第61話 脱走した魔物
音のする方から逃げてくる人々はアオバ達のいる方へと逃げてきている、何かが壊れる音もだんだん近くなっていることから、恐らくこちらに向かって来ているのだろう。
「こっちに向かって来てるみたいだね、アオバはエランとルルちゃんを安全なところに連れて行って!」
「分かりました!エランくん、ルルちゃん!乗って!」
アオバ号を作りエランとルルを乗せて暴れている魔物とは反対方向へと移動させる。
「安全な場所ってどこが良いかな?」
「街の中央のハンターギルドに行きましょう、あそこなら強い人もいっぱいいますし姉ちゃん達の助けも呼べます!」
「分かった!落ちないように気をつけてね!」
「えっ?キャアアアァァァ!!!」
アオバ号の速度と高度を上げてまっすぐハンターギルドへと向かう、道中エランとルルの悲鳴が街中に響いた。
_____
残ったエミルとリリは迎撃の準備をする、普段使っている武器等はそれぞれの家に置いてきてしまっているため、リリは土魔法で簡単な石の剣を作りエミルに渡した。
『ドオオォォォン!!』
大きな音と土埃と共に魔物が姿を表した、緑色の艶のある外骨格に六本の長い足、体長は2m程の昆虫型の魔物だ、地球でいうハンミョウという昆虫によく似ている、大きな鋭い顎と長い触覚が生えた顔で他の人間とは違い逃げずに立ちはだかるエミル達の姿をまっすぐ捉えているようだ。
「『シュロカ』だ、相当動きが早い魔物だから気をつけて」
「分かっ―――」
『ドオオォォォン!!』
リリの3m程後方にあった建物の方から先程から何度か聞いているような大きな破壊音が鳴り響く、目の前にいたはずのシュロカはいつの間にか消えていてリリが振り返るとそこには壊れた壁と土埃が舞う中で平然と立っているシュロカの姿があった。
「いくらなんでも速すぎでしょ!」
「理由は分からないが本調子じゃないみたいだね、今のうちに倒そう!」
「そうね!」
リリがシュロカに向けて手を伸ばすとそこに火と風の魔法が合わさった大きな炎の塊ができる、しかしそれを発射する直前、再びシュロカの姿が消えて少し離れた場所で建物の破壊音と悲鳴が響いた。
「まずい!住宅街に逃げ込んだ!急いで追おう!」
「あんなのにどうやって魔法を当てれば良いのよ!」
リリが悪態をつきながらエミルと共にシュロカを追う、シュロカは何度も建物の壁にぶつかりながら住宅街の奥へと逃げていく。
「どこまで行くのよ!」
「もしかして時間を稼いでいるのか?」
「何の時間?」
「恐らくだか麻酔か何かの影響を受けていて、それが治るのまで逃げているのかも、麻酔の影響で体の制御がうまくいかないから何度も壁にぶつかっていると考えれば辻褄が会う…」
「本調子のあんな魔物どうやって倒すのよ!」
「だからこそ今のうちに叩こう!僕は先に行く!」
エミルの足が青白く光ると目にも留まらぬ速度でシュロカを追いかけて行った。
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