第56話 生物研究の街ズード

 三人はエミルの案内でズードの街までアオバ号に乗って移動している。

 街道を行く人達はその光景に驚き歩みを止め、見えなくなるまで目で追っている、三人はそういう視線にもなれたものだ。


 「僕達の両親にはアオバが別の星の人間ということは秘密にしようか」

 「構いませんが何か理由があるんですか?」

 「僕達の両親はどっちも生物学者でね、そんなことを話したら絶対面倒くさいことになるんだよ…」

 「面倒くさいことですか…エミルさんがそう言うなら秘密にしておきます」


 そんな会話をしているとズードの街へと到着した。

 到着して一番初めに感じたのは動物園のような獣臭だ、街の入口近くには牛舎のような建物が並んでいてその中にはノシムを始め様々な魔物が飼育されている様だ。


 「ここの魔物小屋に居る魔物達はおとなしい種類ばかりだから警戒しなくても大丈夫だよ、でも街の南の方には凶暴な魔物を飼育している場所があるから気をつけてね、まぁ安全管理は徹底しているからそこまで注意する必要もないけどね」


 エミルがフラグっぽい事を言っているがあまり考えないでおこう。

 魔物小屋を過ぎると恐らく住宅街と思われる区画へと入った。

 この区画を歩いている人は紐に繋いだ見たことのない小さな魔物を連れている、ペットの様だ。


 「あの小さい魔物は『ピルヤ』といって愛玩魔物としてとても人気があるんだ、僕の実家でも飼ってるんだけど人懐っこくて元気な魔物だよ」


 ピルヤはモフモフの毛玉に短い手足が生えている様な見た目で顔はアリクイの様に細長くなっている、ピンと立った短い耳と小さなつぶらな瞳が可愛い。


 「あっちは『レト』だね、レトも人気の魔物だよ、気まぐれでのんびりした魔物でね、確かリリの実家で飼ってたよね?」

 「うん!『レーちゃん』元気かな〜」


 エミルが指を指した方向にいた魔物、レトはカワウソの様な細長い体に垂れた大きな耳がついていて、目は大きくて鋭く、ふてぶてしい顔をしていて可愛い。


 モフりたい衝動を抑えながら住宅街を抜け、街の中央に着くと様々なお店が並んでいるのが見えた、どのお店も魔物の素材を使った加工品を取り扱っていて、電気を通さない素材のコートや光の角度によって色が変わるハンカチなどが売っている。

 立ち並ぶお店の中に一際目立つ2つの大きな建物が並んで建っていた。


 「あの並んだ大きな建物はハンターギルドと生物研究所だよ、ハンターが卸した魔物の素材を直接研究所に届けたり、研究所が欲しい魔物の素材を直接ハンターに依頼するのに効率が良い造りになっているよ、それとこの街のハンターはスチエンセで一番数が多くて質も高いんだ」


 エミルの説明通りハンターギルドから出てくる男達は筋骨隆々の歴戦の雰囲気を纏っているように見える。


 「お二人はああいうハンターから話を聞いてハンターに憧れたんですね」

 「そうだね…ってこのこと話したことあったっけ?」

 「あぁ、いえ、そうかな〜と思っただけです、お二人の実家はもうすぐですか?」

 「そうだね、もうすぐだよ」


 なんとか話を逸らすことができた、街の中央から南東側に少し歩いて到着したのはエミルの実家、どんな両親なのか会うのが楽しみだ。

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