第48話 中央都市シトハム
シトハムの街に到着するとすぐに見えるのは中央にそびえ立つ巨大なビルの様な建物、それを囲む様に大きな施設が並んでいる。
目に入る全ての建物は機能的で無駄のない造りをしているように見え、中央都市というだけあって人も多い。
賑やかな街中で時折走り去っていく乗り物が窓から見える、ノシム車が通る道の脇を走る4輪の乗り物だ。
原付バイク程の大きさで音はとても静かだ、大きさと形状的に一人用の乗り物だろう。
「エミルさん、あれはなんですか?」
「『エルク』という乗り物だよ、魔工学研究の街グルクと技術者の街エマンスの協同開発によって造られた最近実用化された乗り物なんだ」
「すごいですね!動力はなんですか?」
「搭乗者の魔力らしいよ、手に握っている棒を通って流れた魔力が中に組み込まれている魔核に流れることで動くらしい」
「魔力を使うとなるとハンターが使うのは難しいかもしれないですね、もっと大型の何人か乗れるものがあればサポーターの魔力で動かしてもらうっていうのはありかもしれませんが」
「大型のものは魔力の消費が大きすぎて実用可能な水準ではないらしいよ、いつかできると良いね」
そんな会話をしているとアムセ王国の大使館のような建物に到着した。
本館の前の広い庭には現代アート的な謎のオブジェが数点飾られている、アオバの予想だがスプレンの芸術家による作品なのだろう。
「それでは我々は会談のため少しの間お別れとなりますがお三方はこの街を自由に観光していてください、ここに皆さんの部屋は用意してありますがご自分で宿を取られても構いません、出発は3日後の朝になりますのでそれだけご注意を」
ローレンは寂しそうにアオバ達を見つめながら建物の中へと消えていった。
「それじゃあまずは中央図書館に行くんだったよね、こっちだよ」
エミルの案内で大きな3階建ての円柱状の建物に到着する、扉を開けると壁一面に本が収納されていて、本棚には収納されている本のジャンルを示す立て札が付いている。
中央にカウンターがあり、カウンターの後ろから左右に伸びる階段は天窓から差し込む光に照らされている。
アオバが図書館の内装に衝撃を受けていると気だるそうに一冊の分厚い本を持った白衣の女性が話しかけてきた。
「もしかしてエミルくんかい?それにリリくんも…どうしてここに?」
「『ミラ』先生!?おひさしぶりです!」
エミルが頭を下げる、リリも軽く頭を下げるとミラと呼ばれた女性が近づいてきた。
長く白い髪はボサボサで、線の細い眼鏡の奥の目尻のたれた目にはクマができている、胸は大きくないが何故かくたびれた雰囲気が少しエロく感じる女性だ。
「本当に久しぶりだね、元気にしていたかい?アムセ王国に行ったと聞いていたんだが」
「今回はローレン王女の護衛として雇われたのでここに来ました」
「そうかい、一時的にでもこの国に戻ってきたってことはあの件はもう大丈夫ってことかな?それと気になっていたんだがその子は二人の知り合いかい?」
「はい、この子は今僕達とパーティーを組んでいるアオバです!」
「えっと、アオバです、ミラさん?はお二人とはどういったお知り合いですか?」
このミラという女性に対してエミルが尊敬しているのが伝わってくる、深い関わりがあるのは間違いないだろう。
「おっと自己紹介がまだだったね、僕の名は『ミラ・ユロンソ』だ、僕は二人の教師として色々教えていた時期があるんだよ、特にエミルくんにはね」
アオバはエッチな関係かな?と思った。
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