第55話 エミルのお悩み相談
朝、目が覚めると目の前にリリの顔があった、どうやら寝ている間にベッドに潜り込んで来たようだ。
リリを起こさないようにベッドを抜け出し、部屋を出ると話し声が聞こえてきた。
「アオバ号か…ふむ、アオバくんはサポーターとしてとても優秀みたいだね」
「はい、それにアオバは水魔法を使って大型のドフノテコの動きを完全に止めたんです」
「完全にって…どうやってだい?」
「手足に水で作った紐のようなものを巻き付けてその場で固定していましたね」
「ドフノテコが抜け出そうと藻掻く力を抑え込んだのか!?適正が水だけとはいえ魔力の消費は相当なものだったはずだ」
「ですよね、実際倒したあとのアオバは相当消耗しているように見えました、でも少しの間でも動きを止めてくれたおかげでリリの魔法で倒すことができたんです…」
「浮かない顔だね、何かあったのかい?」
「僕はドフノテコに対して何もできなかったんです、だから二人と対等な仲間といえる自信が無くて…」
「…君はもう少し肩の力を抜いたほうが良いよ、君の魔法にもリリくんの魔法にも相性というものがある、責任感が強いのは君の良い所だが背負いすぎるところは悪い所だよ」
「そうですよ!」
アオバは二人の前に姿を表す。
「エミルさんの魔法は誰にも真似できないすごい魔法です!それにエミルさんには冷静な判断力と豊富な知識もあります!対等どころか私よりもエミルさんの方がすごいです!」
「アオバ…いつから聞いていたんだ…?」
「盗み聞きしてすみません、私の話をしていたみたいなので出づらくて…でも私はエミルさんを尊敬していますよ!」
エミルの顔が赤くなる、弱っているところを見られて恥ずかしい様だ。
「アオバくんの言う通りだ、一つの事例だけで物事は判断するものではない、仲間がこんなに君を慕ってくれているんだから自信を持って良いんだ」
「ミラ先生、アオバ…」
「ふぁ~、エミルがまた何か悩んでるの?」
アオバの後ろから眠そうなリリが顔を出した。
「何に悩んでるのか知らないけど、どうせいつもの考えすぎなんだからさっさと忘れた方が良いわよ、ミラ先生洗面所は何処でしたっけ?」
「そこの扉の奥だよ」
リリは目を擦りながら洗面所へと入っていった。
「流石は幼なじみだね、お見通しの様だ」
「あんな風に言われると悩んでたのがバカバカしく思えてきました、二人共ありがとうございます」
「気にしないでくれ、相談ならいつでも乗るよ」
「私も悩みがあれば聞きますよ!」
エミルの表情が緩んでいる、悩みが晴れた様でなによりだ。
「そろそろ僕は研究室に行くとするよ、君達もズードまでの道中気をつけるんだよ」
「鍵はどうしますか?」
「この家に盗るものなんてないから別に良いんだが一応合鍵を渡しておこう」
ミラはエミルに合鍵を渡すと荷物を持って家を出た。
「それじゃあ僕達も準備して出発しようか」
「ズードまでノシム車が出てるんでしたっけ、私はアオバ号で行っても良いですよ」
「そっちのほうが速そうだしお願いできるかな?」
「はい!もちろんです!」
三人は身支度を整えて家を出ると街の外へと向かった。
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