第47話 復活したのに死刑宣告
オステルを出て中央都市シトハムへ向けて移動を開始したアオバ達を乗せたノシム車内には甘く爽やかな香りが漂っていた。
「この匂いは…」
「気づきましたか、ホノムの香水です、アオバさんが好きと言っていたのでつけてみました、どうですか?」
アオバの言った好きはホノムの味が好きと言う意味だったのだが、この星の人がその発想にたどり着くはずもなく、香りが好きという認識になったのだろう。
とはいえ香りも嫌いではないのでまぁ良いか。
「良いですね」
「こちらをアオバさんに差し上げますわ!2つ買ったのでお揃いにしましょう!」
そう言うとローレンはホノムの香水をアオバに差し出した。
「お店でこの香水を見つめていたのを見ましたのでこっそり買っておいたのです!受け取ってください!」
「すみません、ありがとうございます」
「アオバちゃん!私もおすすめの香水もあげる!」
何故かリリからも香水をもらった、普段つけないしどうしようかと考えるアオバを挟んでローレンとリリが火花を散らしていると、ノシム車のドアをノックされた。
「どうぞ」
「失礼します!」
ローレンが返事をすると一人の兵士が入ってきた、あの重傷だった兵士だ。
赤い短髪の普通の顔の青年という印象を受ける。
「私は『ゴラム』と申します!怪我が回復いたしましたのでアオバ殿に改めてお礼を言いに参りました!」
「あぁ、はい、どうも」
「あの時私は魔物の電撃を受けて体に激痛が走り、死を覚悟しました!しかしアオバ殿によって意識を取り戻すことができました!本当に感謝しております!」
「確かに、ドフノテコの電撃を喰らってよく無事だったね、運が良かったのかな?」
「いえ、私が見つけた時には呼吸も心臓も止まっていましたよ」
「「「え!?」」」
車内が騒然とする、兵士も自分が殆ど死んでいたという事実に開いた口が塞がらない様子だ。
「そんな状態からどうやって…?もしかしてアオバさんは蘇生の魔法が使えるのですか!?」
「いえ、出血などもなかったので一か八か心臓マッサージと人工呼吸をやってみたら間に合ったんですよ」
「「「は!?」」」
再び車内が騒然とする、ゴラムは小さく人工呼吸…と呟くとポッと頬を赤く染めた。
それを見たローレンとリリの額にピキッと血管が浮かぶ。
「どうやら死刑を執行する必要があるようですね、手続きは任せましたよノリス」
「ドフノテコにやられた傷が悪化して結局死んだってことで良いよね!どうせ一度死んでるんだし!」
兵士の顔が赤から一気に青くなった。
「二人共、せっかく助けた人を殺そうとしないでください、あなたももう出たほうが良いですよ」
「は、はい、失礼しましたぁ!」
ゴラムは慌ててノシム車から飛び出していった。
「アオバさん、今上書きしますので目を閉じてください」
「ローレン様、はしたないですよ!」
「そうです、そもそもすでに上書きは終わっていますから必要ないですよ」
「なんですって!?昨日の夜アオバさんと何をしたんですか!?」
アオバの記憶にないということはまた寝ている間に何かされたということだろう。
ローレンとリリの言い合う声が騒がしく車内に響き、エミルとノリスが二人をなだめるという構図を維持したまま、一行は中央都市シトハムに到着した。
ちなみにゴラムはこれ以後、護衛する位置をノシム車から一番離れた場所へと変更させられることになった。
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