第58話 リリの家族

 しばらくエミルの両親と雑談をした後、リリの実家にも挨拶に行くことになった、元々リリの実家とエミルの実家は近所だったが今研究している魔物の都合で引っ越したらしくエランが案内してくれることとなった。


 「この家です」

 「そんなに離れてはないね」

 「リリさんにも兄弟とかいるんですか?」

 「妹が一人いるよ、『ルル』っていうの、エランくんと同い年だよ!」


 エランがドアをノックするとリリに似た大人の女性が出てきた。


 「あらエランくんと…へ!?リリちゃん!?」

 「ママ!ただいま!」

 「パ、パパ!リリちゃん!リリちゃんが!」


 家の奥からリリの父親らしき男性と妹らしき少女が顔を出した。


 「どうしたんだ…リリちゃん!?」

 「お姉ちゃん!?それにエミルお姉ちゃんも!?」

 「パパ、ルル!ただいま!」


 リリの両親とリリは抱き合って再会を喜んでいるがルルだけはこの状況が少し恥ずかしそうだ、思春期なのだろう。

 ルルの見た目は全体的に色々小さくなったリリといった感じだ、きっとリリのように美人に育つだろう。


 「お姉ちゃんは変わらないね…エランくん!お姉ちゃん達を連れてきてくれてありがとう///」

 「うん、どういたしまして」


 ルルがエランと話す時の顔が完全に惚れているように見える、青春だね。


 「そ、それで、この人がアオバさん、姉ちゃん達のハンター仲間なんだって!」

 「ルルちゃんだよね、よろしくね」

 「えっ…!?」


 ルルはエランとアオバの顔を交互に見るとアオバを睨んできた、人見知りなのだろうか。

 そんなやり取りをしていると、リリの両親がようやくアオバに気づき話しかけてきた。


 「リリちゃんこの子は誰だい?」

 「この子はアオバちゃん!私達とパーティーを組んでるの!」

 「そうなのね、始めましてリリちゃんの母『ライラ・ミンス』です、よろしくね!」

 「父の『ヨハン・ミンス』です」

 「アオバです、よろしくお願いします」


 ライラはスタイルが良く、タレ目が可愛らしい大人の雰囲気のある女性だ、リリと親子とは思えないほど若々しく肌が綺麗でオシャレに気を使っているのが分かる。

 ヨハンはとても優しそうな顔をしていて、かっこいいというよりは可愛いと言われるような容姿の男性だ。


 家の中に移動してリリの近況報告が始まる、その間アオバが邪魔にならないように静かに部屋を観察していると、ルルが奥の部屋から小さな魔物を連れてきた、これも先程見たレトという魔物だ。


 「いけ!『レーちゃん』!噛んじゃえ!」


 けしかけられたレーちゃんはやる気無くトテトテとアオバの元へと歩いてくる。

 アオバの顔が笑顔になりしゃがんで手を伸ばすとレーちゃんは手の匂いを嗅ぎぺろりと舐めたあと甘噛した。

 その様子にアオバは空気を読んで声を殺してに悶る。


 「可愛いー!レーちゃんは賢いねぇ!」


 アオバがレーちゃんの頭を撫でると気持ちよさそうにしている、その様子にルルは不服のようだ。


 「アオバさん!レトは肉食なんですよ!」

 「そうなの?エサは魔物の肉を食べさせてるの?」

 「いえ、肉を加工したカリカリのペットフードが売られているのでそれをあげてるんだと思います!」

 「へぇーそうなんだー」

 「ちょっと、エランくん!近いわよ!」


 そう言ってアオバとエランの間にルルが割って入る、エランを取られると思ったのだろうか、可愛い奴め。

 アオバがレーちゃんと戯れている間に近況報告は一段落着いたようだ。

 それなりに話し込んだ様で空は薄っすらと夕焼け色に染まり始めていた。


 「それではそろそろ僕とエランは帰ります、アオバはどうしようか?家に来るかい?」

 「アオバちゃんはここに泊めるわ!パパ良いでしょ?」

 「良いけどベッドが足りないな、僕がソファーに寝ることにするよ」

 「その心配はないわ!アオバちゃんは私のベッドで一緒に寝るから!いつも一緒に寝てるの!」

 「アオバちゃんとリリちゃんはとても仲良しなんだね、それじゃあそうしようか」


 エミルとエランが帰った後、リリと両親が楽しそうに話している中、ルルはアオバに敵意を持った視線を送っていた。


 「ルルちゃん、ちょっと良い?」

 「…なんですか?」

 「ルルちゃんはエランくんのこと好きなの?」

 「…あなたに関係ないですよね、それとも宣戦布告ですか?」

 「違うよ、そもそもエランくんは初めて会った私に緊張しているだけだからそんな感じじゃないよ!私は二人の仲を応援しようと思ってるんだ!」

 「…本当ですか?」

 「もちろん!ルルちゃんはお世話になってるリリさんの妹だもの!私にできることなら協力するよ!」


 それと単純にアオバはルルと仲良くなりたいのだ。

 共にエランを落とす作戦を練っている間にアオバとルルはいつの間にか仲良くなっていた。

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