第13話 無視しよう
時間帯は昼時といったところか、今日も露天商を開いている若い芸術家が元気に呼び込みをしている。
そんな街の風景を見ながらギルドへと向かい、ギルドでホーサノ討伐の依頼報告をする。
ホーサノの素材をカウンターに置き、ギルドの職員に確認してもらうと、達成報酬1200リコに3体分の追加報酬として600リコ、ホーサノの喉袋の買い取り分の240リコで合計2040リコの報酬を受け取った。
「それじゃあ報酬は3等分で一人680リコだ」
「戦ってもないのにそんなにもらって良いんですか?」
「もちろん、それにアオバちゃんだから特別って訳ではなく今までもサポーターには3分の1の報酬を払っていたんだよ」
「普通そんなにもらえるものなんですか?」
「一緒に行くパーティーと交渉して決めるってのが多いけど、大抵の場合報酬の1割とか2割が多いかな」
「それならお二人はサポーターに人気でしょうね」
「それがね、僕達と一緒にクエストを受けたサポーターは次から一緒に受けてくれなくなるんだ…」
「なんでなんだろうね、アオバちゃん何か気づくことあった?」
そういう場合、大抵は二人に問題があるように思えるが、二人のやり方や人間性におかしな所は感じなかった。
報酬も良い、実力も2級ハンターということで保証されている、他のサポーターが二人とのクエストを受けなくなる理由が全く思いつかなかった。
「私から見た範囲では何も問題ないように思いますよ」
「本当かい?また一緒にクエストを受けてくれる?」
「えぇ、もちろん!」
「じゃあさ、アオバちゃんさえ良ければ専属契約して私達のパーティーに入らない?」
「専属契約ですか?」
「一緒にパーティーを組んでくれると僕達としても助かるし、他のパーティーにアオバを預けるのも嫌だしね」
知らない人とクエストを受けるのも気を使って疲れそうだし、他のパーティーよりも報酬が良さそうだし、何より二人が望むのであればこちらとしても一緒にやっていきたい。
「分かりました、これからもよろしくお願いします!」
「うん!よろしくね!」
リリに抱きつかれる、ギルドの片隅でワイワイやっていると一人の男が近づいてきた。
赤い髪でロン毛、前髪を片側に流していて左目が隠れている、容姿は爽やかイケメンって感じだ。
「ようお二人さん!その子は新しいサポーターかい?」
「……………」
二人は全く反応しない、顔も向けずまるで存在しないかのように扱っている。
「つれないなぁ、お嬢ちゃん、二人はサポーターに嫌われてるんだ、やめといたほうが良いぞ!」
二人を悪く言う見ず知らずの男にムカついて言い返そうかと思っているとリリが小声で耳打ちしてきた。
(あんなの無視で良いからね、何かと私達に突っかかってくるの、本当面倒くさい…)
リリの言葉にうなずき男を無視する。
「お嬢ちゃんも無視かい、俺は2級ハンターパーティー『蒼炎』のリーダー、デイン・ホンミ様だぜ、この街でやっていきたきゃそんな態度じゃいけないよ」
デインと名乗る男が余裕の態度でニヤリと笑うと、エミルが急に立ち上がった。
「行こうか」
エミルの言葉に従いリリとアオバは立ち上がるとギルドの出口へと向かう。
「忠告も無視かい、エミル、その子に嫌われないと良いな!」
デインの言葉を完全に無視してギルドを出ると三人共無言のまま宿に着いた。
寝るにはまだ早い時間ということもありエミルの部屋で話をすることになった。
「なんなのあいついつもいつも、本当無理!」
「あのデインって人と何かあったんですか?」
「ずっとあの男のパーティーに誘われてるんだよ、何度も断っているのにしつこくてね、ずっと無視してるんだ」
「あの男明らかに私目当てで気持ち悪いのよね」
リリは美人だからモテるのはしょうがないが、相手があまりにもしつこいのは問題だ。
それにリリの今までの態度を見るにリリの恋愛対象は女性だ、初日に襲われたので間違いない。
「あーもういやいや、あんな奴のことなんか一瞬たりとも考えたくない!この話終わり!」
「そうだね、今日はアオバがパーティーに入ったことを喜ぼう!」
「そういえばパーティー名とかあるんですか?」
「あー…」
「『キラキラな風』よ!二人共風魔法が使えるし、エミルは雷でキラキラ!私は炎でキラキラ!ねっ!かわいいでしょ!」
何とも微妙なネーミングセンスだ、リリの自信満々な態度とエミルの呆れた顔から、リリがパーティー名を付けたのが分かった。
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