第60話 地雷の戦略
翌朝、エミルとエランが迎えに来て街を見て回ることとなった。
エミルとリリの両親はどちらも仕事のため一緒に来られないらしい。
リリの父、ヨハンが仕事に行く前に言いにくそうにアオバに対してお願いをしてきた。
「アオバちゃん、その〜、一つお願いがあるんだけど…」
「なんですか?」
「髪の毛を少し分けてほしいんだ」
「えっ…」
「パパ…?」
「いや、変な意味じゃなくてね、その黒い髪の成分に興味があるから少しサンプルが欲しくて…」
エミルが言っていた面倒くさいこととはこういったことだろうか、もし髪の毛を渡してその成分の中にこの星に無い成分が見つかったらもっと色々と要求されることになる可能性が高そうだ、なのでアオバは適当に理由を付けて断ることにした。
「えっとすみません、私の故郷では髪の毛を渡すという行為が求婚に当たるので、お断りさせて下さい…」
「そ、そうか、そんな風習があるとは知らなかった、無理を言って済まないね」
素直に諦めてくれたヨハンはライラと共に仕事へとでかけた。
アオバ達もそろそろ街に出発しようというタイミングで先程のやり取りを聞いたリリが質問してきた。
「アオバちゃんさっきの話って本当?」
「嘘ですよ、髪の毛の成分からこの星の人間ではないとバレる可能性を考えて適当に言っただけです」
「そっか残念、アオバちゃんの髪の毛欲しかったな〜」
「…何に使うんですか?」
「…秘密」
いつもの三人にエランとルルを加えてズードの街の観光が始まる、最初は中央にあるお店でショッピングすることとなった。
「ルルちゃん、作戦は覚えてる?」
「はい!まずはお揃いのアクセサリーをプレゼントしてエランくんが私のものだと周りにアピールするんですよね!」
アオバは恋愛経験が皆無な上、興味もなかったのでそういった雑誌等も読んだことはない。
そんなアオバがルルにアドバイスしたのは、地球にいた頃の友人が行っていた方法だ。
人一倍独占欲の強かった友人は意中の相手に付き合ってもいないのにお土産と偽ってお揃いのストラップを渡していた、その友人は顔が良かったので相手の男も満更ではない様子だった、お揃いのストラップをつけていることで周りに付き合っているのだと誤認させることに成功し、友人の独壇場となり遂には本当に付き合うことになった。
それ以降友人のノロケ話を聞きながら少しずつやつれていく相手の男を見て、恋愛の怖さを学んだのは良い思い出だ。
「エランくん!今日の記念にこれあげる!」
「良いの?ありがとう!」
「うん!ちゃんと学校のカバンの見えるところに着けてね!」
「?良いけど何で学校のカバン?」
「ふふ、秘密!」
ルルはニコリと笑いながら口元に指を立ててエランの疑問を可愛さで誤魔化した、恐ろしい子だ。
ショッピングを終えて次は街の外側にある魔物小屋を見に行くことになった。
「この魔物小屋にいる魔物は研究のためだけではなく街の人に癒しを与える目的もあるんだ、だから害のない魔物と触れ合える場所もあるんだよ」
木の柵に囲まれた芝生の場所に行くと小型の魔物が放し飼いにされており、柵の中で数人の人が魔物と戯れていた。
「ルルちゃん!次の作戦は―――」
『ドオオォォォン!!』
急に何かが壊れる大きな音と共に大勢の人の叫び声が聞こえてくる。
「何!?」
「南の方から…ってまさか…」
「魔物の脱走!?」
どうやら懸念していた事態が起きてしまったらしい。
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