静まり返っていると、ギルド職員と思われるお姉さんが声をかけてきた。


 「分かりました、その子達はこちらで保護します、それでどんな魔物が脱走したんですか?」

 「すみません、騒ぎに気付いてすぐに避難したので魔物は見てません、ですが私の仲間が二人残って戦っているんです!どなたか応援に来てくれる人はいませんか!」

 「それなら俺が行こう!」


 屈強な男が一人立ち上がるとそれに続いて四人の男が志願してくれた。


 「ありがとうございます!それと剣を一本貸してもらえませんか?今戦っている仲間は丸腰なので武器が欲しいんです!」

 「俺の予備を貸してやるから急ごう、案内してくれるか?」

 「任せてください!」


 アオバはハンターギルド前の広場に荷台のサイズを大きくしたアオバ号を作り出し男達を乗せた。


 「しっかり掴まっていてくださいね!」


 アオバ号が宙に浮き移動を開始すると男達の野太い悲鳴が街に響いた。


―――――


 エミルはシュロカが壁に激突してもたついている間に前方に回り込むことに成功した。


 (あれ程の速度で壁に突っ込んでいるのにダメージを負っている様子はない、相当硬い体だ…狙うなら関節だがこの刃がない石の剣で太刀打ちできるのか?その上時間もかけられない、結構厳しいな…)


 エミルは石の剣を構えてシュロカと向き合う、カチカチと大きな顎を動かしてエミルを見ていたシュロカは一瞬で加速しエミルの方へと突進した、幸い突進の方向がズレてエミルには当たらない角度だがその動きを目で追ったエミルは足の関節に向けて石の剣を振った。

 パーン!と破裂音の様な音が響き石の剣が砕ける、後方で壁に衝突したシュロカはすぐに体制を立て直しエミルに向き直る、石の剣が当たったと思われる場所には傷が付いている、どうやら少し関節からズレてしまった様だ。


 「くっ、どうする…」

 「エミルさーん!」


 声のする方を見るとアオバが上空で手を振っていた、後方には何故か屈強な男達がキュッと目をつむり縮こまっている。


 「これを使ってください!」


 アオバは水を操作してエミルの手元に剣を届ける、エミルはそれを受け取るとシュロカに向き直る、シュロカの後方ではアオバが連れてきたハンター達が道を塞ぎ街の奥へと行かない様にしている。


 「はぁ、はぁ、おまたせ」


 後ろからもリリが追いついてきて挟み撃ちの形が完成する。

 アオバはリリの近くに降りてリリに質問する。


 「あの魔物は強いんですか?」

 「シュロカって言ってものすごく速い魔物だから気をつけて、目で追えない速度で移動するよ!」

 「あのサイズでですか…念の為後ろに逃げられないように水の壁を貼ります」


 水の壁を作っている間シュロカは動かない、触覚を機敏に動かして周りの状況を確認している様だ。


 「拘束します、リリさん!魔法の準備を!」

 「了解!」


 アオバが水の紐をシュロカに向けて数本飛ばす、しかしシュロカは一瞬にしてその場を移動して回避した。

 シュロカは衝突することなく建物の壁の手前で停止している。


 「調子が戻っちゃったか…」

 「リリさん、ヤクハモメの時に使った広範囲にばら撒く攻撃で倒せませんか?」

 「住宅街では周りへの被害が大き過ぎるから駄目、動きを止めないことには手出し出来ない…」


 向こう側の屈強なハンター達もあのスピードに対応する手段が無い様で包囲の状態を崩さない様に武器を構えて突っ込んで来た時に備えてカウンターを狙っている。


 「…二人は下がってて、僕がやってみるよ」

 「エミル一人でやる気!?」

 「大丈夫、任せて!」


 エミルがシュロカに向けて剣を構えると手足が青白く光りだした。

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