第14話 ギルド長ガーゼス

 暑苦しさに目が覚めるとリリがアオバを抱きしめてスンスン鼻を鳴らしていた。


 「…リリさん、暑いです」

 「起こしちゃった?アオバちゃんおはよう!」


 リリがアオバのおでこにキスをする。


 「なんですか急に!」

 「ふふ、ただの挨拶よ!」


 地球でも親しい相手への挨拶としておでこや頬にキスをする文化はあったが少なくとも日本では一般的ではない。

 顔を赤くしているアオバを気にする様子もなくリリはベッドから起き上がり身支度を始めた。

 アオバも身支度を済ませて少しするとエミルが部屋に来た。


 「それじゃあギルドに行こうか」


 今日の目的は依頼を受けることではなくパーティー登録だ。

 アオバが入ったことで新しいパーティー名を付けることになり、昨晩三人で話しあった結果、エミルとリリの共通の適性である風に、遠くから流れてきたアオバという要素から『風乗りの流星』に決まった。

 ちなみにリリ発案の『キラキラアオバ団』は一瞬で二人に否定された。

 ハンター登録をしたときに行ったカウンターでパーティー登録もできるようだ、あの時と同じお姉さんがカウンターに座っている。


 「こんにちは!」

 「こんにちは、確かアオバちゃんだったわね、お二人と一緒に今日はどうされたんですか?」

 「僕達アオバとパーティーを組むことにしたんだ、登録の手続きをお願いするよ」

 「えぇ!?今までずっとお二人でやってきたのに急に登録したばかりのサポーターとパーティーを組むなんて…何か弱みでも握られてるんですか?」

 「失礼ね!アオバちゃんはそんな子じゃないわよ!」

 「お二人がサポーター探しに毎回苦労しているらしいのでパーティーを組むことにしました」

 「でも、ここ最近サポーターが不足してまして、パーティーを組まれてしまうと他の方から不満が…」

 「そうか、なら他の街でパーティー登録するか…」

 「えぇ!?ちょ、ちょっと待ってて下さい!ギルド長に相談しますので!」


 お姉さんは慌ててカウンターの奥へと消えていった。


 「悪い事しましたかね…」

 「大丈夫だよ、アオバとパーティーを組むことで僕達も遠い場所の依頼を受けやすくなる、ギルド側にもメリットはあるのさ」


 ギルド側は今まで、二人がサポーターを受けてもらえないばかりに二人の実力を持て余していたが、アオバとパーティーを組むことによって二人の実力が必要な遠出のクエストを受けてもらえるようになる、といったところか。


 カウンターの奥がバタバタと騒がしくなりお姉さんと男が出てきた。

 男は青い髪と青い口髭に白髪が混ざってる渋い顔のイケおじって感じだ、見た目の年齢は50代ぐらいだろうか、体はガッシリしていて歴戦の強者的な雰囲気が出ている。


 「三人共奥に来てくれるか?」


 お姉さんに案内されて奥の部屋へと通される、応接室のような雰囲気の部屋にはふかふかのソファーが置いてあり大きさ的に横になって寝ることもできそうだ。


 三人が並んで座り、テーブルを挟んで向かい側にギルド長とお姉さんが座る。


 「まずは自己紹介だな、ギルド長のガーゼス・ヌロだ」

 「アオバです…」

 「そう緊張しなくて良い、どういう経緯でパーティーを組むことになったか気になってな、個人的にはアオバくんが二人とパーティーを組んで高難易度のクエストを受けてくれるなら文句はない」

 「ギルド長、それでは他のハンター達から不満が出るのでは?サポーター不足は深刻ですから…」

 「あんなサポーターを軽視している奴らのことなんて気にする必要はない、少しは反省させるべきだ」


 他のパーティーではサポーターの扱いが酷いらしい、二人に拾ってもらえて本当に良かった。


 「それで、どうしてパーティーを組むことになったんだ?」


 アオバはこの星に来てからのことを掻い摘んで説明した。


 「ニホン、ねぇ…聞いたことないな…」

 「とても遠くの国ですので…」

 「まぁ深く追求したりはしないさ、他から流れてきた奴なんて大抵何か抱えているもんだ、それじゃあさっさと登録手続きしちまおう…と言いたいところだがその前にアオバくんにやってもらうことがある」

 「やってもらうことですか?」

 「あぁ、一人でクエストを受けてもらう」


 簡単にはいかせてもらえないようだ。

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