第12話 帰路
「アオバ!大丈夫か!」
「は、はい、ありがとうございます」
「すまない、気付けなくて…」
「いえ、お二人の戦闘に夢中で後方の警戒を怠った私の責任です、すみませんでした」
「アオバちゃん!怪我は無い?」
「大丈夫です」
大した怪我はない、しいて言うなら尻餅をついたのでお尻が痛い程度だ。
エミルの手を取り立ち上がる、先程まで騒いでいたホーサノの群れはもう森の奥へと逃げていったようだ。
「ほとんど逃げられちゃいましたね…」
「気にしなくて良いよ、目標の数は倒してるし元々深追いするつもりはなかったからね」
アオバの無事を確認した二人は、倒したホーサノの喉の丸く膨らんだ皮を剥ぎ取る。
剥ぎ取った喉の皮はゴムのように伸縮性のある素材のようだ。
「この喉袋はアオバのバッグの素材にも使われているんだよ」
もしかしてこのバッグを持ってたせいで襲われたのだろうか、あのホーサノの家族の皮が使われていたとか…
いや、流石に考えすぎだろう。
エミルは次に胸元を剥ぎ取り、ピンポン玉程度の大きさの丸い石のようなものを取り出した。
「アオバ、水を出してくれるかい?」
アオバが出した水で丸い石についている血を洗い流すと、石は緑がかった白っぽい色をしていた。
「これなんですか?」
「魔核だよ、これを討伐証明としてギルドに提出するんだ」
「アオバちゃん!こっちもお願い!」
こうしてホーサノの魔核と喉袋を8体分集めると、ホーサノの死体を一箇所に集めてリリの火魔法で燃やし、完全に燃えたのを確認してから水で消火して後処理は終わった。
「それじゃあ帰ろうか」
アオバのバッグに魔核と喉袋を入れる、8体分ともなると普通に持つには重いので水の板に乗せて運ぶ。
帰り道、森の中は相変わらず足場が悪く歩きづらいので途中からアオバも水の板に乗って移動している。
「それにしても街の近くの森なのにどうしてこんなに手つかずなんですか?開拓とかしないんですか?」
「魔素を作っているのは植物だからね、街を魔素で満たすためワザと森に手を加えてないんだ」
この星の人間の生命活動に必要な魔素を生み出す植物は簡単に資源に回せないのだろう。
街のいたるところに植物が植えられていたのはそういう理由があるからなのかもしれない。
森を出て街道をスプレンの街に向けて歩く、アオバは整備された街道でも水の板から降りはしなかった。
二人の警戒心も緩くなったのを確認して気になっていたことを聞いてみる。
「私が作った水のつららがホーサノに刺さらなかったのはどうしてですか?」
「正確には刺さっていたよ先っぽだけね、ホーサノの体内にある魔力と干渉して水のつららとアオバの魔力の繋がりが切られたんだ」
「それって水で剣を作っても斬ろうとしたらただの水に戻っちゃうって事ですよね」
「そう、そこが水属性が戦闘に向いてない要因の一つだね、火や雷だって魔物の体内に入れば魔力の繋がりは切られる、だけど火や雷自体がなくなるわけではないからそのままダメージを与えられるんだ」
ただの水をかけられてもダメージは無いが、ただの火や雷なら触れるだけで火傷や感電によるダメージがあるといったところか。
エミルの説明に納得したところで三人はスプレンの街へと帰ってきた。
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